2011-12-21

線形代数III演習(第2回)

今回の授業では、教室に入ったところ、まだ演習問題の板書がされていませんでしたので、前回提出してもらったレポートの解説から始めました。

前回のレポートは、このたび授業のお手伝いをしていただいているティーチング・アシスタント (TA) の大学院生の人に添削してもらい、その後私が確認して成績をつけました。

まず、微積分演習や線形代数演習で初めて受け持つクラスの1回目では「必要条件」「十分条件」に関する問題を出題しますが、今回、よく理解していると思われる人はそれ程多くない(この問題の満点が1割程度)と見受けられたので、解説を行いました。

引き続いて、2学期までの線形代数に関する基本的な知識を問う問題を数題、○×の形式で出題しました。正解率は割と高かったですが、詳しく説明できるかどうかまではわかりません。授業では、何人かの人に黒板の前に出てもらって、証明や反例の提示をやってもらいました。聞いている人にも参考になればと思います。

次回は、教科書の演習問題、および前回配布した演習問題から、授業を進めていきたいと思います。

微積分III演習(第2回)

今日から、演習問題を解いてもらうことになりましたが、教室に入ってみると、黒板は皆さんの板書で埋まっていました。

今回は主に数列の収束や発散に関する問題で、今日は時間が足らず1問残してしまいましたが、順調に授業を終えました。次回も皆さんの積極的な参加に期待します。

2011-12-20

数学特別演習(第10回)

今日は火曜日ですが、金曜日の振替授業日となりました。今回は、第5章「オイラーと複素数」に入りました。

複素数は、16世紀のイタリアを中心に発展した、1変数代数方程式の根の公式の研究によって注目されるようになりましたが、2次方程式の複素根はそれほど注目されず、3次方程式を解く際になって、本来は実根が存在するのに、根の公式を用いると複素数として表示されることから数学者達が疑問を持つようになった点については、授業に出ている多くの人が驚いているようでした。

ついで、オイラーによる解法が紹介され、複素数の偏角を扱うことにより、根の公式によって導き出された値から実根を見事に導いた部分が紹介されました。

次回も、引き続き、複素数に関するオイラーの業績を見ていきます。

2011-12-19

数理科学II(第17回)

今回は、まず、前回の続きで、行列の triangular idempotent form を用いて零空間(の基底)を計算する方法について説明しました。その後、f-reducing polynomial を用いて、与えられた多項式の既約因子をすべて分離する計算の部分について、補足説明を行いました。最後は、実際の例を用いて、Berlekamp による因数分解の計算結果を紹介しました。

有限体上の1変数多項式の因数分解については、これで一区切りとなります。次回からは、整係数の1変数多項式の因数分解に入る予定です。この授業の今年の講義はこれで終わりますが、新年も幸先のよいスタートになればと思います。

2011-12-16

数学類セミナー(第19回)

今回は、大学説明会委員会によるアンケート調査がありました。

今年のこの授業はこれが最後で、次回は年明けになります。

数学特別演習(第9回)

今回は、前回に引き続き、オイラーと解析的数論の話題を発表してもらいました。内容は、「オイラー積」を用いて素数が無限に存在することの証明、素数の逆数の和が発散することの、オイラーとそれ以降の数学者による証明、そして、素数の分布に関する「素数定理」の話題などでした。

次回からは、次章「オイラーと複素数」に入ります。

2011-12-14

線形代数III演習(第1回)

このたび、数学類が開設する1年次対象の授業科目の「線形代数III演習」を担当することになりました。今回は物理学類2クラスの担当です。

今日は、ガイダンスとして、授業の進め方や単位の取り方などを説明の後、簡単なレポート問題 (quiz) を解いて出してもらいました。次回、解答と解説をしたいと思います。

微積分III演習(第1回)

このたび、数学類が開設する1年次対象の授業科目「微積分III演習」を担当することになりました。今回は化学類・地球学類のクラスの担当です。

今日は、ガイダンスとして、授業の進め方や単位の取り方などを説明の後、最初の演習問題を配って各自取り組む時間にしました。

化学類や地球学類の微積分の授業は、1学期と2学期の間は、各学類1クラスで開講され、各クラスとも各学類のほぼ全員が履修するので、クラスの人数は40〜50人程度と多くなります。こうなると、数学の演習の特徴である「板書で解答」がほぼ不可能です。 一方、微積分IIIでは履修者数がぐっと減るため(今回は15人程度)、板書も可能になるので、学生さん達にはじっくり学んでもらえればと思います。

2011-12-13

計算機演習(第1回)

今日から、全学計算機のサテライトを利用して、実質的な授業が始まりました。

今日は、数式処理システム Mathematica の基本操作の1回目と、e-ラーニングシステム Moodle の利用法などを説明しましたが、説明時間が予想よりもやや多くなり、実際の作業時間が少なめになったと思います。幸い、学生さん達はほとんどが順調に作業しているようでした。

今日はまだ12月前半ですが、来週20日は金曜日の振替授業のため休講、再来週27日は冬休みということで、今年の授業はこれで終わりです。これに伴い、レポートの締切が、通常、次回授業日としているところを、翌週20日にしましたので、注意が必要です。来年も履修者全員元気に出席することを望みます。

2011-12-12

数理科学II(第16回)

今回は、前回に引き続き、f-reducing polynomial の計算法の続きを説明しました。

この中で、ある行列の零空間 (kernel) (の基底)を計算する必要がありますが、そこで、行列の triangular idempotent form (下三角行列で、2乗すると自身に等しくなるような行列) を求めることで、零空間の計算の手がかりになります。今回はその紹介をしたところで時間がきたので、次回はそれを用いた零空間の計算から説明する予定です。

2011-12-06

計算機演習(第0回)

今年度も、数学類3学期、2年次対象の「計算機演習」を担当することになりました。

今日は、初回ということで、授業のガイダンスを行いました。今年度の履修者数がどの程度になるかと思いましたが、例年とほぼ同じ、50人台ということになりそうです。それから、スタッフの体制ですが、今年度は、いつもより多く、10人前後のティーチング・アシスタント (TA) をお願いしました。今回は、各人の都合により、授業専従の人、レポート添削専従の人、両方を行う人に分かれています。

実際の授業は来週から行います。

2011-12-05

数理科学II(第15回)

今回から3学期に入りました。

今回は、前回欠席者もいたので、「中国剰余定理」の多項式版を説明した後、f-reducing polynomial が必ず存在することを、中国剰余定理を用いて説明しました。

その後、f-reducing polynomial の計算法について説明を始めましたが、途中で時間がきたので、続きは次回行います。

2011-12-02

数学類セミナー(第18回)

3学期からは「数学類セミナー」という名前の科目になりましたが、回数は1、2学期からの通しの回数で数えます。

今日は久しぶりに特に行事もなく、連絡事項のみで終わりました。来週12月9日は、担任の出張に伴い休講で、次回は12月16日になります。

数学特別演習(第8回)

今日から3学期分の授業に入りました。

前半では「バーゼル問題」について、オイラーによる応用として、三角関数のべき級数展開を求める際に、p 級数の値を利用できること、それから、オイラー以降の研究の進展について発表してもらいました。p が奇数の場合の p 級数については、オイラー以降の研究の進展がほとんどないことに驚かされます。

後半では、第4章「オイラーと解析的数論」に入りました。今日のところは、オイラーによる、調和級数と素数の関係の解明について発表してもらいましたが、いつものように、無限級数に対する(形式的な)加減乗除を駆使して結論を導くオイラーの大胆さには驚かされます。

次回は、オイラーによる、素数の逆数の和が無限大に発散することの証明など、オイラーによるさらなる成果について見ていきたいと思います。

2011-11-18

クラスセミナー(第17回)

今日は、授業アンケートをとりました。前回の日記で「全代会教育委員会」主催と書きましたが、正しくは、自然系学類のクラ代会の主催でしょうか、とにかく、自然系学類が独自に行っている授業アンケートのようです。

このアンケート調査は、マークシートと記述式の2本立てで、2学期の授業科目6〜7科目の調査を行うので、用紙の種類も多く、それなりに時間をかけて皆さん答えていました。この結果は3学期のクラス連絡会(学生と教員の懇談会)の際に討議資料の一つになると思いますが、授業改善につながることを望みます。

2学期のクラスセミナーは今回で終わりですが、3学期は「数学類セミナー」とまた衣替えして、同じ時間に行います。

数学特別演習(第7回)

今日の前半は、前回進めなかった部分、オイラーによる「p 級数」の計算の拡張について発表してもらいました。

「p 級数」は、数列 1/np (n = 1,2,3,...) の和で、p = 2 のときが有名な「バーゼル問題」ですが、オイラーは、p = 2 の場合の無限級数の値を求めたのに続いて、他の p の値に対して、それらの無限級数の和の計算にチャレンジしました。

その結果、彼は、代数方程式の根と係数に関する新たな公式を編み出し、それを道具に用いて、p が偶数の時に、p 級数の値を構成的に計算する方法を見出しました。これにより、p が偶数のときの p 級数の解明は大きく進歩したと言えると思います。

引き続いて、後半では、「バーゼル問題」のオイラーによるもう一つの証明を紹介してもらいました。先の証明は「オイラーらしい信念の飛躍」があり、これに疑問を持つ人もいたようですが、今度の証明では、誰もが認める微積分の基本的な性質のみを用いた証明に成功し、これもまた素晴らしいものだと思います。

次回は、オイラー以降のこの問題に対する研究の進展などを紹介してもらう予定です。2学期の授業は今回で終わりで、今学期発表がなかった人にはレポート課題が出ます。期末試験の準備もあって大変かとは思いますが、各自頑張って力作が出ることを期待しています。

2011-11-14

数理科学II(第14回)

今日は、有限体上の1変数多項式の因数分解への準備として、f-reducing polynomial の概念と、中国剰余定理について説明しました。

2学期の授業はこれが最後で、来月、3学期は、中国剰余定理をもとにした、f-reducing polynomial の存在性と、その計算方法から説明していく予定です。

2011-11-11

クラスセミナー(第16回)

今日のクラスセミナーは、久々に行事は何もなく、出席をとって終わりました。

今日、連絡がありましたが、来週は、全代会教育委員会によるアンケート調査が実施される予定です。

数学特別演習(第6回)

今日は、いわゆる「バーゼル問題」の、オイラーによる最初の証明 (1735年) について、発表してもらいました。

オイラーによる証明は、「無限次の1変数多項式の因数分解」のように「オイラーらしい信念の飛躍」(本文より)を伴うもので、その発想には読んでいて驚かされますが、それが、厳密には証明が必要なものであっても、本質的に筋が通っていて、正しい方向へ答えが導かれるという点に、ますます驚かされます。

今日の授業では、オイラーによる「p級数」のさらなる成果に進む予定でしたが、今日当たっている発表者のうち、1人目が欠席、3人目が風邪で声が出ず、4人目は準備不足ということで、今日は1人で発表が終わりました。次回は今学期最後の授業ですが、次の人から無事進むことを期待しています。

2011-11-07

数理科学II(第13回)

今日から、有限体上の1変数多項式の因数分解の話題に入りました。この授業では、有限体上の1変数多項式の因数分解として、Berlekamp による算法を取り上げます。

今日はまず、導入として、環や体の術語(概念)の復習を行い、ついで、有限体上の多項式や、代数拡大による有限体の構成について、例題を挙げながら解説しました。そして、今後使う道具として、Fermat の小定理を説明しました。

次回以降は、引き続き、これから使う道具、特に中国剰余定理の説明をしながら、算法の解説に進む予定です。

ついでに、余談ですが、毎回、この授業が終わった後の教室に、次の授業を受ける学部の3年生の人達が入ってきますが、一部の人達が興味深そうに、残った板書を眺めています。そんな彼らに、今は有限体上の多項式の因数分解をやっていますなどと話したりしています。

彼らの授業は2学期で終わるそうなので、板書の見物も今月限りだと思いますが、もし、彼らの中で、このまま大学院に進み、数年後、私もこの授業を続けていて、彼らが聴きに来たりするようなことになったら、ちょっとおもしろいかも、と思いました。

2011-11-04

クラスセミナー(第15回):平成23年度第1回 数学類クラス連絡会

今日は、クラス連絡会(学生と教員の懇談会)ということで、学生と教員が直接集まり、学生による授業評価や、大学の福利厚生などについて、直接議論する、毎年恒例の行事がありました。

会場は、普段クラスセミナーを行っている場所と同じフロアの教室でしたが、入って早々、会を運営するクラ代会(クラス代表者会議)の人から、プロジェクタに投影できないと相談されました。私も試してみたところ、やはりうまくいかなかったので、急きょ、自分のオフィスにあるプロジェクタを持ってきて、何とか投影できました。ただ、このおかげで、福利厚生に関する議論を聞き逃してしまいました。

今年、意外だったのは、授業評価アンケートに関する学生からの意見がなかったことですが、授業評価アンケートに基づいて、クラ代会が、いくつか討論の議題を設定しました。それらは「板書の質(数式は問題ないが日本語が見づらい)」、「数学の全体像が見えない」、「授業で扱う内容の具体例を挙げてほしい」、「演習問題の模範解答を配布してほしい」というものでした。

これらの討論では、学生からも教員からも、活発に意見が出ていました。全体的に、学生からは教員に対する要望が出たのに対し、教員からは、学生に対し、より自発的な対応(「その場で質問や要望を出す」「自分で本やインターネットなどの情報を調べる」「自分で具体例を作ってみる」「すぐに正解を求めず、自分で考え抜く姿勢も大切」等)を促す意見が出ました。毎年、議論の内容はそれ程変わらないような気がしますが、この懇談会に出席する1年生は、毎年変わりますから、こういう形で毎年対話を続けるのは意義があると思います。

今後、年度末までに、例年ですと、旧自然学類に相当する4学類(数学・物理・化学・地球)の合同の懇談会、冬にも数学類で行う第2回の懇談会がありますので、また有意義な議論になることを望みます。

数学特別演習(第5回)

今日は、前半で、この章のまとめとして、調和級数と自然対数の差がある定数に収束すること---オイラの定数 γ の話題を取り上げました。

後半は、「第3章:オイラーと無限級数」に入りました。この章では、若き日のオイラーの名声を決定的なものにしたと言われる「バーゼル問題」、すなわち、1/n^2 の無限和が π^2/6 に等しいことの証明を取り上げています。今回は、オイラー以前の結果と、オイラーによる最初の成果として、級数の近似値を効率的に求めるための研究を取り上げました。

次回は、バーゼル問題の証明を見ていく予定です。

2011-11-01

Google Developer Day 2011 Tokyo

Google Developer Day 2011 Tokyo (以下 "GDD" と略します)に参加してきました。これは、Google が開発、運用している、さまざまな技術の紹介、Google の技術を用いた各出展者の製品やサービスの紹介、Google の技術を用いて開発している開発者の交流のイベントです。

私自身は「お気楽開発者」といいますか、普段は主に Google の製品やサービス (Chrome, GMail, Google Apps, ...) を使う方で、たまーに必要に迫られて、Google なんとかの API リファレンスやチュートリアルを見てプログラムを作ったりする程度ですが、Google の技術には関心ありました。

GDD に参加するには、一般参加枠の場合、DevQuiz という問題を解いて、得点でクイズ参加者の上位に入る必要があります。DevQuiz を受けた際の詳細については、以前の私の日記の方にありますが、何とかこれを通過し、参加できることになりました。

以下、イベントに参加した際の記事ですが、いろいろな講演や出展があったので、私が見聞きした分に限る点、お断りいたします。

まず、会場に入って、上の写真のような大きなパネルがあります。GDD 2011 のロゴです。(ロゴの由来については、今回 GDD の運営で大活躍された、Google の山崎富美さんのブログの記事があります。)

会場地図と講演のスケジュール。(今回のアジェンダは GDD のwebページにあります。)

たくさんの人が来て、スタッフに誘導されながら列を作って入場です。

さすが、朝のおやつも完備しています。うちの業界の国際会議とほぼ変わらない雰囲気。

午前中の基調講演が行われるメインホールには、スタッフの誘導に従って入りましたが、たまたま並んだ順番で、中央部まん中の一番いい席になりました。普通なら VIP 席ですよね。コンサートなら S席。開発者は平等に扱われる雰囲気が好感がもてます。

午前中の基調講演は、2時間も何やるんだろう、持つのかなーと思っていましたが、実際に聴いてみると、最後まで飽きない内容でした。内容は、現在 Google が中心的に取り組んでいる技術:Android, HTML 5, クラウド (AppEngine), ソーシャルネットワーク (Google+) の紹介ですから、ニュースを見たりすればそれでも情報を得ることはできますが、よく名前を聞く有名人を直接見られるとか、最新技術のデモを直接見られるとか、そういう点は大いに刺激になります。

講演を聴いていると、Google のもの作りにおける基本姿勢の一つは「技術者を動機づける」という印象を受けました。同様のイノベーションをもたらしている Apple と比べると、「利用者のために」という目的は同じだと思いますが、Apple では、技術(者)はなるべく製品を影で支えるという印象に対し、Google は、技術(者)を前面に出して製品を引っ張るという印象で、両者における技術(者)の露出度(?)の違いが興味深く感じられました。

基調講演が終わるとお昼で、お弁当が出ます。今回は、サンドイッチ、サンドイッチ(ベジタリアン用)、中華弁当、洋風弁当から選べましたが、みなとみらい→中華街という安易な発想で、中華弁当を選びました。崎陽軒のお弁当です。うまかった。

昼食で、若い開発者の人と話をしました。その人の会社では(個別ドメイン用)GMail と Google Apps を統合したサービスを作ったりしているそうですが、3月の震災を機に社内のメールシステムを GMail に移行したりしているうちに、それを商売にするようになったというあたりが興味深かったです。あと、その人のノートパソコンのケースをちらっと見たら布製で、手作り感があったので興味があって尋ねたところ、お祖母さんが作ってくれたのだそうで。なんてすてきなケースなんでしょう!

午後は、1時間ずつ、4つくらいのトラック(同時並行)で講演です。私が聴いたのは、Google+(Google のソーシャルネットワークサービス)と、HTML 5のオフライン技術の話が中心でした。Google+ の API も、基本的な部分は簡単に使える話とか、Google Hangout という、ビデオ会話システムでは、ビデオで会話しながら、参加者が同時にwebアプリでゲーム(以外の用途もありますが)ができるとかという話も興味深く聴きました。HTML 5の話はほとんど知らないことばかりだったので、ためになりました。

講演会場は、最前列から3列くらいには、椅子の下に電源があり、重宝しました。あと、各講演会場の入口に、Chrome のロゴをかたどった飴が配られていて、これがなかなかおいしかったのですが、よく見ると、製造元が「金太郎飴本店」とあって、正真正銘の金太郎飴であることがわかりました。

講演会場の外では、さまざまな出展が行われており、にぎわっていました。NTT ドコモのブースでは、これから発売される GALAXY NEXUS (Android 4.0 "Ice Cream Sandwich" を初めて 搭載したスマートフォン)が、発売に先駆けて実機が展示されていました。が、その脇には手書きで「撮はご遠慮下さい」(太字は筆者)との掲示が・・・。よっぽどこの掲示を撮したかったですけどね。

Google Technology Users Group (略称 GTUG; ジータグ)による GTUG Lounge には、Google TV や、日本でまだ出ていない Chromebook(Chrome OSで動く、webアプリのみを使うノートパソコン)の展示がありました。

こちらが Chromebook。サムスン製です。ログインすると、Chrome が全画面で立ち上がるのみで、たしかにこれだとwebかwebアプリで仕事をするしか選択肢なし。結構薄め、軽めで、Chrome の動作もサクサクしています(ただし動画の再生などはやっていませんが)。会場内でも、Google の人が Chromebook とおぼしき機材を持ち歩いているのも見かけました。

さて、夕方6時になる頃には、ほとんどのトラックでセッションが終わり(いくつか続いているトラックもありましたが)、メインホールに移動して Ignite セッションが始まるのを待ちます。ロビーではちゃんと(?)アルコールが用意されており、私はもう少しで帰りに駅から自宅まで車を運転しなければならないことを忘れそうになりました(笑)。

オープニングは、Team Lab. による "Google Fes!" というもので、 何が始まるんだろーと思ったら、みんなでこのオープニングのための特設 web サイトに、Chrome か Android の web ブラウザで接続すると、画面のように1人1人に楽器が割り当てられます(私の楽器は「マラカス」です)。これは、マウスをクリックするか、"G" キーを押すかすると、 自分のマシンでは音が出ます。同時に、サーバ側からステージの画面に投影される絵が、参加者の入力に応じて動くというもので、音楽に合わせてみんなで楽器を叩いて(?)セッション、というものでした。この音を出す機構が HTML 5 の技術だったり、ホストとなるサーバは Google App Engine だそうですが、サーバ1台で数百人の接続を余裕でさばいたり、といった技術解説つきの、Google ならではのセッションでした。

Ignite と、このセッションの詳細については Google の blog にありますが、1人持ち時間5分、スライドは15秒感覚で自動的に切り替わるというプレゼンテーションです。私はこれまでこういう形式のプレゼンの経験があまりなかったので、興味がありましたが、よく考えてみると、自分のいる業界では、日本数学会の春と秋の学会は、これに近いものかもしれません(1人持ち時間が10分前後、短い人は5分など)。あと、学部の卒業研究発表会も、1人 の持ち時間が質疑応答入れて7分、とかだったりするので、案外、自分が未経験なだけで、こういう形式のプレゼンは身の周りにもありそうなことに気づきました。

Ignite 中盤には、Google ダンス部によるパフォーマンスというのがありました。出し物の中身はそれまで知りませんでしたが、後で調べてみたら、元格闘家の須藤元気さんが率いるダンスパフォーマンスユニット「WORLD ORDER」が、今年、 Microsoft が主催するイベント "WPC 2011" に出演した際のパフォーマンスの再現だったようです。なかなかの力作に拍手喝采でした。ついでに、今回のユニット名が "GDD48"。

Ignite の後半では、一好俊也さんの「死海文書オンラインコレクション」でかかったスライドが、どう見ても、トップバッターの久川真吾さんのものという事故が。セッションは一旦中断され、重田崇嗣さんの「Future API Client」が先に行われた後も復旧せず、Ignite の司会だった GTUG の安生さんと Google の北村英志さんによる漫才・・・ではなくて、今回の GDD の舞台裏などのトークショーが急きょ行われました。

その流れで質疑応答が始まって、客席から「停電などでも Google のサービスが止まらないためにどのような対策を行っているのか」という質問があり、Google の松尾貴史さんが登壇して「short answer は・・・『企業秘密』です」、「long answer は・・・そうならないよう、Google の技術者達は日夜努力しています。決してダンスばかりやっているわけではありません」(以上、私による要約)という回答。発言のたびに客席が湧いていました。そのうち、一好さんのプレゼンも復旧し、死海文書の興味深いお話。

最後は、Google DevQuiz チームによる、DevQuizの解説。特に「チャレンジクイズ」に関心が集まりました。こんな情報がもたらされました。

  • スライドパズルの問題は、最初ランダムウォークで 20000 問生成して、それから 出題する 5000 問を選んだこと。
  • 手数の上限値については、5000 問のうち 4000 問は実際に解いて最適解を出し、残りの 1000 問は、問題を作ったときのランダムウォークの手数をそのまま計上したので、それらについては冗長な分があること。
  • Google 社内で「チャレンジクイズ」を全問解いた人はいなかったこと(=満点をとった人達はやはりすごい)。
  • DevQuiz を始めた当初は、合格のボーダーラインを 100 点(= チャレンジクイズの手前まで)に想定していたが、クイズが進むと、意外に多くの人達がチャレンジクイズで点を取り始めて(参加者の得点分布は、毎日更新され、参加者に公開されていました)ボーダーラインの設定を再検討したこと。

おしまいは、Google の山崎富美さんの司会でクロージングが行われ、ボランティアスタッフや講演者の人達が登壇して、記念写真の撮影で幕を閉じました。

以上が、イベントの流れですが、 いろいろグッズももらったので、紹介しましょう。

まず、GDD というと、2009 年の GDD で、Android けーたいを参加者にサプライズで配布したのは大きな話題となり、それ以降、毎年この手の「おみやげ」が一部で期待されているようですが、残念ながら今年もそのようなものはありませんでした。Google からメールで参加証が送られた際にも

本イベントでは、高額なプレゼントをご用意しておりませんので、予めご了承ください。
と但し書きがありましたので。

ただ、 デバイス関係では「Android 端末用のゲーム用コントローラ」が配布されました。SDK も無料で提供されているようです。このコントローラは Bluetooth 接続で、Mac につないで Keynote のプレゼンの操作もできた、という話が、早くも参加者の方からあったみたいです。

それから、この手のイベントですと、まずTシャツですか。今回のTシャツはこんな感じでした。

背中の方には、今年の開催都市が一通り載っており、その中で「東京」がハイライトされています。

次に、入場の際に配布されたパンフレット&地図。

八つに折りたたむと、同じく会場で配布されたカードホルダにちょうどよく収まり、しかも "Google Developer Day 2011" のタイトルが、ちょうどネームタグの上に現われます。

一方、ネームタグの方は、Google Developer Link というサービスを使って印刷したものです。オンラインで必要事項を入力し、自分で印刷するか、セブンイレブンのネットプリントで印刷もできるという、おもしろいプロジェクトです。なお、このサービスは今後も続ける予定の旨、Ignite の際にアナウンスがありました。

今回、ピンバッジがたくさん手に入りました。こちらの記事にもありますが、これは、本来、Android, HTML 5, Google+ の各カテゴリーでそれぞれ5つ、合計15種類用意されたものです。参加者には1種類のバッジが10個ずつ配られ、他の人とバッジを交換して、2つのカテゴリーのすべて、合計10個のバッジを集めると、ごほうびがもらえるというものでした。

私は、Android の Ice Cream Sandwich(茶色のドロイド君)を手にして、Android と Google+ を集めようとしましたが、残念ながら10個揃えるに至りませんでした。所々レアものがあるようで、うわさによると、Google+ では赤のバッジがレアだったようです。

その他、Google+ の +1 ボタンをかたどったシールや、Google のホームページのロゴがパックマンになったときのパックマンロゴのステッカーも配られました。

・・・とまあ「お前はグッズもらいに行ったのか?」と言われそうですね。まぁ一部はそうですが(笑)、何よりももらえたのは、何かを作ろうというモティベーションだったと思います。どのイベントも非常に楽しめましたし、自分も何か作ってみようかな、何ができるか探してみようかな、という気になってきました。こういったわくわく感を、普段の仕事場でも忘れず、なるべく生産的な仕事ができるようにがんばろうかな、と思います。今回の GDD の準備、運営、講演をされた方々や、参加者として交流できた方々に感謝いたします。

あと、このレビューを最後までお読み下さった方、ありがとうございました。楽しいイベントですし、DevQuiz はちょっと、というか、結構手応えありますが、開発好きな方ならチャレンジして損はないと思いますので、これを読んで興味をお持ちになった方には、ぜひ次回の GDD でお目にかかるのを楽しみにしています。

2011-10-31

数理科学II(第12回)

今日から久々に授業再開ということで、今日から、多項式の因数分解の話題に入りました。

今日のところは、因数分解の全体的な道筋を説明し、引き続いて無平方分解の説明を行いました。無平方分解の説明は今回で一通り済んだので、次回は、有限体上の1変数多項式の因数分解の話題に進みます。

2011-10-28

クラスセミナー(第14回)

今日のクラスセミナーは、久しぶりに特に行事はなく終わりました。

来週のこの時間は、数学類クラス連絡会(学生と教職員による懇談会)が開催されます。

数学特別演習(第4回)

今日は、オイラーの業績として、指数関数と対数関数のべき級数展開を求める話を中心に議論しました。

オイラーは、著書「無限解析入門」の中で、指数関数と対数関数のべき級数展開を扱いました。この本では、内容を初等的にするため、微積分を使わずにこれらの計算を行ったとのことですが、計算の鍵を握っているのは、ニュートンによる (1+x)rの2項展開で、指数関数や対数関数の式を巧みな操作でこの形に持ち込んで展開を行っています。そして、非常に巧妙なやり方で、指数関数と対数関数のべき級数展開を得ていました。

オイラーによるべき級数展開の導出で印象的な点の一つに、「無限」の扱いで、たとえば、整数 j に対し、 j/(j-1) という有理式において、 j が無限に大きくなる時にはこの式は 1 に限りなく近づくとして、1とおいて計算を進めたりする点があります。もちろん、これを厳密に確かめるは、19世紀以降の微積分の発展を待たなければなりませんが、オイラーのこの大胆さに爽快感を覚えるとともに、この直感的な操作も本質的には正しい方向に計算を導くことに、オイラーの発想の非凡さを感じます。

次回は、今回の内容に関連する話題として、調和級数の発散と「オイラー定数 γ」の話に入る予定です。

2011-10-21

クラスセミナー(第13回):図書館フレッシュマンセミナー

今日は、この授業内で、中央図書館にて、数学類対象の「図書館フレッシュマンセミナー」を実施しました。

附属図書館では、図書館サービスに関するさまざまなチュートリアル(講習)が行われています。「図書館フレッシュマンセミナー」もその一つで、主に学類1年生を対象に、図書館の使い方の基礎知識を教えてもらうものです。通常は、学類単位で申し込んで受講します。

数学類も、今年度、図書館フレッシュマンセミナーの受講を申し込みましたが、図書館側と私達の都合の折り合いがなかなかつかず、今の時期の実施になりました。

前半は、中央図書館の集会室に集まり、職員の方の講習を受けました。内容は主に図書館のオンラインシステムの使い方で、自分のアカウントでログインし、蔵書を検索したり、借りたい本が貸し出されているときに利用予約を行ったり、雑誌や論文記事、新聞記事などを探したりすることができます。

後半は、4つの班に分かれ、職員の方々の先導で、館内を見学しながら、各施設の使い方などの説明を受けました。雑誌が配置されている電動書架や、セミナー室、視聴覚資料、コピー機などを見て回りました。新入生の人達も入学して半年経ちますが、自動貸出機をまだ使ったことがない人もいたようで、今回の講習も役に立ったと思います。

今回、講習にご協力下さった附属図書館と職員の方々に感謝します。来週は通常のクラスセミナー、再来週は、数学類のクラス連絡会の予定です。

数学特別演習(第3回)

今日は、前半、偶数の完全数に関するオイラーによる定理の証明の後の研究の進展について、発表してもらいました。

完全数については、まだ謎も多く、たとえば、奇数の完全数の存在については、存在の証明も非存在の証明もまだできていません。現在までの研究で、10300までの奇数には完全数は存在しないことがわかっているそうです。その他、これまでに知られている完全数のいくつかの性質を見ました。

後半では、第2章「オイラーと対数」の話に入りました。今回は、オイラーが登場する前の話で、対数の導入や、対数の数値計算の話が取り上げられました。オイラーによる、対数関数や指数関数の級数展開が行われる以前は、対数の数値計算にも大変な手間を要したことや、オイラー以前の対数関数に関する知識などについて発表が行われました。

次回は、オイラーによる、対数関数や指数関数と、その応用で、対数の数値計算が劇的に速くなったことなどがとりあげられる予定です。

2011-10-14

クラスセミナー(第12回)

今日のクラスセミナーでは、担任から、来週の図書館フレッシュマンセミナーの連絡を行いました。その後、全代会による、東日本大震災に関するアンケート調査と、先日の学園祭でのクラスの出店に係る報告がありました。学園祭の出店は、なかなかの人出だったようです。お疲れさまでした。

来週のこの時間は、図書館フレッシュマンセミナーとなります。集合場所がいつもと異なりますのでご注意下さい。

数学特別演習(第2回)

今日は、偶数の完全数が、2k-1(2k-1), 2k-1 は素数, の形で表されるという定理と、オイラーによるその証明を行いました。

証明に至る準備では、自然数 n に対し、n のすべての約数の和を表す関数 σ(n) の性質を確認しました。この関数はオイラーが導入したものですが、定理の証明において、この関数が巧みに用いられていることがわかります。

関数 σ(n) の性質、定理の証明とも、議論は初めて読む人には少々面倒な部分もあるかもしれませんが、内容は初等的で、よく考えながら読めば理解できるようなものです。数学の本に慣れていない人にはまだ少々きつい部分があるかもしれませんが、このようなテキストで数学の本の読み方を学んでいってほしいと思います。今日発表した人達は、よく準備してきていました。

次回は、現在も未解決問題として残っている、奇数の完全数の存在性などを取り上げます。

2011-10-03

数理科学II(第11回)

今日の授業では、1変数多項式の四則演算の実装の続きを説明しました。

まず、減算の実装に先立って、多項式の「定数倍」の実装について説明し、その後、減算の実装について説明しました。「定数倍」の実装については、実際に履修者に実装してもらうレポート課題にしました。

引き続き、乗算の実装に先立って、多項式に単項を掛ける演算を実装し、これに基づいて乗算の実装を行う説明をしました。

授業の今後の予定ですが、次週10日は休日につき休講で、その後、10月17日と24日は、田島先生が授業を担当されます。よって、私の次回の授業は、月末の10月31日になります。今日出題のレポート課題の締切は、次回の私の授業の10月31日になりますので、各自取り組んでもらいたいと思います。

2011-09-30

クラスセミナー(第11回)

今日のクラスセミナーでは、クラス担任からの連絡として、図書館フレッシュマンセミナーとクラス連絡会の日程について連絡しました。

次に、新入生歓迎委員会 (OPT) の代表が来られ、OPT の活動紹介と委員への勧誘がありました。OPT の皆さんには大変お世話になりましたが、1年生の人達も、来春、後輩の指導にあたる人が十分出てくることを期待します。

その後、クラス連絡会で取り上げるべき話題について、意見聴取がありました。主に学内外の福利厚生に関する要望等ですが、クラス連絡会は、学生が教職員と直接対話できる貴重な機会ですので、ぜひ学生のためになる意見を出してもらいたいと思います。

来週は学園祭準備のため休講で、次回のクラスセミナーは再来週になります。

数学特別演習(第1回)

今日から、いよいよテキストを読み始めました。テキストの第1章は「オイラーと数論」で、オイラーが「完全数」に関する結果を導いた話です。

「完全数」は、真の約数の和がその数自身に等しい数です。完全数に関する最初の数学的に意義のある結果を導いたのは、驚くなかれユークリッドで、彼の「原論」に載っているということです。ユークリッドは「2k-1 が素数で、N=2k-1(2k-1) のとき、Nは完全数である」ことを証明しました。

この定理は、ある数が完全数であるための十分条件を与えたものとして画期的でした。また、この定理により、完全数を探す問題が「2k-1」の型の素数を探す問題に帰着されることもわかります。2k-1の型の素数は「メルセンヌ素数」と呼ばれますが、自然数 k に対し、2k-1 が必ずしも素数になるとは限りません。メルセンヌ素数の探索は現在も続けられており、特に現在では、インターネットを介して共同でメルセンヌ素数を探すプロジェクト (Great Internet Mersenne Prime Search; GIMPS) というものも存在します。

では、完全数はどのような形で表されるか?という問題に答えたのが、これから読んでいく、オイラーの業績です。授業は来週に続きます。

さて、今回は最初の授業で、最初に発表した人達は、準備の要領など、初めての経験で大変だったと思いますが、よく頑張って説明していたと思います。次回以降発表する人達も、今回の授業が生かされるような発表になるよう、楽しみにしています。

2011-09-26

数理科学II(第10回)

前の授業日が木曜日で月曜の授業、それから金、土、日と3連休して月曜日になりましたので、月曜の授業が2日続くことになります。

今日から1変数多項式の四則演算の実装ということで、今日は加法について説明しました。

昨年度は、この段階で初めて多項式演算の算法について説明したので、説明のステップが多くなって大変でしたが、今年度は、すでに1学期のうちに、多項式演算も含めたアルゴリズムの概要を説明しました。今回からの説明では、Scheme でよく用いられる末尾再帰を用いて、より Scheme の実装に近い形で、多項式の四則演算の説明を行うことにしました。

今日のところは、何とか加法の説明を終えました。次回以降、減法、乗法、除法について順次説明したいと思います。

2011-09-22

数理科学II(第9回)

今日は木曜日ですが、月曜の振替授業日です。今日は、計算機による(より具体的には、Scheme のようなリストを扱う言語処理系でよく行われる)多項式の表現について説明しました。

次回は、これをふまえて、1変数多項式の四則演算の実装について説明します。

2011-09-16

クラスセミナー(第10回)

数学類1年次の「フレッシュマンセミナー」は、2学期には「クラスセミナー」という、別の授業として開講されますが、授業目的もメンバーも内容も1学期と同じですから、回数は1学期から続けて数えます。

夏休み明け最初のクラスセミナーということで、休んでいる人は数人いましたが、他の授業では見かけているとのことで、ひとまず全員無事そうで安心しました。

クラス担任からの連絡としては、最近、学生の急性アルコール中毒の事件が起きたとのことで、大学から注意喚起の依頼がありました。あと、「図書館フレッシュマンセミナー」を、学園祭の後、10月下旬に、クラスセミナーの時間を使って行います。

これから10月上旬までは、学園祭に出すイベントの準備ということで、頑張ってほしいと思います。

数学特別演習(第0回)

今年も、昨年に引き続き、数学類の「数学特別演習」を受け持つことになりました。

昨年は2クラスに分けての開講でしたが、最初のクラス分けの際に人数がアンバランスになりそうだったので、今年は1クラス増やしての開講になりました。今日は、ガイダンスとクラス分けを行いました。

私のクラスで選んだのは次の本です。

W. ダンハム (著), 黒川 信重, 若山 正人, 百々谷 哲也 (翻訳)
「オイラー入門」
シュプリンガージャパン
オイラーは、言うまでもなく、数学史上最も偉大な数学者の一人ですが、本書では、オイラーの数多くの業績からいくつかを選び、各テーマ毎に、「プロローグ」として、オイラー登場以前のその分野の背景、「オイラー登場」による彼の業績、「エピローグ」として、オイラー以降のその分野の発展について述べています。

クラス分けの結果、20人強の人達が集まりました。履修者全体の約半分ですので、3クラスの中では人数が多いですが、これから有意義な授業にできればと思います。

2011-09-12

数理科学II(第8回)

今日から、2学期の授業が始まりました。

今日の授業では、前回に引き続き、 Scheme での「逐次」「選択」「反復」のアルゴリズムの記述法について説明しました。「逐次」は begin 形式、「選択」は if 文と cond 文、反復は再帰的定義です。

特に、再帰的定義では「末尾再帰」を取り上げ、末尾再帰が一般のループの形に直せることや、スタックの消費が少なく、効率的である点を説明しました。

Scheme の一般的な解説はこれで終わり、次回は、計算機上(特に Scheme 上)での多項式の表現について説明します。

2011-06-27

数理科学II(第7回)

今日の授業では、プログラミング言語 Scheme の紹介に入りました。

今日は、atom と pair、Scheme (LISP) の基本関数、関数の実行と定義の方法を紹介しました。1学期の授業は今日で終わりなので、残りの部分は、2学期の最初に説明したいと思います。

2011-06-24

フレッシュマンセミナー(第9回)

今日は、1学期のフレッシュマンセミナーの最終回で、「フレッシュマンセミナー」という授業科目も、1学期完結なので、授業科目としても最終回です。ただし、新しい授業科目として、このコマの授業は通年で続きます。

今日は、先日、社会工学類の人達が授業の一環で実施したアンケート調査の関連で、研究成果を発表していただきました。

これは、社会工学類の「都市計画実習」という授業で、都市(具体的には、主として大学のあるつくば市周辺)の現状と問題点を把握し、それに対する対策について、実験を行ったりして提案するという授業のようです。

履修者は、テーマ毎にいくつかの班に分かれて調査、研究を行います。今回、私達にアンケート調査を行った人達の班は「社会的ジレンマ」というテーマで研究を行っていました。「社会的ジレンマ」とは、市民が短期的に利益を得る行動を行うことによって、その周辺社会が長期的には不利益を受ける問題、と説明されましたが、最初はよくわかりませんでした。後で資料(PDFファイル)を読み直してわかったのですが、たとえば、誰かがイオンの裏の道路に路上駐車をする(=駐車場に停めるより近いという利益のため)ことにより、特に夕方はその道路で渋滞が発生する(=そこを通る人達にとって不利益)といった構造の問題のようです。

彼らは、社会的ジレンマとして、今年の東日本大震災に伴って発生した原子力災害を取り上げ、主につくば周辺の農産物に対する放射線の風評被害をいかに軽減するかという課題を設定して研究を始めたそうです。しかし、今回の放射線被害が、かつてのJCO臨界事故で起きた風評被害とは異なり、本当に放射性物質による被害が起こったことで、当初の課題設定の再検討を行い、消費者が、放射線に関する正しい知識を身につけ、能動的な情報収集の動機づけを行うことにより、「未知に起因する恐怖」を低減させることを目指すという課題に修正したとのことでした。

そのための取り組みとして、放射線に関する知識や、放射線による汚染を防ぐための方法を記したポスターやパンフレットを配りました。このような活動を「リスクコミュニケーション」と言うのだそうです。そして、リスクコミュニケーションの効果を調べる手段としては、アンケート調査になるわけですが、たとえば、数学類の1年生を、パンフレットを見せたグループと見せないグループに分けて、それぞれ、パンフレットを見せる前と後で、放射線に対する知識や意識を調べたというわけです(これまでのフレッシュマンセミナーにおける2回のアンケート調査が該当します)。

調査結果は多岐にわたるので、詳細は略しますが、ポスターやパンフレットによる説明は、放射線に対する未知の恐怖感を和らげる効果があったこと、ポスターよりもパンフレットの方が効果がより高かったことなどが報告されました。

今回の研究報告を聞きますと、途中で課題の軌道修正が必要になったなど、苦労もあったようですが、全体的によく練られた調査・研究を行っていた印象を受けました。数学ではこのような授業は皆無ですので、カリキュラムの面からの興味もありましたし、指導をされた先生方も、かなりの労力を割いて指導に当たったであろうことがうかがえました。私達のリクエストに応じて丁寧に報告をして下さった学生さん達に感謝したいと思います。

さて、1学期の授業はこれで終わりで、次に会うのは2学期ですが、それぞれ、有意義な夏休みを過ごし、また元気に再会できることを望みます。

数学特別講義I(第10回):大学数学の勘どころ・・・歩きながら考える

この授業も今日が最終回ということで、今日の授業は、数学類長の磯崎洋先生による「大学数学の勘どころ・・・歩きながら考える」でした。

授業の内容は、だいたい、昨年とそれ程変わりありませんでしたので、詳細は昨年のレポートに譲りますが、今回の授業では、数学に限らず、自分の身の丈に合った知識を使いこなせるようになることが大切であること、数学においてはそれが「線形代数」と「微積分」であること、使いこなせるようになるためには、自分の手を動かして逐一計算してみることが大切であること、といったお話が印象に残りました。

一生かかって読む本を探すのもいいでしょう、というお話を聞き、私としても、数学を一生楽しむ楽しみ方を、学生さん達がこれから見出し、実際に楽しんでいくことを願わずにはいられません。そんな私は・・・というと、一生かかって読む本の前に、今すぐ勉強が必要な本や論文が結構あるので、のんびり楽しむのはまだ先のことになりそうですが。

さて、今年の授業も終わりましたが、今年も、毎回の各先生方の授業を楽しませてもらいました。世話人の守屋先生にも感謝したいと思います。来年はどうしようか・・・その前に、まずは自分の担当回の成績をつけなければなりませんね。頑張りましょう。

2011-06-20

数理科学II(第6回)

今日は、前回に引き続き、計算機のしくみの話からで、メモリの配置とワードの説明をした後、計算機上の数の表現ということで、多倍長整数の表現として、リスト表現を含む表現について説明しました。その後、一般の情報のリスト表現へ話をつなぎました。

次回からはプログラミング言語 LISP(実際は Scheme)の説明に入る予定です。Scheme の話は2〜3回続く予定ですが、1学期の授業は次回で終わるので、残りの部分は2学期に引き続き行います。

2011-06-17

フレッシュマンセミナー(第8回)

今日のフレッシュマンセミナーでは、アンケートが2件ありました。1件目は、学内のアドミッションセンターによるアンケートで、受験生への広報活動に関する内容を中心としたアンケートでした。

2件目は、先々週にサテライトで実施した数学類新入生アンケートで、こちらは、アンケート結果を集計していて、私が質問を1つ忘れたことに気づき、今日は紙で追加のアンケートを行いました。

それから、図書館フレッシュマンセミナーの日程も相談しましたが、2学期冒頭は学園祭に向けた準備を行う可能性があるため、学園祭が終わって落ち着いてから、という方向で日程を調整することになりそうです。

数学特別講義I(第9回):無限の不思議

今日の授業では、講義が始まる前に、世話人の守屋先生から、無記名のレポートの2件の捜索願いがありました。先週も口頭で連絡があったのですが、今日は、実際に、それらのレポートの表紙の一部分を、書画カメラで教室内に掲示しました。成績にかかわりますから、これで書き手が見つかるとよいですが。

さて、今日の講義は、塩谷真弘先生よる「無限の不思議」でした。

冒頭で、今回は、無限はあるものと考えて、話を進める、というアナウンスがありました。引き続き、「本質的に」異なる無限がたくさんあること、それらを区別するために、無限が「同じ」という概念をはっきりさせる必要があると説明されました。

たとえば、2つの集合の無限の度合い(集合論では「濃度」といいます)が等しいかどうかを調べるのに、両者の集合の間の写像の存在を調べます。両者の集合の間に全単射が存在することを、ここでは2つの集合が「合同」であると呼ぶことにし、集合の「合同」が同値関係であることや、自然数、整数、有理数、実数の集合、もしくはそれらのいずれかの直積集合に対する「合同」の性質をいくつか紹介しました。そして、自然数の集合と実数の集合が「合同」でないという、Cantorの定理と、その証明に出てくる対角線論法が紹介されました。

次に、集合どうしの「合同」の概念を拡張した「大小比較」について説明されました。そして、この定義による、異なる「大きさ」の無限集合が無数に存在するという内容が説明されました。

最後のテーマは「選択公理」でした。詳しくは略しますが、選択公理は、微積分で、関数の連続性を考える時に、ε-δ 論法を点列の収束で表すのに必要である点が指摘されました。また、選択公理を認めることにより、「Banach-Tarskiの逆説的分解(Robinsonの定理)」のように、ある球体を分解して、もとの球体と同じ体積の球体を2個作ることができるといった、直感的にはちょっと信じ難いことも数学的には成り立つという事実が紹介されました。

本来は、この後、命題論理と述語論理の話が続く予定だったようですが、残念ながら時間切れとなりました。しかし、今日の講義では、無限をめぐるさまざまな内容が、この時間内では十分な分量でわかりやすく示されていたと思いますし、微積分に現われる選択公理については、私も授業をしていてあまり意識していなかった部分でしたので、よい教訓になったと思います。

この授業も早いもので次回が最終回ですが、次回も楽しみにしたいと思います。

2011-06-13

数理科学II(第5回)

今日は、前回レポート課題としていた、1変数多項式の乗算と除算の計算量について、レポートを回収してから答え合わせをしました。あいまいだった部分についても議論しながら細かく確認できたので、学生さん達のためにもなればと思います。

講義の方は、計算機のしくみに関する説明に入りました。今日は「計算機の5大装置」と「ビット」の単位の話をしました。これから3〜4回かけて、計算機上で整数や有理数を扱うためのデータ構造や、リスト表現に関する話につなげていきたいと思います。

2011-06-10

クラリンピック

今日のフレッシュマンセミナーは、自然系学類(数学・物理・化学・地球)総合プロジェクト推進委員会(通称:SP)の主催によるスポーツイベント「クラリンピック」の時間になりました。

この「クラリンピック」、「クラス」+「オリンピック」の造語と思われますが、私が自然学類に在学中の頃はなかったはずで、私が大学院に進学してから、名前を聞き始めた記憶があります。当時、自然学類は、2年生に上がる時に各専攻に分かれることになっており、1年の段階では、専攻の区別なく8つのクラスに分かれていたので、クラスマッチ的な位置づけだったと思います。

さて、今年のクラリンピックは、当初、春日地区(旧図書館情報大)の春日体育館でバレーボールの予定でしたが、予約がとれなかったそうで、同じ春日地区の春日グラウンドで、ドッジボールとなりました。

今回、私は、数学類関連の写真撮影の依頼があり、その任務もありましたが、もともと興味があったので、数学類のもう1人の担任の梁先生とともに足を運んだわけですが、ふつう、こういうイベントに担任は来ないもんですかねぇ。なかなかおもしろかったです。

さて、今回は、数学・物理・化学・地球の各学類とも2クラスあるので、合計8クラスによる対抗戦になりました。結果は、優勝が物理2クラス、準優勝が地球1クラス。3位決定戦の末、3位が化学2クラス、4位が数学1クラスとなりました。4月のオリエンテーション合宿の際は数学は勝ち星がなかったのですが、今回は1クラスが1勝したので、勝ち星を挙げられたのはよかったな思います。皆さんお疲れさまでした。

数学特別講義I(第8回):折り紙と数学:角の三等分作図不可能性

今日の講義は、川村一宏先生による「折り紙と数学:角の三等分作図不可能性」でした。

授業では、まず、渡された紙を折ることで、折り紙による角の三等分を行いました。ユークリッド以来の初等幾何学で、定規とコンパスを使って「角の三等分」をするというのは一般にできない、という話はよく覚えているので、折り紙で角の三等分ができる!というのは、話を聞いたことはありますが、実際にやってみると新鮮なものでした。

では、なぜ、折り紙ではできる角の三等分が、定規とコンパスではできないこととされるか?それには「定規とコンパスによる作図」がどういうものか、その定義をきちんとすることから始まります、ということで、お話が始まりました。

「定規とコンパスによる作図」では、まず、単位長さ(これを1とおきます)が与えられると、それを基準にして、整数、有理数(倍の長さの直線)が作図可能であることが説明されました。そして、任意の有理数qの平方根も作図可能であることも説明されました。これは、代数の言葉を使うと「有理数体Qに実数(q)^(1/2)を添加して得られる数体」の元(数)を表せることになります。

さらに、それまでに得られた数(長さ)を用いて描いた2つの円の交点の座標は、それまで得られた数体のある元(数)Aの平方根(A)^(1/2)をさらに添加して得られる数体に属することが言えます。これを繰り返すことにより、定規とコンパスによる作図を繰り返すことは、有理数体から始まって、それまでに作った数体に、そこから選んだある数Aの平方根(A)^(1/2)を添加して、数体をどんどん「膨らませていく」操作に他ならないということが説明されました。

さて、角の三等分が、数体をどんどん膨らませていく操作とどのような関連があるかを見るために、今度は、角の三等分を、代数方程式を解く観点から見ます。与えられた角度θを三等分することを考えると、余弦 cos θ の3倍角の公式から、a=cos θ とおくと、求める角 θ/3 の余弦 cos (θ/3) は、方程式 4 x^3 - 3 x - a = 0 の根であることが言えます。ところが、この a が、先に述べた、定規とコンパスによる作図で、数体をどんどん膨らませていく操作では一般に表せないものであることから、定規とコンパスによる作図で、角の三等分は一般には不可能、という結論にたどり着きました。

今回のお話は、幾何の問題を代数の問題に置き換えることにより、紀元前から問われていた問題が、19世紀になってようやく解けたという部分も興味深かったですし、方程式の果たした役割は、先日の天野先生の講義とも関連がある部分で、興味深いものがありました。最後に、定規とコンパスで不可能な角の三等分が、折り紙で可能ということは、折り紙の作図には定規とコンパスでは不可能な操作が含まれているはずですが、それは何でしょうか?というのは、今回のレポート課題の一つですが、こちらも興味深い問題です。

2011-06-03

フレッシュマンセミナー(第6回)

今日は、アンケート調査が3件ありました。

1件目は、先日、社会工学類の3年生の人達が授業の一環で実施したアンケート調査の第2弾で、今回は、2グループに分かれて異なる調査を行っていました。どうやら、風評被害の印象に、ポジティブなキャンペーンがどれだけ貢献できるかという調査のようです。調査結果については、3週後の6月24日のフレッシュマンセミナーで発表してもらうことになりましたので、結果を待ちたいと思います。

2件目は、学類(学生)の授業改善?委員会による、授業評価アンケートでした。これは、2学期のクラス連絡会(学生と教員の懇談会)の議題のメインの1つになる、授業評価のための基礎資料になるものですが、1年生の数学の授業を調査するので、調査量が多く、なかなか時間がかかっていました。調査ごとにマークシート用紙8枚+記述式の用紙を配っていたようです。

最後に、数学類の新入生アンケートを行いました。これは、私達担任が実施したもので、入試の印象や、数学類の特徴の認知度、今後大学や学類に期待することなどを尋ねました。来週の数学専攻教員会議までに資料を作らなければならないので、今回、オンラインでのアンケート調査を試してみました。データは何とか集まったので、これから集計ですね。

来週は、学類対抗のスポーツ大会「クラリンピック」ですので、学生さん達の健闘を祈ります。

数学特別講義I(第7回):微分方程式の話

今日の授業は、久保隆徹先生による「微分方程式の話」でした。

授業では、まず、久保さんがご専門の流体力学の話から始まり、流体力学の使い道として、航空機の騒音の低減などの設計や、ゴルフボールがよく飛ぶための設計などの例のお話がありました。ゴルフボールのようなボールに凹凸がないと、ボールが飛んでいる時にボールの後ろに気圧が小さい領域ができ、これがボールを後ろに引っ張るという話は、初めて聞きましたが、これがゴルフボールに小さな凹凸を設けている理由と聞き、なるほどと思いました。

それから、微分方程式の中から、今日は、比較的単純な微分方程式の解法の例として「変数分離法」を取り上げ、例題を実際に解きながら説明を進めていきました。この辺の計算は、大学の新入生クラスにはちょうどよいレベルの計算問題だったのではないかと思います。ちゃんと板書で答え合わせをやっていたのも助かりました。

今度は、微分方程式の応用例として、実際の問題を微分方程式でモデル化して解くことにより、ある学説が数学的に裏付けられるかや、モデルが妥当かどうかの考察を行いました。今回考察した例題は

  • マルサスの人口論
  • 冷却に関するNewtonの法則に基づく、水の冷却問題
  • バネの単振動から、共鳴や共振の現象を考察する
  • 惑星の運動は、Newtonの万有引力の法則が正しいと仮定すると、楕円になる例
  • 化学反応の速さの考察
  • 食物連鎖の例(イワシをマグロが食べるとイワシが減り、イワシが減るとマグロが減り、イワシがまた増える・・・の繰り返し、さらに人間が漁獲管理を行ったらどうなるか、など)
  • 電気回路網の問題(キルヒホッフの法則)
と多岐にわたり、私達をとりまくあらゆる分野で、微分方程式が使われていることを知る上でよい機会になったと思います。

最後に、偏微分方程式の話に入りました。私は次のフレッシュマンセミナーの準備があったので、残念ながらこの部分を残して教室を出なければなりませんでしたが、全体的に、基本的な内容を丁寧に説明されており、かつ、身近な例題も豊富に出されていたので、大変興味深く聴くことができました。自分がこのような講義を大学1年の時に聴いていたら、微分方程式ももう少しまじめに勉強したかも、と思える講義でした。

2011-06-01

iPad 講習会

今日、大学の学術情報メディアセンター(以下「センター」と書きます)が教員向けに開催する「iPad 講習会」に参加してきました。

今回の講習会は、センターがアップルジャパンに依頼して行われたものです。大学では、最近、アップルジャパンと連携して、大学の学生や教職員の個人購入の割引制度や、各種のセミナー、トレーニング等を行っているようですが、そのような中で、今回は、iPad を教員向けに宣伝する企画の一環として実施されたようです。

もともとは、3月に行われる予定で、教員向けに連絡がありましたが、震災の発生により、当然かと思いますが、延期され、今回の実施に至ったものです。講習会は今日の午前と午後の2回に実施され、各回定員30名で、応募者多数の場合は抽選で、という条件で募集されました。受講者には、iPad 本体が貸し出されて実際に操作可能で、すでに自分で持っている人は持ち込みも可能、というものでした。

講習会は、最初に、センターの人の説明で、各自の iPad を学内無線LANに接続する作業を行いましたが、ここが結構やっかいなステップでした。学内の無線LAN接続から学外へアクセスするには

  1. 学内無線LAN接続の認証
  2. 学外へのネットワーク接続の認証
の2段階の認証が必要です。慣れればそれ程困難でもありませんが、最初は面倒かもしれません。

さて、LAN接続が無事すんだところで、アップルの人の説明となりました。前半では、iPad の概要と特徴の説明が行われ、後半では、iTunes に接続してアプリケーションやデータを転送する実演を見てから、各自いろいろ操作するセッションになりました。

iTunes との接続の段階では、結構質問が出ましたので、受講者の関心が高かった情報をまとめます。

  • iPadは何台のパソコンで管理できるの?すでに iPod を持っていても大丈夫?
    iPadを管理できる(母艦になれる)パソコンは1台のみです。これに対し、1台のパソコンは、iPad, iPod, iPhone を何台でも管理できます。
  • iPad をパソコンにつないで、何を管理するの?
    大きく分けて、2つです。
    • iPad のアプリケーション。
    • iPad のアプリケーションで扱う、文書や音楽や画像などのデータ。
  • iPadのアプリケーション(以下、「iPadアプリ」と略)はどうやって入手できるの?
    以下の2つの方法があります。
    • iPadの本体で直接App Storeにアクセスしてダウンロード/購入する。
    • 母艦(パソコン)のiTunesでダウンロード/購入を行い、iPadに転送する。
  • 母艦(パソコン)を買い替えたら、有料のiPadアプリの使用権はどうなるの?
    今使っているiTunesでのiPadアプリの認証(使用権)を解除して、データを新しいパソコンへコピーし、新しい母艦(パソコン)のiTunesでiPadアプリの認証を再設定することにより、使用権の移動が可能です。
    なお、iTunes Storeで購入したiPadアプリや音楽は、最大5台の異なるパソコンで利用することが可能です。
  • iPadアプリやデータがいっぱい(iPadに入りきらない程)になったらどうすればいいの?
    母艦(パソコン)のiTunesで、iPadに転送するものと、母艦のみに残しておくものを取捨選択することが可能です。

他にもいくつか質問が出ましたが、こんな感じで、けっこうな時間、説明が続き、最後の実際の操作の時間は20分くらいでした。

今回のデモ機は、初代iPad, 16GB でしたが、ソフトウェアは有料版のものも結構入っていました。個人的には、今回、iPadが、論文の束を持って歩く代わりの選択肢になり得るかを見ようと思い、あらかじめ、ファイル共有サービスの Dropbox に、論文のコレクションや、自分の講義ノートをスキャンしたPDFを入れておきました。それから、今回のデモ機に、プレゼンテーションソフトの Keynote が入っているのを知り、先日の講義で使ったプレゼンテーションのファイルも急いで Dropbox に追加しました。

結局、お試し時間はちょっと足りませんでしたが、クラウド型メモ帳的記録サービスの Evernote、PDF等の閲覧ソフトの GoodReader、プレゼンテーションソフトの Keynote、科学文献管理ソフトの Papers for iPad を試すことができ、どれもなかなかの手応えでした。論文などのPDFファイルは、指でめくるような操作「スワイプ」や、親指と人差し指をニューッと広げて(ピンチ)拡大する操作など、直感的な操作が便利に感じました。あとは、論文への書き込みをどうするかが(自分が使う上での)課題だと思いました。

それから、デジタルフォトフレームとしても使うことができるとか、ちょっと気の利いた機能もなるほどと思いました。

私自身は、まだiPadを持っていません。個人的には、昨年、iPadが発表されたとき、もちろん興味がわきました。しかし、自分は、この業界の仕事人として、こういうものを使う(使われる)前に、まだ自分で作るべきものがあるのではないか、と思いました。「作るべきもの」が、必ずしもiPadアプリを指すわけではありませんが、自分も何かしら、動くものをもっと作らなきゃ、と思ったわけです。今回、実際にiPadを操作してみて、いろいろ便利な機能は魅力的でしたが、この辺のところをもう少し考えたいと思います。

それから、最後に番外編ですが、アップルの方のプレゼンテーションはやはり素晴らしいものでした。講習会が終わってから、デモンストレーターの方にお話を伺いましたが、社内にはやはりこういったプレゼンテーションの基準がいろいろあり、ダメ出しなどもされることもあるそうです。それから、スライドのデザインについては、プレゼンのデザインを手掛ける専門部隊があるのだそうです。

例として、講習会でのスライドの1枚を見せていただきました。黒い背景に、往年の名機、Apple II が浮かんでいるスライドです。デモンストレーターの方の構成では、Apple II 本体の画像の切り出しが「ちょっときたないんですよね〜」と説明されましたが、デザイン部隊の手にかかると、画像の切り出しがきれいになっているだけでなく、ガラス台の上に置いたような反射まで加わるといった具合で、思わず「へ〜」とうなってしまいました。社内では、プレゼンが得意な人、デザインな得意な人、といったように、それぞれの得意分野を活かしたチームの合同作業で、1つの作品を作り上げる、という工程を垣間見ることができ、大変興味深い機会になりました。

あと、これが本当に最後になりますが、デモンストレーターの方が見せて下さった、Macのデスクトップをそのまま投影するプレゼンで使える画面操作のtipsをいくつか。

  • マウスカーソルを大きくすると見やすい。「システム環境設定」の「ユニバーサルアクセス」で、マウスカーソルの大きさを調整できます。
  • マウスカーソル周辺の画面を拡大する。Control キーを押しながら、トラックパッドを指1本で上から下になぞってスクロールの操作をします。後で自分のMac(マルチタッチになる前の古い機種)で試してみましたが、うまくいかなかったので、マルチタッチ対応の機種限定かもしれません。
  • ウインドウの左上の黄色い丸印をクリックすると、ウインドウがニューッと、画面下のDockに吸い込まれますが、これを、Shift キーを押しながら黄色い丸印をクリックすると、ゆっくり、ニューーーーーーッと吸い込まれます。Dockから起こす時も、Shiftキーを押すと、アニメーションがゆっくりになります。視覚的なインパクトは結構あって、デモンストレーターの方の話によると、学生相手のプレゼンではこの技がかなりウケるそうです。

2011-05-27

フレッシュマンセミナー(第5回)

今日のフレッシュマンセミナーでは、新入生オリエンテーションの初日に行われた「新入生歓迎祭」、略称「新歓祭」のアンケート調査が行われました。う〜ん、自分が入学した時はこのようなアンケートは行われませんでしたが、こういう調査は年を追うごとに単調増加で増えていくんでしょう、と、もう一人の梁先生がおっしゃっていたのがおもしろかったです。

1学期は、予想以上にいろいろなアンケート調査が続きます。来週は、数学類が行う新入生対象のアンケート調査と、学類の学生が行う「授業評価アンケート」が行われる予定です。

さて、今日は関東地方も梅雨入りしましたが、宿舎祭(やどかり祭)が、今夜と明日、予定通り開催されることと、今年初参加という、数学類の御輿の成功を祈ります。

数学特別講義I(第6回):結び目の数学 — 結び目・絡み目のトポロジー入門

今日の講義は、金戸武司先生による「結び目の数学 — 結び目・絡み目のトポロジー入門」でした。

1本のひもで作るものを結び目、それ以上の本数のひもで作るものを絡み目と呼びます。結び目は、絡み目の1本の場合として、絡み目に含めます。

今回のお話は、このような絡み目がいくつかあったときに、交差することなく動かすことで、ある絡み目を別な絡み目と同じ形にすることができるか?ということを考えます。それを、絡み目の「不変量」を用いて調べることが紹介されました。「不変量」は、絡み目を動かして同じ形にできるもの(=同値な絡み目)の間では変わらない量(性質)を表します。

今日は、不変量の中から「3彩色可能性」という性質と「Conway多項式」が取り上げられました。私の知っている範囲では、Conwayは組み合わせゲーム理論や符号理論でいろいろな仕事をしている(ことを知っている程度)わけですが、絡み目の不変量でも名前が出てくるのには驚きました。

で、実際にある絡み目のConway多項式を計算する例題が出されました。最初は計算方法を理解するのがやや複雑なようですが、再帰的により単純な絡み目に帰着させて計算していく手順は興味深く、Conwayの洞察力の深さを思いながら計算を続けていました。

2011-05-20

フレッシュマンセミナー(第4回)

今日のフレッシュマンセミナーでは、アンケート調査が2件ありました。

1件は、社会工学類の授業の一環で、東日本大震災の原子力災害に伴う風評被害に対し、風評を抑えるような宣伝等の影響を調べるというもので、アンケートは2回行われます。今回は、実際に悪い風評を打ち消すためのキャンペーンを行う前の消費者の意識調査で、来月になってから、もう一度アンケート調査をしに来るのだそうです。

もう1件は、大学の保健管理センターが行う、こころの健康に関するアンケートで、これは、毎年、学生の健康診断に合わせて行っているのが、今回は震災の影響で、実施が遅れたとのことでした。心の健康は、これからの学生生活にとっても重要なことなので、何かあったら、早めに相談してほしいと思いますし、こちらも注意したいと思います。

明日からはスポーツデー、来週はやどかり祭と、行事が続きますが、やどかり祭の御輿など、力を合わせて、よいものができるよう願っています。

数学特別講義I(第5回):方程式の解法と群

今日の授業は、天野勝利先生による「方程式の解法と群」でした。

この授業で扱われる「方程式」は、1変数の代数方程式と呼ばれるもの、すなわち、中学で習うような2次方程式を一般化したものを指します。2次方程式の解の公式は、現在、中学で習うようなものですが、3次、4次の方程式の解法の研究が、ルネサンス期のイタリアで盛んに行われたことの歴史的な説明から入りました。当時は、数学の実力を示す手段として「公開試合」で互いに問題を出し合って競った、というのもおもしろい話でした。

その後、ラグランジュが、これらの解の公式を解の「置換」の立場から研究することにより、アーベルによって証明された「5次以上の代数方程式に対する一般的な解の公式は存在しない」という定理へとつながっていくストーリーが話されました。私自身、イタリアの3次方程式や4次方程式の解の公式の時代と、アーベルやガロアによって「群」の概念が登場する時代の間の過程をよく知らなかったので、ラグランジュによる解の「置換」の研究というのは興味深いテーマでしたし、ラグランジュ自身についても、彼の解析学の業績はよく耳にしますが、代数学でも重要な仕事をしていたというのも、興味深い話でした。

この授業も、全10回のうち、今回が5回目で、ちょうど折り返し地点です。後半、どんな話が出てくるか、楽しみにしたいと思います。

2011-05-16

数理科学II(第4回)

今日はまず、先週出題したレポート課題「擬除算のアルゴリズム」について、レポートを回収してから答え合わせを行いました。指名した学生さんは、内容をよく理解して正しいアルゴリズムを書いていましたが、商を求めてから最後にあらためて剰余を求めていたので、商を求める過程で剰余も計算されていることを指摘しました。こういう考察は、やはり、実際にやってみて気づくこともあるので、実際的な観点から問題を考える力を養うよい機会になると思います。

そして、今日の話題は「計算量」でした。計算量の主な記法について説明し、今度は、前回の授業内容に基づいて、多項式の四則演算の計算量を考察しました。しかしながら、乗算と擬除算については今回も時間が足りなかったので、これもまたレポート課題になりました。

さて、次回の授業ですが、来週から3回(5月23日、30日、6月6日)、兼担している田島慎一先生に授業をしていただきますので、次回の私の授業は6月13日になります。レポートの締切も、6月13日の授業時としましたので、頑張って取り組んでほしいと思います。

2011-05-13

フレッシュマンセミナー(第3回)

今日のフレッシュマンセミナーは、まず、夏の大学説明会に関するアンケート調査、それから、オリエンテーション初日に撮影した記念写真の配布と、誰がどこに写っているかの一覧図の作成、クラスの各委員の一覧表の作成、と、調査関係が続きました。

それから、図書館フレッシュマンセミナーを6月10日に予定していたのですが、学類対抗戦「クラリンピック」が同じ日に行われることになり、どちらを優先するかという話し合いが持たれ、当日はクラリンピックに出ることになりました。図書館フレッシュマンセミナーは他の日でもできるし、クラリンピックのような行事に出るというのは学類内の結束を深めるよい機会になると思います。

こんな感じで、思ったより長い時間がかかりましたが、これらが終わると早速、やどかり祭の準備を始めていました。頑張ってほしいと思います。

数学特別講義I(第4回):くらしの中のコンピュータと数学 — Webページの重要度を定めるPageRankの技術 —

今年第4回のこの授業、今回はついに私の担当ということで、話をさせていただきました。テーマは、Googleの検索結果を重要な順番に順序づけするという「PageRank(ページランク)」と呼ばれる技術と、その背後にある数学の話です。

この blog にもあるように、私は今度、この授業の担当が3回目でしたので、昨年までとテーマを変えて話をしてみようと思っていました。そこで、新ネタを考えたわけですが、今年の春先に PageRank の計算が、本質的には線形代数の計算(連立1次方程式を解くか、ある条件を満たす固有ベクトルを求める)に帰着されることを知ったので、話題のレベルも手頃だと思い、テーマに選んでみました。

その後、いくつかの資料を読んで勉強したところ、PageRankの原論文をはじめ、たいていの資料は、まず最初にPageRankの計算法から説明があり、引き続いて、PageRank計算のモデルとして使っている「マルコフ過程」の話がありました。

たしかに、数学を専門としない一般の人向けに書くときは、まず具体的な手順から示すのが有効と思います。しかし、今回は、理学系の学部1年生を対象にした数学の授業であり、背景の動機づけについて、よく知ってもらった方がよいと思い、まず「マルコフ過程」の話を先にした上で、このモデルを、webページを巡回する行為に当てはめることにより、PageRankを計算する、という流れで説明しました。

それから、実際にweb検索のサービスを行う上では、様々な課題、たとえば、数学的な部分では、巨大次元の行列の固有ベクトルを計算する問題や、実装部分では、webページの巡回と情報収集、データの分類と保管、高速な検索とPageRankに沿った並べ替えの記述、webサービスの維持やメンテナンスなど、実に多種多様な課題を克服して、初めてGoogleのようなサービスの提供が可能になる、という話をしました。そして「『大学で学んだことは役に立たない』という声を聞くことがあるが、社会に出ると、それまで解いたことのない問題によく出くわす。そのような時に、自分で必要なことを学び、新しい問題を解くための知恵を生み出す力を持っていることが必要で、そのための力を身につけることが、大学で学ぶ意義の一つ」というメッセージを送りました。

最後に、今回のスライドと配布資料を載せておきますので、興味のある方はご一覧いただければ幸いです。

数学特別講義I: くらしの中のコンピュータと数学 – Webページの重要度を定めるPageRankの技術 –(2011年5月13日)

数学特別講義I: くらしの中のコンピュータと数学 – Webページの重要度を定めるPageRankの技術 –(2011年5月13日)

2011-05-09

数理科学II(第3回)

連休明けの今回は「アルゴリズム」について説明しました。

この話は昨年の授業から入れたのですが、昨年は、Euclidの互除法のところでアルゴリズムの説明を入れました。しかし、1学期末のレポート課題に「擬除算のアルゴリズムを書く」課題を出したところ、苦戦している人が一部に見られました。

そこで、今年は、多項式の四則演算の直後にアルゴリズムの説明を行い、まず、多項式の四則演算のアルゴリズムを書き下し、ついで、アルゴリズムの流れを見ながら多項式演算の計算量について学ぶ、という流れにしました。

さて、多項式演算のアルゴリズムの説明は、加、減、乗・・・までいったところで時間になったので、擬除算のアルゴリズムについては、レポート課題としました。1学期は、授業内容から、学期末にまとめてレポートを課せるかちょっと微妙なので、重要なトピックのたびにレポートを課し、履修者の理解を促したいと思います。締切は来週、次回のこの授業です。

2011-05-06

数学特別講義I(第3回):合同の話

第3回の今日の授業は、世話人の守屋克洋先生による「合同の話」でした。

このお話では、中学校の数学の幾何で学ぶ「合同」の概念から始めて、Euclid幾何における合同、アフィン幾何における合同、そして射影幾何における合同の概念へと話を進めていきました。それらの中で、合同の概念は、それぞれの世界での、図形の変換がなす群を考え、群の元となる変換の作用で不変なものによって説明づけられることが述べられました。そして、考える世界(図形の集合)と、図形に作用させる変換がなす群をいろいろ変えることで、興味深い結果が得られることが述べられました。

Euclid幾何、アフィン幾何、射影幾何とも、いろいろおもしろそうと思いつつも、普段はあまりなじみのない分野であるだけに、今日の授業は興味深く聴きました。

さて、次回はいよいよ私の番ですが、どうなりますことやら。次回は5月13日、13日の金曜日です。

2011-04-25

数理科学II(第2回)

今日は、数式処理に関する参考書と数式処理システムを紹介した後、多項式環と多項式演算の基本事項を説明しました。一意分解整域 (unique factorization domain, UFD)、原始的な多項式 (primitive polynomial. 体上の「原始元」とは異なります)、多項式の加減乗除、特に擬除算。

次週は曜日振替で火曜日の授業になるため、次回の授業は連休明けの5月9日になります。

2011-04-22

フレッシュマンセミナー(第2回)

今日は、まず、OPTの人達が来て、OPTのオリエンテーション活動に対するアンケートがとられました。来年度に向けた活動は、今年の秋から始まるとのことで、時期が来たら募集をしますとのことでしたが、今回の新入生の中からも、来年、OPTとして、次の後輩達を導く人が多数出てくれることを願っています。OPTの皆さん、お疲れさまでした。

次に「つくばキャリアポートフォリオ (CARIO)」 を配布しました。これは、本学が数年前から力を入れているキャリア形成支援活動の一環で配布されるもので、バインダーと何種類ものワークシートからなります。学生生活の中で、その時その時に学んだり考えたりしたことなどを記録することで、直接的には就職活動のときなど、もっと端的には、これからの人生の中で、自分の活動履歴を振り返ったりして、その先の進路を考えたり決めたりするきっかけの一つとして活用されることが一つの目的です。なお、CARIOの使い方は学生に任され、大学は、個々の授業などで活用することはありますが、学生の評価の手段として用いることはありません。

・・・という説明を、先月のFD(ファカルティ・ディベロップメント)講習のことを思い出したりしながらやってみました。個人的には、CARIO の使い方を説明するマンガがけっこうおもしろくて好きです。大学広報誌の STUDENTS の裏表紙にも、毎号、CARIO の使い方のマンガが連載されているので、つい見てしまいます。

私自身は、たまたま昨年 CARIO の存在を知り、個人的にキャリア支援室から1冊いただいたのですが、あまり使わず眠っていました。それが、今年、担任になるというので、クラス担任関連のファイルとして使い始めたところです。

今日はこんなところで終了です。次回のネタも考えないと。

数学特別講義I(第2回):正規分布、ブラウン運動、そして拡散過程

第2回の今日の授業は、梁松先生(解析分野・確率論)による「正規分布、ブラウン運動、そして拡散過程」でした。タイトルの通り、3つのテーマについて、お話がありました。

まず「正規分布」から。「コイン投げ」を例に、例えば表が出れば1、裏が出れば0という「確率変数」を定め、コイン投げを何回も続けて行うことで、表が出た頻度を数えていくと、コイン投げで表が出る確率に近づいていきます。

「正規分布」は、確率変数が従う分布の中でも代表的なものの一つで、19世紀前半に活躍した大数学者ガウスの名前をとって「ガウス分布」とも呼ばれます。ここで、先生が見せたドイツの旧10マルク紙幣には、ガウスの肖像画が描かれていますが、その脇に、標準正規分布の確率密度関数のグラフが描かれているのがポイントです。今はドイツの貨幣はユーロになったため、入手は以前より難しいと思います。(今回スライドで見せた図は、先生がお持ちの紙幣からとってきたそうです。私も、学生時代、ユーロになる前に国際会議でドイツに行く機会があり、その時入手したガウスの10マルク紙幣を保管しています。)

そして、正規分布を特徴づける性質の一つとして「中心極限定理」の説明がありました。これは、平均値と分散が存在するような確率変数の列の平均は、全体として、変数の個数がどんどん増えると、正規分布に近づく、という性質です。

たとえば、私達が机の幅を何度も繰り返して測定する場合、いろいろな要因により、測定値は毎回常に一定になるわけではありません。測り方や、定規の目盛りの読み方などにより、ちょっとずつ測定値が違ってきます。すなわち、ある確率で、微小な誤差が毎回混入することになります。しかし、中心極限定理により、微小な誤差をもつ測定をどんどん繰り返していけば、測定値の散らばり具合は正規分布に収束するので、そこから机の真の幅を推定できることになります。

次に「ブラウン運動」です。これは、もともと、1827年に、ブラウンが、水の中の花粉(の微粒子)が、不規則な運動をする現象を発見したことから名付けられましたが、その運動の原理は長らく謎で、1905年に、アインシュタインによって、ブラウン運動を説明する理論が発表されました。現在、よく用いられるブラウン運動の説明では「花粉の微粒子にぶつかる1個1個の水分子の寄与は小さいが、多数の水分子が独立に衝突することで、花粉の動きが正規分布に従うようになる」という説明がなされます。この原理に基づいてブラウン運動を記述すると、ブラウン運動が従う正規分布の分散は、運動の経過時間に対して線型の関数になることが説明されました。さらに、ブラウン運動の厳密な数学的記述と存在性の証明は、ウィーナーによって1923年、24年になされたことも紹介されました。

最後に「拡散過程」です。古典力学などの運動は、微分方程式を解くことでその動きを知ることができますが、微分方程式に、ランダム(不規則)な誤差のような動きを加えたものを考えます。特に、ランダムな動きとして、先に説明されたブラウン運動を加えた微分方程式の解として与えられる「運動」を「拡散過程」と呼びます。ブラウン運動の動きは不規則で微分できないので、普通の方法で微分方程式を解くことができません。このような問題を解く際は「確率解析」に基づく考察が必要となります。

以上、3つのことがらについて、例題なども用いてわかりやすく解説されました。私自身は、学生時代、確率論はどちらかというととっつきにくい印象を持っていたのですが、今になって話を聴いてみると、だいぶよくわかったと思います。

2011-04-18

数理科学II(第1回)

今日から、大学院の授業も始まりました。本当は先週開始だったのですが、数学類のオリエンテーション合宿に参加するため、先週は休講にしました。

今年度も「数理科学II」の授業を担当することになりました。今年で3回目です。今年度の履修者はとりあえず今日のところ4人、2人が計算機数学、2人が統計が専門で、授業の規模は昨年並みになりそうです。

今年度のテーマは「多項式の因数分解」に絞りました。昨年度は、多項式演算の実装の話などもしたのですが、数学の方は、多項式剰余列とGCDで話が終わってしまったので、今年は、因数分解の理論と実装について説明できればと思います。

今日は、第1回ということで、例年通り、授業の方針について説明しました。その中で、授業の目標として

数式処理システムにあるような因数分解の機能を自分(達)で作る!
と掲げました。できるだけ、これに近づけるような授業にしたいと思います。

あとは、数式処理の特徴を、数値計算と比較しながら説明しました。次回は、数式処理や計算代数の参考書や数式処理システムの紹介から始めたいと思います。

最後に、研究科のwebサイトに掲載したシラバスを載せます。

数学専攻 数理科学 II(筑波大学数理物質科学研究科)
http://www.pas.tsukuba.ac.jp/syllabus/display.php?major=1&NO=22

授業の到達目標
主に多項式に対する構成的な代数計算の手法を理解し、説明できるようになること。
多項式演算や、計算代数の諸算法の計算機上への実装の基礎を理解し、必要に応じて自分で実装するための学習の手がかりを身につけること。

授業概要
計算代数の基礎的理論である、多項式環上の最大公約子(GCD)、因数分解、グレブナー基底の理論と、数式‐数値融合計算の話題からトピックを選んで講義する。
計算代数の計算機上への実装を目標として、計算機の基礎、アルゴリズムの基礎、計算代数ライブラリ(プログラム)の実装の基礎的事項について解説する。

キーワード
数式処理、計算代数、最大公約子、多項式剰余列、部分終結式、因数分解、Hensel構成、グレブナー基底、数式‐数値融合計算

授業計画
計算代数の理論(下記の中からトピックを選んで講義する)

  1. 多項式の四則演算と計算量
  2. 多項式の最大公約子(GCD)と拡張ユークリッド互除法
  3. 部分終結式の理論
  4. 多項式の因数分解
  5. 多項式環上のグレブナー基底の理論
  6. グレブナー基底の応用
  7. 数式‐数値融合計算の話題から
計算代数の実装
  1. 計算機の構成
  2. プログラミング言語 Scheme
  3. 計算機上での多項式の表現
  4. 多項式の四則演算の実装
  5. 各種代数計算の実装

2011-04-15

フレッシュマンセミナー(第1回)

今日から金曜6限は、1学期が「フレッシュマンセミナー」、2学期は「クラスセミナー」、3学期は「数学類セミナー」と、1年にわたり、クラスで活動する時間帯になります。ですので、記事の回数は通し番号でつけます。

今日は初回でしたが、履修管理システム TWINS(ツインズ)の使い方講習会ということで、自然系学類の OPT が企画してくださいました。数学類は、学術情報メディアセンターで行いました。

最初に、学園祭関係の分担金の徴収、クラス担任からは、広報誌 STUDENTS や来週の入学式の要項のプリントを配布し、追って、講習会が行われました。比較的スムーズに進みましたが、それでも時間いっぱいかかって終了ということになりました。学生さん達も、特に不具合もなく手続が進んだのでほっとしました。

次回から、本格的な授業ということになりますが、内容はどうなるでしょうか。学生さん達の意向も聞いたりしながら考えたいと思います。

数学特別講義I(第1回):オイラーの数学

数学特別講義の授業ですが、初めて講義を分担した一昨年度世話人を務めた昨年度でお役御免になるかと思っていました。しかし、今年度は、数学類新入生のクラス担任として、三たび登板することになりました。

昨年度、世話人として全部の授業に出席して、各先生方の講義がなかなかおもしろかったので、今年度も、都合がつく限り、一通りこの授業に出席することにしました。そして、随時、講義内容をお伝えしたいと思います。

第1回の今日は、木村達雄先生による「オイラーの数学」でした。オイラーは、18世紀の数学者 (1707–1783) で、数学のほぼすべての分野にわたって大きな業績を遺していますが、今日4月15日がちょうど彼の304回目の誕生日ということで非常にタイムリーな講義になりました。今回は、3つの話題を用意してきたものの、時間の都合で2つの話題に絞って講義をされました。

話題の1つめは、ガンマ関数でした。ガンマ関数は、本来自然数に対して与えられた階乗の概念を、任意の(実)数に拡張したものとしても知られており、ガンマ関数にはいろいろな表現が知られています。その中から、オイラーが発見した、ガンマ関数の無限積を用いた表現を取り上げました。その証明は、なかなか文献に載っていないそうですが、木村先生ご自身による証明の導出が説明されました。こういったことをちゃんとご自分でフォローするあたりも、先生らしいなと感心しました。

もう1つの話題は、「初等整数論の基本定理」に基づく、ゼータ関数の無限乗積表示についてでした。「初等整数論の基本定理」は、すべての自然数が、素数の積に一意的に(ただ一通りに)表されるという性質ですが、オイラーは、ゼータ関数をすべての素数にわたって表される有理数の積(オイラー積)で表しました。そして、オイラー積を用いることにより、 ζ(2), すなわち 1/n^2 の無限和が π^2/6 に等しいことを証明したという業績が紹介されました。

先生は講義の中で、オイラーのすごいところは、それ程難しくない証明で、すごい事実を示している点だと指摘されました。たしかに、Σ 1/n^2 = π^2/6 を見ても、左辺は自然数しか現われないのに、右辺に円周率 π が現われるのは神秘的に思えます。その証明も、決して難しすぎるわけではなく、高校程度の微積分を学んでいれば、読んで理解できる程度だと思います。

最後に、雑誌「数理科学」の今年の9月号で、木村先生の編集による、オイラーの特集記事が掲載されるそうです。楽しみにしたいと思います。

2011-04-12

オリエンテーション合宿

4月11日(月)から12日(火)にかけて、理工学群の理学系学類(旧自然学類)の数学・物理・化学の3学類合同オリエンテーション合宿が行われました。

場所は、茨城県行方市の「茨城県立白浜少年自然の家」です。このオリエンテーションは、自然学類の頃から、私が入学した時にはすでに始まっており、以来、少なくとも20年は続いている伝統行事です(こう書くと「伝統芸能」か何かみたい)。

もう一つの特徴は、合宿の運営が、上級生の OPT (Orientation Project Team) の学生さん達が中心になって行われていることです。教員は、一応、各学類長と各クラス担任が同行しますが、ほとんど口を出すことはありません。あと、事務職員も同行しません。

オリエンテーションの主な内容は、以下の通りです。

  • クラス毎の自己紹介とクラス委員の選出
  • 大学のカリキュラム説明と履修計画
  • レクリエーション等で親睦を深める

さて、初日は朝9時過ぎに集合し、バスに乗って現地に向かいました。お昼前に着いて昼食の後、研修スタートです。

各学類とも2クラスずつありますので、午後は各学類1クラスが「カリキュラム説明」、2クラスが「自己紹介とクラス委員の選出」に分かれて進みます。教員は、各クラスで指導しているクラスリーダーが呼びに来たらその部屋に行くことになっていましたが、私は2クラスの担任で、始まってから1時間程して呼ばれて行きました。ちょうど、クラス委員を選んでいる最中でした。各委員会ごとに、担当の先輩が仕事内容を説明し、その後、委員を選出する順番で、自分達の頃に比べてなかなか説明が丁寧になったなーと感心しました。委員選出は、途中、学類長の磯崎先生と私からのスピーチをはさんで5時頃までみっちり続きましたが、無事すべての委員が立候補で決まりました。

5時になり、新入生の方は、学類、クラスごとに食事と入浴のシフトが細かく決められていましたが、教員の方は、とりあえず食べられる時に食べるということで、食事に行きました。

食べ始めてしばらく経った頃、地震がありました。かなり揺れましたが、食堂内は概して落ち着いており、ほとんどの人達が座ったまま様子を見ていました。幸い、停電や断水、家具等の転倒もなく、揺れは収まりましたが、自宅との連絡がすぐにはつきません。携帯電話のメールも、受信を試みるも失敗の連続とか、それでもこのメールはたぶん自宅からだろうと思い、自宅にメールを送信したら送れたとか、そういったやりとりがしばらく続きました。災害情報伝言板や Twitter, Facebook, mixi に無事である旨書き込んだりしましたが、夜までに何人もの方々から返信があり、ありがたい思いでした。こういう時はなるべくあちこちに安否情報を書き込んでおいた方が、周りの人達により早く安心してもらえそうです。

夕食、入浴後は、カリキュラム説明があり、新入生は食堂で先輩達のアドバイスのもと、せっせと作業しているようでしたが、教員が入る余地はなさそうで、とりあえず彼らの健闘を祈りながら、安否確認のお礼を書いたりしていました。

翌日は、朝からレクリエーション。学類対抗の「腕相撲大会」と「ドッジボール大会」で盛り上がりました。優勝は、腕相撲大会は男子が化学、女子が物理で、ドッジボール大会は混合で、化学が優勝でした。数学も健闘していましたが、人数が少ないのはちょっぴり不利だったかもしれませんね・・・

最後のプログラムは「野外炊飯」で、7〜8人の班に分かれて、カレーライスを作りました。火起こしはもうもうと煙が立ち、おまけに風が強くて大変でしたが、みんなで作ったカレーはおいしいもんですね。

こうして、午後、現地での研修が終わり、バスに乗り込んだところで、再び余震がありました。その後は、一応順調に帰ってきました。

自分が参加した時のことはほとんど忘れてしまいましたが、これまで授業などで関わりのあった学生さん達が、先輩として活躍するのを見るのは嬉しかったですし、授業では知らなかった能力を発揮していたりして、感心することもありました。今度の新入生も、ぜひ先輩を見習って、来年、再来年と、次の新入生達を導いていってほしいと思います。

2011-04-07

新入生オリエンテーション

今年度から、数学類のクラス担任を受け持つことになりました。私は数学類2011年度入学の2クラスを受け持ちます。特に今年度は、クラスでの活動について記したいと思います。

本来、今日は筑波大学でも入学式が予定されていましたが、去る3月11日に発生した東日本大震災に伴い、入学式は延期されました。しかし、入学式の後に予定されていた「新歓祭」(サークル等の勧誘を行う行事)は通常通り開かれ、引き続いて、午後には、自然系4学類と呼ばれる、旧自然学類の各専攻に対応する4学類(地球・数学・物理・化学)の合同オリエンテーションが行われました。私は、午後3時からの合同オリエンテーションに出席しました。

自然系の4学類は、地球学類が「生命環境学群」、それ以外の3学類が「理工学群」に属するので、冒頭の所属長挨拶では、理工学群副学群長(理工学群は、理学の3学類と工学の3学類から構成されるので、学群長が工学から選ばれると、副学群長は理学から選ばれるようになっています)の舛本先生(化学)と、生命環境学群長の田林先生(地球)が挨拶をされました。

次に、震災に伴って発生した、福島の原子力発電所の事故を反映して、原子力発電所の活動によって放出される放射線とその影響に関する説明が、舛本先生からありました。基本的な内容は「福島原発の放射能を理解する」というプレゼンテーションに沿ったもので、これは以前自分も大学のホームページからのリンクでざっと参照しましたが、図やグラフの内容をきちんと理解できれば、今の報道をもとに放射線の影響を判断する上で有用な資料だと思います。

引き続き、学生組織の説明が1時間程ありましたが、教員は一時退出し、オリエンテーションの資料をいただいて、一度研究室に置いてきたりしました。

その後、学類ごとの写真撮影がありました。私が入学した時は、あいにくの雨で室内での写真撮影になったことを覚えていたので、外で写真撮影に臨めたのはよかったと思います。

最後に、これも今回の震災の影響を受けてのことですが、避難訓練が行われました。学類ごとに、2人のクラス担任が、前と後ろに分かれて学生を誘導し、先日の地震の際にも避難した池の前で、点呼をとりました。

明日は、学生さん達が、英語のクラス分けのテストと図書館のオリエンテーションを受け、私達クラス担任は、週明けの月曜日からのオリエンテーション合宿に参加します。

追記(4月8日) 上記の放射線の件ですが、その後、牧野淳一郎先生の日誌記事を知り、これまでの放射線量の測定値に基づく、福島第1原子力発電所から放出された放射性物質の総量の推定や、それらに基づく各所での放射線の影響など、上記の資料程楽観視もできないらしいということを知りましたので、引き続き必要事項を勉強したいと思います。

2011-03-14

筑波大学 数学専攻のメールサーバを移転させて稼働させました

筑波大学 数学専攻のメールサーバは、先日の地震以来、止まっていましたが、今日、サーバを移転させて稼働しました。

詳細は、明日以降、数学系ホームページ http://www.math.tsukuba.ac.jp/ にて告知しますが、とりあえず今は webmail が使えます。 https://www.math.tsukuba.ac.jp/webmail/ (httpsに注意) からログインして下さい。

なお、今回の移行作業は、来月始めに実施すべく準備していた作業を、地震に伴い急きょ前倒しして実施したもので、現役の教職員、大学院生のアカウントは、博士後期課程の内部進学者の一部を除き、すでに作成されていますが、離任された先生方、卒業生のアカウント更新者については、まだアカウントが作成されていない場合があります。お問い合わせは、筑波大学数学系計算機委員会 メールサーバ担当 abel-admin at math.tsukuba.ac.jp までご連絡お願いします。

それから、これまでのメールサーバ abel は、今日は計算機室に入室できなかったため、まだ復旧していません。明日以降、復旧作業にあたります。こちらについても、状況の推移は数学系ホームページで随時お知らせする予定です。

筑波大学 数学専攻のホームページは復旧しています

3月13日現在、筑波大学 数学専攻のホームページは復旧しています。 http://www.math.tsukuba.ac.jp/

数学専攻のメールサーバの方は止まったままです。明日以降、復旧の可能性について調査する予定です。

2011-03-11

筑波大学 数学専攻の地震直後の状況

主に関係者向けに、筑波大学 数学専攻の地震直後の状況をお伝えします。

【人的被害はなさそう】とりあえず、地震直後、学系棟の中にいた人達は松美池前の広場に避難しました。幸い、負傷者等はなさそうでした。

【建物の被害】自然系学系棟は、内部が一部損傷しています。自然系学系棟B棟8階の、エレベータより北側では廊下が浸水していました。同僚の方の情報によると、同棟7階の同部分も浸水している模様です。院生の方の情報によると、一部、窓ガラスが割れたりした箇所もあるとのことですが、未確認です。総合研究棟、理科系棟の状況は不明です。

【建物内の様子】研究室、事務室、廊下等では、棚等の什器が倒れ、書籍や書類が散乱しています。図書室の書架には、本が残っていない模様です。建物のあちこちの窓が開いています。地震の衝撃の影響でしょうか。

【ネットワーク、サーバの状況】学内は停電し、数学専攻も、メールサーバ、WWWサーバとも止まっています。学内のネットワークの状況については、筑波大学ホームページにて情報が更新されています。 http://www.tsukuba.ac.jp/ 数学専攻のサーバについては、週明け以降、立ち入りの安全が確認され次第、状況を確認したいと思います。

【連絡先】何かあった場合の連絡先(特にメールやネットワーク接続関係)ですが、メールは、私のGoogleのプロファイルページからお送り下さい。 https://profiles.google.com/akira.terui/
Twitterは @atelieraterui にいます。

2011-02-28

数理科学II(第26回)

今日が、この授業の最終回となりました。

今日は、多項式の定数倍の部分をスキップし、乗算の部分を説明しました。

その後、時間がちょっと余ったので、レポート課題の説明を行いました。擬除算のアルゴリズムについてはレポート課題としました。それから、多項式の定数倍のプログラムに用いた、高階関数 map と無名関数 lambda については、発展課題として、擬除算をすぐに終えた人に概念を説明してもらう課題としました。

さて、これで今年度のこの科目の授業がすべて終わりました。昨年度、この授業が終わった時の感想をふまえて、今年度の授業を行ったわけですが、今年度は、講義を丁寧に行った分時間をかけたのに対し、出張などで授業回数が昨年度より少なくなり、部分終結式の理論については、やや時間を要したと思います。

それから、今回は、初めて実装に関する説明を組み入れました。この試み自体はよかったと思いますが、時期が年度末になってしまい、中途半端に終わってしまった点は残念でした。次の機会には、もっと初期の段階で、たとえば、多項式の四則演算を行った時点で、その実装に触れ、以降も、理論→実装→理論→実装・・・のように、テーマごとに理論と実装の話を交互に進めてみたいと思います。

講義で扱ったテーマも、昨年度は部分終結式の理論に加え、因数分解も扱いましたが、今年度は因数分解を扱う時間がありませんでした。次回は、因数分解を扱えればと思います。加えて、実装についても、今回は、多項式の内部表現として最も単純な表現を扱いましたが、因数分解を行う場合は、まず多変数多項式、次に有限体上の多項式、それから、多項式への値の代入など、もっと幅広い計算に対応する必要があります。この辺も、今後、アイデアと実装を練っていきたいと思います。

このようなまとめに至ったのも、今回聴講してくれた学生さん達のおかげでもあります。彼らに感謝の意を表して、今年度の授業を終えたいと思います。あとはレポートですね。頑張りましょう。

2011-02-23

微積分III演習(第9回)

今日はこの授業の最終回で、主に一様連続に関する問題を扱いました。無限級数については、授業で扱うのが間に合わなかったので、とりあえず「コーシーの判定法」と「ダランベールの判定法」に関する演習問題をレポートにしました。期末試験は行いません。

以上でこの授業が終わったわけですが、今回の授業は、少ないながらも積極的な学生さん達のおかげで、有意義かつ楽しい授業になったと思います。今回の履修者である学生さん達は、所属が化学類と地球学類なので、これ以降、数学に触れる機会は少ないかもしれませんが、これからのご活躍をお祈りします。

2011-02-22

計算機演習(第9回)

今日は、授業の最終回で、フラクタル図形の描画を行いました。レポート課題の方は、コツをつかまないと、なかなか大変かもしれませんが、頑張ってほしいと思います。

来週は、今日のレポートを含め、これまでに出題したすべてのレポートの締切日です。レポートの提出にあたり、質問がある人のためのオフィスアワーとし、自由参加にする予定です。

2011-02-21

数理科学II(第25回)

今日は、まず、前回の続きで、多変数多項式のもう一つの表現方法として「分散表現」を紹介しました。

それから、1変数多項式の四則演算の実装ということで、まず加法の説明から入りました。末尾再帰でアルゴリズムを書いた場合、通常の多項式の加減算を用いて書くと、多項式の加減算がやたらと増えるのではないかという指摘がありましたが、これをScheme (LISP) で実装すると、必要な多項式の加減算は car や cdr で表すことができ、効率はそれほど損なわれないという説明をしました。

あと、今回の授業で用いた1変数多項式の正準表現では、係数を降べき順に並べているのに対し、加法の算法の中では、昇べきの順で係数の加算を行うため、末尾再帰の関数に多項式を渡す際に、いちいち reverse で係数のリストを逆向きにするのが非効率的ではないか、という指摘がありました。たしかにこれはもっともな意見で、正準表現の係数の並べ方も昇べき順にするのが、より理にかなっているかもしれません。これについては、今回の授業を踏まえて、今後の実装の際に再検討したいと思います。

次回でこの授業は終わりです。多項式の四則演算は、この後、定数倍、減算、乗算、除算が残っていますが、どこまで行けますことやら・・・なるべくゴールに近づけるように頑張りたいと思います。

2011-02-18

数学特別演習(第17回)

今回が、この授業の最終回となりました。

今回は、まず、巡回路を探索する際に、効率よく選択対象を絞るための「分枝限定法」すなわち「枝刈り」を取り上げました。枝刈りは、基本的には、巡回路の開始ノードからあるノードまでの経路を固定した最小1-木を計算し、その長さを、経路を固定しない場合の最小1-木の長さと比較して、長さが等しいかより短い経路のみを選択肢として残していくやり方です。

本書では、枝刈りのための経路を固定する方法として、以下の2つを取り上げました。まず、開始ノードから次の経路を順番に選択した場合、そして、経路を固定しない場合の最小1-木に、次数が3以上のノードが現われた場合に、そのノードを中心に、次数が2を越えないような経路を選択した場合です。特に後者の方法については、私も予習していて理解に苦しんだ部分でしたが、発表者の人はよく予習していて、おかげで私もよく理解することができました。

次に、後半の、最後の発表では「多面体的組み合わせ論」を扱いました。これは、ノードの個数がn個のグラフについて、すべてのグラフを1つ1つ格子点に対応させて考えます。辺がある場合は、それぞれの座標を1、ない場合は0とします。すると、巡回路全体の集合は、格子点のなす空間内で、多面体を構成します。巡回路の探索にあたって、この多面体をなるべく精度よく近似することで、効率的な巡回路の探索につなげようというものです。

この話題の中では、多面体の頂点と辺の個数の関係を取り上げました。まず、多面体の頂点と辺の個数の関係は、多面体に依存していろいろ異なった状況が存在します。頂点の個数に比べて辺の個数がずっと多い多面体もあれば、逆の場合もあります。次に、仮に頂点の個数が多い多面体でも、辺の個数が比較的少ない場合は、もとの空間から多面体を「切り取る」回数を小さく抑えられる可能性が指摘されました。この話題は、チーズを例に取り上げ、醸造したもとの形のチーズから、立方体のチーズのかたまりを切り取るという例が紹介されました。

最後の話題は、巡回路に対応する頂点から構成される多面体の話になりました。巡回路に対応する頂点から構成される多面体は、頂点の個数に比べて面の個数が大幅に増加します。しかし、それらの面をすべて正確に近似する必要はなく、最適な頂点の近くで、多面体をそこそこ(うまく)近似し、かつ面の個数がなるべく少ない多面体で(お気楽に)近似できれば十分で、現在の研究の最先端は、そのような「うまい」多面体の近似をいかに効率的に見つけるかが焦点の一つであるという説明で終わりました。

これで、結局、テキストの最後の1章を残して授業が終わりました。最後の1章は、巡回セールスマン問題の研究の歴史が紹介されています。

以上がこの授業とテキストの内容ですが、まず、テキストについての感想を述べますと、非常におもしろい本だったと思います。テーマが実社会の問題と密接に関連しており、興味がわくこと、その問題を解くための理論は数学に基づいていること、かつ、「存在証明」などの定性的な要素と、アルゴリズムなど、構成的な要素の両輪を用いて問題にアタックすること、等、私自身も興味をもって読みましたし、学生さん達にとっても、数学に対する認識を新たにする内容だったようです。

翻訳も、読み物的な本を、数学的な正しさを損なわずにわかりやすく訳すのは苦労があったと思いますが、おおむね、よく訳されていて読みやすかったと思います。ただ、数か所、訳文の数学的意味が読み取りづらい部分や、術語の記述が不正確な部分が見受けられたので、さらなる翻訳の向上に期待します。

授業に関しては、学生さん達は、皆積極的によく頑張って予習、発表していたと思います。授業の最初の頃は、皆さん苦労しているようでしたが、回数を重ねるにつれて、発表や板書の質やわかりやすさが徐々に向上していることが見てとれました。学生さん同士でやると、このように刺激になってよいものですね。

先日開かれた学類のクラス連絡会で、授業評価アンケートの結果が報告された際、微積分や線形代数の予習時間の少なさが指摘されていました。大学の授業に対する認識の結果だと思いますが、私がこの授業で学生さん達を見てきた限り、その気になれば予習に取り組む能力は十分に備わっていると確信したので、こうした力を他の授業でも発揮されることを望みます。

長いようで短い半年間でしたが、一緒に授業をつくってきた学生さん達に感謝します。この本は、これから本格的に数学を勉強しようとする学生さん方、数学を教える先生方、そして数学に興味を持つ多くの方々に、おすすめ度は「星3つです!」です。数学的な内容は割とちゃんと書いており、さらっとした会話の中にも重要事項が頻発ますので、1文1文を納得するまでじっくり読まれることをおすすめします。

さあ、学生さん達の最後の感想文に目を通すことにしましょう。ついでに、来年度もこの授業を受け持つ予定です。次はどんな本を読もうかしら・・・

2011-02-16

微積分III演習(第8回)

今日も、関数の極限と連続性に関する問題演習がメインになりました。

今日は、教科書の定理を何題か、ε-δ法で証明してもらいました。これらは、関数の極限値に関する性質で、教科書では、数列の極限値に関する定理に帰着させる解法を行っていますが、演習では、これらを直接ε-δ法で別に証明しようというものです。

今日の演習では、前回の最後で手詰まりだった問題も、無事解決されました。今日も、ある人の発表で詰まった時に、みんなでアイデアを出し合い、今日は解答がうまく完成しました。前回、今回と、自発的な討論が行われたのはよかったと思います。

残りの授業はあと1回となりましたが、次回は、関数の一様連続に関する問題と、級数に関する問題を扱いたいと思います。

2011-02-15

計算機演習(第8回)

今日は、ルールとパターンマッチに基づくプログラミングを行いました。

毎年、この課題は、ルールを適切に定義するのに難儀する学生さんが続出します。今年はそれほどでもない印象でしたが、レポートの提出に向けて頑張ってほしいと思います。

次回がこの授業の最終回です。次回は、フラクタル図形の描画を行います。

2011-02-14

数理科学II(第24回)

今日は、出席率が50%でしたが、授業の冒頭、研究科から配布された授業評価アンケートを配り、とりあえず今日出席した人達に答えてもらいました。

若干授業の開始が遅れたわけですが、今日は、計算機 (Scheme) による多項式の表現について説明しました。まず、各項を、係数が0の項も含めて密な形で表すか、あるいは非ゼロの係数のみ、疎な形で表すか(普段はこちらが用いられます)、について、それぞれの長所、短所を説明し、ついで、多変数多項式の表現として、まず「再帰表現」を説明したところで時間になりました。

次回は、多変数多項式の表現として、他の一つの表現である「分散表現」について説明し、それから1変数多項式の四則演算の実装について説明したいと思います。

2011-02-09

数学特別演習(第16回)

今日は水曜日ですが、11日の金曜日が建国記念の日で休みになるため、金曜日の振替授業となりました。

今日は、長さ最短の巡回路に近い巡回路を計算するヒューリスティックの一つ「クリストファイズのアルゴリズム」を扱いました。このアルゴリズムで計算する巡回路の長さは、最短の巡回路に比べて、たかだか1.5倍に抑えられることが理論的にわかっています。

今日の授業では、最初の発表者に、クリストファイズのアルゴリズムの概要を説明してもらい、次の発表者に、クリストファイズのアルゴリズムで計算される巡回路の長さが、最短の巡回路に比べて1.5倍に近づくという、理論上最悪の例題の1つを説明してもらいました。

このうち、後半の、理論上最悪の例題では、ある規則的な形で、ノード数がどんどん増えていくグラフを扱いました。このノード数が大きくなると、クリストファイズのアルゴリズムで計算される巡回路の長さの、最短の巡回路の長さに対する比が1.5に収束するというものです。テキストでは、クリストファイズのアルゴリズムで計算される巡回の長さを「だいたい」の長さで計算しており、発表者の人も、それに従って発表していました。

しかし、数学を専門に学ぶ学生としては、「だいたい」の部分を「はっきり」させて確認する必要があると考え、その場で、巡回路の長さの見積りを厳密に計算してもらいました。そして、厳密に計算した長さの比も、3/2に近づくことを確かめてもらいました。

今回の授業を通して、本で読んだり人から聞いたりしたようなことでも、自分で確かめることが大切なこと、自分で確かめる作業は、数学では頭を使えばできる作業もあること、こういう作業によって、物事の道理を確かめることの大切さを学ぶことも、数学を学ぶ意義の一つであること、を知る機会になったと思います。

発表者の人は大変だったと思いますが、引き続き、完全グラフの巡回路を、樹形図で表す部分について説明してもらいました。よく頑張ったと思います。

次回はいよいよ最終回です。巡回路を探索する際の「分枝限定法」などを扱います。どこまで進めるかわかりませんが、なるべくゴールを目指して進みたいと思います。

2011-02-08

計算機演習(第7回)

今回は、主に積分の内容ということで、1変数、多変数の定積分を扱いました。

今回のレポート課題では、積分の課題が出題されていますが、曲線の長さや有界閉領域上の関数の積分など、Mathematicaの操作の正しさに加え、数学的な計算の正しさが求められる課題になっています。また、厳密な積分計算の課題に加え、台形則を用いた1変数関数の数値積分の課題もあり、こちらの方は、前回までに扱ったリスト操作などを用いた計算を行っています。

次回は、ルールとパターンマッチに基づくプログラミングを行います。

2011-02-07

数理科学II(第23回)

今日の授業は、引き続き Scheme の入門で、今日は、制御構造のうち、選択 (if, cond) と、反復を説明しました。

反復の部分は、LISPの特徴の一つともいえる「再帰的定義」です。素朴な再帰に引き続き「末尾再帰」についても説明しました。末尾再帰では、関数の引数に計算結果も含めて、再帰的なな呼び出しを行うことにより、通常のプログラミング言語のループと同様に扱うことが可能になるものです。

Scheme の説明はこれで一段落で、次回からは、計算機上での多項式の表現の一般論をざっと眺めた後、今回 Scheme で数式処理を実装するための、多項式の表現を検討したいと思います。

2011-02-04

数学特別演習(第15回)

今日は、与えられたグラフに対し「巡回路」を直接作る代わりに、より条件を緩めた問題を解く「緩和法」を扱いました。

巡回路を直接求める問題に対して「より条件を緩めた問題」というのが「1-木」と呼ばれるグラフの計算です。1-木は、前回扱ったヒューリスティックで求めた巡回路からノードを1個取り除き、残ったノードに関する「最小全域木」を構成し、それに、先程取り除いたノードを辺でつないで加えることで作られます。

このとき、巡回路は1-木の集合に含まれるので、経路の長さが最小となる1-木が求まれば、その経路の長さは、経路の長さが最小の巡回路の長さの下界になります。ポイントは、最小1-木を求めるのにかかる計算量が、最小全域木を求めるのと同程度(=多項式時間)の速さで、巡回路の長さの下界が求まるという点です。

さて、今日の最後の発表者は、来月卒業を控えた4年生の人で、今回、早く成績を出す必要もあり、発表してもらいましたが、最後に1年生の履修者にメッセージをもらいました。数学は1つ1つの理論の積み重ねであることや、いろいろな分野の関連性があること、そういったことを念頭に学習することの大切さを話してくれました。1年生にとっても、今回の話はよい刺激になったのではないかと思います。

次回は、巡回路を求める新しいアルゴリズムで、求めた巡回路の長さが、最適な巡回路に比べて高々1.5倍で抑えられるようなアルゴリズムを扱います。

2011-02-02

微積分III演習(第7回)

今日は、主に関数の極限と連続性に関する問題を扱いました。

授業の終わりの方で、ある人の発表で詰まってしまいましたが、みんなで討論が始まり、解法にいろいろなアイデアが出されました。残念ながら、今日は時間切れになってしまいましたが、今日の討論を踏まえて、次回頑張って解いてもらえればと思います。

この授業も次回と次々回の授業でおしまいですが、残りの時間で、主に一様連続性に関する問題を扱う予定です。

2011-02-01

計算機演習(第6回)

今回から2回は微積分の計算ということで、今日は、主に、導関数や極限値の計算、Taylor展開を扱いました。

なお、卒業予定者の人達については、早く成績を出す必要があるため、今日までに8回分のレポートを出してもらいました。お疲れさまでした。

次回は、主に積分の内容を扱います。

2011-01-31

数理科学II(第22回)

今日も、前回に引き続き Scheme の入門でした。今回は、LISPの基本関数(5大関数)(Scheme でいう car, cdr, cons, pair?, eq?)、数の四則演算と数値に対する関数、関数の定義と実行のしかた (define)、制御構造として、逐次(処理) (begin) について説明しました。

次回は、引き続き Scheme の説明を行う予定です。

2011-01-28

数学特別演習(第14回)

今日は「巡回セールスマン問題」(Traveling Salesman Problem, TSP) が取り上げられました。TSP は、これまでの授業で扱った「ハミルトン閉路」と関連して、グラフで最短のハミルトン閉路を求める問題で、グラフ理論の中でも最も有名な問題の一つとして知られています。

私は、これまで、TSP を輸送計画問題としてしか知りませんでしたが、テキストに載っていた TSP の応用例として、電子機器の基板にロボットがドリルがついた腕を移動させながら穴を開ける際、ドリルの移動距離が最短になるような穴を開けるための順番を TSP として解くという問題が紹介されており、予想していなかった応用例があることに驚きました。それから、以前の授業で「プロッタがペンで図形を描く際のペンの最短経路を求める問題」が、中国の郵便配達員問題に帰着されることをやりましたが、図形が連結していないと、こちらも TSP となり、NP 困難な問題になるという事実も紹介され、与えられた問題がちょっと変わるだけで、計算の難しさが大きく変わることにも驚きました。

授業の後半では、TSP のなるべくよい解を求めるための「ヒューリスティック」の紹介がありました。次回は、これらのヒューリスティックが、どれだけよい解を与えているかの目安を知ることを一つの目的として「緩和法」について議論する予定です。

テキストも終盤に入ったところで、なかなか骨のある話題が続きますが、次の担当者の人達にも頑張って予習してもらいたいと思います。

2011-01-27

数学特別演習:第13回の感想から

今回の授業は「NP問題」や「NP困難」といった、計算可能性の概念を扱いましたが、なかなか難しかったようです。

「NP困難」の問題は、理解するのも困難
といったように「文字通り」困難だった、という感想が多数ありました。

そのような中で

レナとヤンの理解力に脱帽です。
というように、本の登場人物であるレナとヤンの理解力の高さを指摘する感想もありました。たしかに、あれだけの会話でNP困難や、それを証明するための帰納法を即座に理解できるというのは、高校生にしては理解度が高いかもしれません。

それから、ある問題がNP困難である事実から、別の問題がNP困難になることを導く「帰納法」のような証明のアプローチについては

様々な事象の関係性や「これを示せばこれが証明できる」といった考え方は、数学ではとても重要なので、いい訓練だったと思います。
という感想がありました。たしかに、数学では、いろいろな分野で、このような理論の展開が行われているので、有益な指摘ではないかと思います。

あと、「辺の重みとして負の値を許したグラフで、最大でも一度だけノードを通過する最短経路問題」を解くアルゴリズムAから、ハミルトン閉路を求めるアルゴリズムBが求まる、という命題の証明の方針が「与えられたグラフに重み0の辺を加えて完全グラフにしてから、アルゴリズムAを適用させる」となっていましたが、ここで「重み0の辺を加えて完全グラフにする理由は何か?」という疑問が示されました。たしかに、これに答えるような説明はテキストの中には見つけられなかったので、この辺は私にとっても宿題になると思います。

授業の内容以外の感想としては

それぞれの発表者の評価アンケートでもあったらおもしろいかもしれないと思った。
という感想がありました。なるほど、おもしろいかもしれないけど、発表者にとってはいいプレッシャーになるかもしれませんね。ま、とにかく、授業の残り回数も少ないので、発表する人も聴く人も、テキストの最後までうまくたどり着けるよう、頑張ってほしいと思います。

2011-01-26

微積分III演習(第6回)

まず、前回の授業の際に回収したレポートを評価しましたが、おおむね問題の内容と解法を理解し、よくできているようでした。今日、返却しましたが、足りない部分は各自復習してもらいたいと思います。

今日も、関数の極限値に関する問題を中心にやりました。先週、手詰まりになり、保留になっていた人も、今日はちゃんと解けていたのでよかったと思います。私の解説がちょっとゆっくりになったせいか、若干時間が足りなくなり、数問板書してもらった問題が残ってしまいました。時間配分は難しいですが、なるべく問題が残らないよう、気をつけたいと思います。

来週も、関数の収束に関する問題演習が中心になると思いますが、その次のテーマである、関数の連続性、一様連続性に関する演習問題も配りました。授業回数があと3回なので、今学期の演習は一様連続性あたりまでかと思いますが、次回も問題発表がたくさん行われることを期待します。

2011-01-25

計算機演習(第5回)

今日の授業は、線形代数の第2回ということで、グラム・シュミットの直交化法と、Table関数を使った規則的なリスト生成や、リストの操作を行いました。

リストの生成や操作の部分は、これまでの数年間「発展学習」の方に含めていた内容でしたが、今年度、カリキュラムを再編成した際、今後学生さん達が使う可能性のあるデータ処理等に役立つのではないかとの判断で、必修の課程に含めました。

内容は全体的に易しかったようで、レポート締切は次回の授業日ですが、早くもレポート提出がそれなりの数ありました。次回からは、微積分の内容を扱います。

2011-01-24

数理科学II(第21回)

今日は、前回に引き続き、多倍長整数と有理数の表現、リスト表現と進んで、プログラミング言語Lisp (Scheme) の説明に入りました。

といっても、Schemeの方は、atom と pair の説明をしたくらいです。次回は、数の演算、関数定義、再帰やらの説明を行って、1変数多項式の実装に進めるよう、必要最小限の準備をしたいと思います。

2011-01-21

数学特別演習(第13回)

今日は、計算の複雑さが話題の中心になりました。「決定問題」や「NP問題」、「NP困難」の概念、ハミルトン閉路を求める問題が「NP困難」な問題の一つである事実、等です。

ハミルトン閉路が「存在するか」を問う問題は「NP問題」であっても、逆にハミルトン閉路が「存在しないか」を問う問題が、いまだにわかっていない、というのは、ちょっと意外な気もしましたが、存在を証明するより非存在を証明する方が難しい、ということを考えると、なるほどと思います。

それから、このテキストの最小の方で出てきた「負の重さが許されるグラフにおいて、最大でも一度だけ通過が許される最短経路問題」を効率的に解くアルゴリズムがあるとしたら、そのアルゴリズムを用いてハミルトン閉路問題も効率的に解くことが可能である、という命題の証明を通して、あるNP困難な命題から別の問題がNP困難である事実を導くというやり方も扱いましたが、最初の命題の証明も、なかなかすぐにはピンとこない人もいたようです。

今回は、全体的にやや難しい内容でしたが、この辺から「巡回セールスマン問題」の話題に入っていくと思うので、がんばって予習/復習をしてほしいと思います。

2011-01-19

微積分III演習(第5回)

今日は、前回出題したレポート課題のレポートを回収した後、関数の極限に関する問題をやりました。

内容は、数列の極限とそれ程変わりありませんが、不等式で評価する際に作る、上から抑える関数の作り方など、私自身も授業をやりながらわかってきた部分もあります。

学生さん達の発表は、正解ばかりとは限りませんが、間違えた部分をよく検討することは、発表した本人だけでなく、クラス全体にとっても有益です。比較的リラックスした雰囲気の中で、これからも、誤りを恐れず、積極的に発表してほしいと思います。

次回も、同じテーマで引き続き演習を行う予定です。(そろそろ次のテーマの用意も必要かな・・・)

2011-01-18

数理科学II(第20回)

今年の月曜日の授業は、なんとなんと、月のまん中を過ぎて下旬にさしかかろうという今日からです。しかも、昨日は大学入試センター試験のため、今日が火曜日のところ、曜日振替で月曜日の授業ですので、これがなければ、月曜日の授業は1月の間ほとんどなかったかもしれません。

そんなわけで、この授業も、前回からほぼ1か月ぶりです。前回「これだけ時間があるなら、ちゃんと次の講義ノートが作れるはずですよね。」と書いたのですが、どういうわけか、今日の授業の講義ノートを清書したのは昨夜でした、トホホ・・・(下書きはお正月明けに準備していたのですが。)

さて、今日から今年度の残りは、これまでとがらっと趣向を変えて、多項式演算の実装の話をします。といっても、今回の受講者は、予備知識の量もさまざまですから、なるべく基本的な部分に絞った話をします。したがって、実装のレベルはおもちゃの程度かもしれませんが、受講者の人達には、本質的な部分を提供し、あとは必要に応じて、自分達で学び進められるようなきっかけになれば、と思います。

今日のところは、計算機のしくみ(計算機の5大装置、ビット、メモリ空間、ワード)の話に引き続き、計算機上の数の表現として、整数、そして、数式処理でも使われる多倍長整数の途中まで話をしました。

次回は、これを踏まえて、この授業で使うプログラミング言語Schemeの話へと進めたいと思います。

2011-01-17

数学特別演習:第12回の感想から

先週1月14日は、大学入試センター試験の準備で休講になりましたので、前回1月7日の分の感想から、印象に残ったものを取り上げたいと思います。

まず、オイラー路とハミルトン路の区別から。

オイラー路とハミルトン路の違いがあいまいになっていたので、再確認できてよかった。
この点は、私も予習していて気がつき「これはやっておかないとな〜」とチェックした箇所でしたが、同様の感想を書いた人が数人いたので、復習の効果はあったのではないかと思います。発表者の人には事前予告なしにいきなり突っ込んだので、戸惑ったかもしれませんが、ちゃんと前に戻って確認し、正しく答えていました。お疲れさまでした。

次に、ケプラーのあまり知らなかった一面について。

ケプラーにも宗教的な一面が垣間見えて、正直驚いた。
(今回の授業で)一番気になったのが、天体の軌道に正多面体を組み入れたケプラーの考えです。ここには、ケプラーはぶっとんだ考えをしたというよりも、ケプラーは天体に対してすごい熱意があるなと思いました。それは、ケプラーの第三法則が出るまでどれだけかかったか、考えてもわかると思います。
ケプラーの宗教的な宇宙観は、ケプラーの法則からすると、かなり意外に思えましたが、ケプラーが生きていた時代の宗教の存在について、認識を新たにするきっかけになりました。このような時代に地動説を唱えるのがどれだけ勇気が要ることだったのか、ちょっとだけ深くわかった気がします。「すごい熱意」というのもなかなかいいとらえ方だなと思いました。

そして、お正月明けの雑感。

小学生よりも始業の早い筑波大学。筑波は東京よりも寒いですネ。
提出年月日は一度2010と書き間違えました。そんな人が多かったと思います、今日は。
たしかに、筑波は東京よりも寒いような気がします。昔、東京との行き来に高速バスをよく使いましたが、冬の夜、利根川を越えた途端に、窓ガラスが曇り始めていた気が・・・。それから、2010年と書き間違えるというのも、お正月明けは多そうですね。皆さん、もう2011年に慣れましたか!?
新年早々遅刻・・・ということにならずによかったです。いよいよ全員が当たってしまいました。また自分の担当になってしまうのが心配で、昼も寝れません。
この授業の発表者は、毎回、学生さんの名前が書かれたカードをシャッフルし、ランダムに取り出して割り当てています。このほど、ようやく、クラスの全員に発表の当番が回り、次回から、2巡目の指名ということになりました。それにしても「昼も」眠れないというのは、ヒットですねぇ。今年も頑張りましょう!

2011-01-12

微積分III演習(第4回)

今日は、この授業の今年最初の授業でした。最初に配った、数列の極限に関する演習問題で、残った問題(主に証明問題)をやってもらいました。

問題数が少なかったので、時間が余るかな?と思いましたが、案外時間は余らずに収まりました。板書や説明の時間を割と丁寧にとったためと思います。

次回は、関数の極限に関する演習問題から、選択で数問をレポート課題にしました。その上で、これらの演習問題を授業で取り上げる予定です。

2011-01-11

計算機演習(第4回)

今日の授業は、今年初めての授業でしたが、線形代数の第1回ということで、Mathematica上でのベクトル(リスト)や行列(リストのリスト)の扱い方を行い、ついで、対角化可能な正方行列に対して、行列の n 乗を計算する計算を行いました。

今日のテーマは内容が比較的易しかったためか、授業時間内にレポートを進める人も多く見られたようです。次回は、引き続き線形代数の計算を行い、加えて、要素に規則性のある行列やリストの効率的な求め方についてやりたいと思います。

2011-01-07

数学特別演習(第12回)

今日は、今年、2011年年明け最初の授業です。幸い、ほとんどの人が元気に顔を出していました。

今日テキストを読んだ範囲は、前回の「ナイト跳び」の続きです。チェス盤の1つ1つのマス目をノードに置き換え、ナイトが通りうる経路を辺で結ぶと、グラフになります。ナイト跳びのゲームは、こうしてできるグラフのすべてのノードを1回ずつ通過する経路が存在するか、という問題になります。こういう経路のことを「ハミルトン路」といい、さらに、ハミルトン路が最後に最初のノードに戻ってくる場合、これを「ハミルトン閉路」と呼ぶ話が出てきました。前のごみ収集車問題で扱った「オイラー路」と、今回の「ハミルトン路」の違いについても復習しました。

次の章では、「ハミルトン路」の語源になった、アイルランドの数学者ハミルトンの紹介と、ハミルトンが発明したという「二十ゲーム (icosian game)」の話がありました。そこから、プラトンの正多面体と呼ばれる5つの正多面体(正四面体、正六面体=立方体、正八面体、正十二面体、正二十面体)が紹介され、さらに、天文学者ケプラーと正多面体の関わりの話につながっていきました。

ケプラーというと、「ケプラーの第○法則」という、重要な法則を発見したことで有名ですが、一方で、当時発見されていた地球を含め6つの惑星の軌道と、プラトンの正多面体の関係に関する著作が紹介されています。その考察は、現代の自然科学の立場で見るとかなり宗教的ですが、彼の生きていた時代のヨーロッパの社会は、宗教と科学が現代よりもずっと近い位置にいたであろうことが推測され、興味深いものだと思います。

今日はこの辺で授業が終わりましたが、後半のハミルトンとケプラーの話題について発表してくれた学生さんは、予習を忘れていたそうで、直前にささっと読んだ程度と言っていましたが、それでも、内容をよく理解した上で、堂々と話す話術(?)に感心しました。

次回は、NP問題の話から、有名な巡回セールスマンの話につながっていくようで、内容も今回よりは複雑になりそうですが、次回の人達にも頑張ってもらいたいと思います。