2015-07-23

計算機数学I(第13回)

今回は、授業の最終回でしたが、中国剰余定理を紹介し、ついで、定理に現われる連立線形合同式の解を拡張Eucild互除法を用いて解く解法について説明しました。

これで一連の講義が終わりましたが、今年は、講義を初めて担当したこともあり、講義内容にやや偏りが生じたのは反省点だったと思います。多倍長数の演算に時間をかけ過ぎてしまい、他のトピックに割り当てる時間が足りなくなりました。もし次回担当する機会がありましたら、多倍長数の演算の時間を短縮し、数論に関する話題を追加してみたいと思います(その際、多倍長数に関するより詳しい解説を聞きたい場合は、今年の講義の録画が役に立つことでしょう)。

反省点はありますが、今回の講義で、現実に計算を行うための数学の知識や方法論に対する理解が深まれば幸いです。また、皆さんの中には、中学校や高校で教職に就く人もいるかもしれませんが、これから数学を学ぶ生徒さん達にも、折に触れて、こういった、数学の一つの姿を伝えていってもらえればと思います。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/compmath1-2015

2015-07-13

計算機数学I(第12回)

今回は、拡張Euclid互除法の応用の一つとして「法逆元計算」を取り上げました。これは、剰余環のある元が単元である(=乗法の逆元をもつ)際に、その逆元を計算する方法で、拡張Euclid互除法で計算する余因子が求める逆元となります。今回は、その性質を述べた定理と、計算例として、素数を法とする整数の剰余環(体)、および、有理数体に既約な1変数代数方程式の根を添加した拡大体において、逆元の計算を行いました。

この授業も次回が最終回ですが、次回は中国剰余定理と、拡張Euclid互除法を用いた中国剰余算法を取り上げ、授業の締めくくりにしたいと思います。

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2015-07-06

計算機数学I(第11回)

今回は、前回のEuclid互除法で残ったアルゴリズム自体の説明を行ってから、拡張Euclid互除法の説明を行いました。拡張Euclid互除法の根拠となる定理の証明は、時間の都合で、最も重要な「余因子の存在と計算手順」の部分のみを行いましたが、それ以外の証明も、一通り、講義ノートに記録しています。

この授業も残すところあとわずかですが、残りの時間は、(拡張)Euclidの互除法に関連する話題に充てる予定です。今回は、連分数展開の計算について説明しました。正則連分数の計算の際、Euclidの互除法が用いられます。これに関連し、ある条件を満たす無理数が、循環する連分数に展開されることも説明し、その計算も行いました。実は、連分数展開からもとの有理数や無理数を計算するのも(拡張)Euclidの互除法と関連性がありますが、こちらの方は時間の都合で割愛しました。

次回以降は、法逆元の計算と、これに関連して、中国剰余定理を(時間があれば)扱う予定です。

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