2013-07-31

数理科学IIA(第15回)

今回は、この授業の最終回でしたが、前回までに証明した「部分終結式の基本定理」を踏まえ、(拡張)Euclid 互除法による多項式剰余列計算の際に起こり得る係数膨張を抑える方法の一つとして、Collins (1967) による「縮小 PRS 算法」を紹介しました。

  • George E. Collins. Subresultants and Reduced Polynomial Remainder Sequences. Journal of the ACM, Volume 14, Issue 1, 128-142, 1967. doi: 10.1145/321371.321381

縮小 PRS 算法による係数膨張の抑制の仕組みを説明した上で、数式処理システム Mathematica を用いて例題を計算し、擬剰余による PRS と縮小 PRS での係数膨張の程度を比較しました。

以上でこの授業を一通り終えました。この授業では、計算代数の基礎を取り上げ、多項式演算、アルゴリズム、計算量といった、現実の計算を考慮する上で必要な概念を説明しました。今後も皆さんの学習に役立てていただければ嬉しく思います。

なお、今回、本授業最後となるレポート課題を出題しました。それから、今回のレポート課題には、今日の授業の内容が必要ですが、今日は学会参加等で授業を欠席している人もいましたので、今回のレポート課題と授業資料を PDF ファイルにして配布します。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/ms2a-2013

2013-07-30

線形代数I(第28回)

今回は、この授業の最終回になりましたが、前々回の授業で証明を説明しきれなかった部分(線形写像の核が部分空間をなす、等)の説明と、線形写像の像と核を計算する例題を説明し、この授業を終えました。

最後に、この授業を終えるにあたってのコメントですが、普段、授業でこういった話をすると、しばしば話にまとまりがなくなるものですが、今回、珍しく、授業の最後にまとまった話ができましたので、抜粋して引用します。(録画では 49分00秒 頃からです。)

これで、春学期の線形代数Iの範囲は一通り終わりました。分量の割に時間の制約もあったりして、本来説明したいと思うこと全部は説明できませんでしたが、この授業で説明したいと思った内容は、講義ノートの方に書きましたので、今後も必要に応じて参照していただければと思います。

この授業で、線形代数の基本的な事項を説明すると同時に、数学において、どのように問題を解くかや、どのような道具立てで現代の数学が成り立っているか、といった基本的な部分について(説明したつもりですので)、少しでも皆さんに知っていただければ嬉しく思います。

今後、皆さんが数学に触れる機会は、人によってはもうほとんどないかもしれませんし、人によってはまだあるかもしれませんが、線形代数は、微積分と並んで、現代の科学技術が発展した社会において、どこでも使われている道具(の一つ)ですので、皆さんがこれから社会に出たり勉強を続けたりする中で、また(線形代数が)必要になりましたら、線形代数の教科書やノートを広げてほしいと思います。

この講義も一通りビデオ収録しまして、(今後)何事もなければ、収録した録画もずっと(今のまま)置いているつもりですので、また(線形代数を)復習したくなったり、あるいは照井の話を聞いてみたいと... ないかもしれませんが(笑)... 思った時には、戻ってきていただければありがたいと思います。

ということで、皆さん、これから大学生活が続くと思いますが、ますますのご活躍を祈りまして、それから(今度の)試験の成功も祈りまして、この授業を終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/la1-2013

2013-07-26

線形代数I(第27回)

今回は「線形結合と部分空間」ということで、いくつか(とりあえずここでは有限個)の数ベクトルの線形結合全体のなす集合が、もとの数ベクトル空間の部分ベクトル空間をなすこと、2つの数ベクトル空間 A, B と、A から B への線形写像 f が与えられたときに、A のすべての基本ベクトルを f で移したベクトル達が、f の像空間 Im f を生成するという事実(定理)を説明しました(証明つき)。それから、付録として、数ベクトル空間の基底と次元について説明しました。

次回は最終回ですが、前回の授業で時間が足りなくなって説明できなかった、定理の証明の一部と例題を説明したいと思います。

なお、本授業の期末試験は、来週8月2日(金)に実施します。要項は授業のサポートページに書きましたので、履修者はよく確認してください。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/la1-2013

2013-07-23

線形代数I(第26回)

今回は、まず前回の線形写像に関する例題を解説した後、線形代数の像と核の定義を説明しました。 その後、像と核が部分空間をなすという性質の証明を始めましたが、時間が足りなかったので、像の部分の証明で終わりました。

次回までに第5章を一通り終える予定のため、次回は次節の「ベクトルで張られる部分空間」について説明し、本節の証明などで説明が残った部分は、次回と次次回の授業で、時間が許す限り取り上げる予定です。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/la1-2013

2013-07-19

線形代数I(第25回)

今回は、線形写像と行列について学びました。具体的には

  • (m, n) 行列が数ベクトル空間 Kn から Km への線形写像を与えること
  • Kn から Km への線形写像は n 個の基本ベクトルがどう移されるかを決めることで与えられること
  • Kn から Km への線形写像を、ある (m, n) 行列で表せること
について学びました。

次回は、線形写像の像と核と呼ばれる部分集合(部分空間)について学びます。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/la1-2013

2013-07-17

数理科学IIA(第14回)

今回は、前回残った「補題2」の証明を終えた後、「部分終結式の基本定理」の証明を一通り終えました。

来週7月24日(水)は月曜日の授業のため、この授業はありません。再来週7月31日(水)がこの授業の最終回となります。次回は、部分終結式の基本定理を用いて、多項式剰余列を計算する際に起こり得る係数膨張を防ぐ工夫について説明する予定です。

2013-07-16

線形代数I(第24回)

今回は、まず、第4章「行列式の発展」の締めくくりとして、固有ベクトルの定義と「クラメールの公式」を説明しました。

それから第5章「数ベクトル空間と線形写像」に入りました。教科書では、線形写像の説明から初めていますが、今回は、その前段階として、数ベクトル空間の定義や、部分空間の定義を説明しました。

次回からは、教科書の内容に沿って、線形写像から説明する予定です。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/la1-2013

2013-07-12

線形代数I(第23回)

今回は、第4章「行列式の発展」から

  • 多項式の定義、多項式と方程式の違い
  • 固有多項式、固有方程式
  • ハミルトン・ケーリーの定理
  • 固有値
を説明しました。あと、固有ベクトルの導入まで説明しましたが、定義には至りませんでした。

次回は

  • 固有ベクトルの定義
  • クラメールの公式
について説明した後、次の第5章に進みたいと思います。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/la1-2013

2013-07-10

数理科学IIA(第13回)

今回は「部分終結式の基本定理」の証明に向けた最初の補題である「補題1」の証明の後半部分を行った後、次の「補題2」の証明のほとんどの部分を行いました。

次回は「補題2」の証明の残りの部分を行った後、「部分終結式の基本定理」の証明を行いたいと思います。

2013-07-09

線形代数I(第22回)

今回は、正方行列の余因子や余因子分解について解説し、余因子を用いて逆行列の計算を行う公式(定理)を説明しました。そして「ファンデルモンドの行列式」を説明し、第3章の内容を終えました。

次回は、第4章「行列式の発展」から、重要と思われるトピックを選んで解説したいと思います。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/la1-2013

追記(7月12日):授業を収録し、編集後の動画に意図しないコマが割り込む不備が見つかり、動画のエンコードをやり直しています。動画の公開にはもう少し時間がかかる予定です。

追記(7月18日):動画を再エンコードしましたが、不備は変わらないようです。授業内容には影響ありませんので、そのまま公開します。

2013-07-05

線形代数I(第21回)

今回は、行列式の性質を、特に行列式の計算に有用なものを中心に説明しました。

次回は、正方行列の余因子や余因子分解について解説し、余因子を用いた逆行列の計算などについて説明する予定です。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/la1-2013

2013-07-03

数理科学IIA(第12回)

今回は、部分終結式を1つの行列式で表す表現について説明した後、「部分終結式の基本定理」の証明に向けて、最初の補題の証明に入りました。

次回は、この補題の証明の残りの部分から先へ進めていく予定です。

2013-07-02

線形代数I(第20回)

今回はまず、2次や3次の行列式の計算に欠かせない「サラスの公式」を説明した後、「置換行列」の定義や構成について説明し、最後に行列式に関するいくつかの性質(「上三角行列の行列式の値は対角成分の積に等しい」など)を説明しました。

次回は今回に引き続き、行列式に関する(特に行列式の計算において有用かつ重要な)性質を紹介する予定です。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/la1-2013