2010-03-01

数理科学II(第27回)

今日の授業では、最後に残っていた、多変数多項式の一般化されたHenselの補題の証明を行いました。その後、多変数多項式の因数分解のデモンストレーション資料(Mathematicaによる計算を)配りましたが、残念ながら、準備できたのは1変数多項式のHensel構成まででした。その後、2学期のレポートの返却と解説を行いました。こちらの方は、計算例も示した資料を配りました。

この授業は、私にとって初めての経験で、最初は右も左もわからず題材の準備に追われていましたが、ようやく最近になって、計算代数の理論を展開することを通して、次のことを学生さん達に伝えることを意識するようになりました。

1つは、計算機に載せるような数学も、その理論の展開は、紙とペン、もしくは黒板とチョークから始まるということ。いささか古典的に見えるかもしれませんが、数学の伝承は、やはりこのスタイルが基本なのかもしれないなと思います。逆に言うと、このスタイルを受け入れられる人は、計算代数のような数学も、他の数学と同様に学ぼうとすれば、身につけられるものだと思います。

もう1つは、計算機が行う計算に「すごい!」と思うようなものも、決して魔法ではなく、数学のトレーニングを積んでいれば、一見「魔法」のような動作をもたらす理論も、確実に理解可能であること。計算機の能力は、人間をはるかに越える計算の速さや、記憶力など、魅力的なものばかりですが、計算機をうまく使いこなし、有効な計算結果を導き出せるか否かは、それを使う人が、その計算の背後にある理論と、計算機の能力を適切に把握しているか否かに依存すると思います。そういう意味で、計算をしようとする時は、その背後にある理論を学ぶことが大切だと思います。

以上を、授業を終えるにあたり、学生さん達に述べた上で、1年間この授業におつきあいいただいたことへの感謝の言葉を述べました。

もし、またこのような授業を担当する時には、できたら、あと1つのことを学生さん達に伝えたいと思っています。それは、このような理論を実際に計算機上でプログラムを組み、動かすことの楽しさです。となると、今年度の授業でやった理論に加えて、その実装=数式処理システムの実装の話をすることになるかな、話だけでなく、プログラムを実際に組んで、学生さん達に示す必要があるな、と思います。ここまで行けるかどうか、現時点ではまだわかりませんが、もし時間があれば、チャレンジしてみたいところですよね。そんなことを考えながら、この授業を終えました。おっと、3学期のレポートの評価と成績評価も忘れないようにしましょう。