2015-06-29

計算機数学I(第10回)

今回は、整数と1変数多項式の剰余つき除算について説明したのち、Euclidの互除法に入りました。その前に、可換環のイデアルや剰余環などの概念については、各自の復習に任せました(講義テキストにも一通り説明があります)。

Euclid互除法では、その根拠となる定理を説明したところで時間になりましたが、整数に対するEuclid互除法の場合、剰余を計算する回数の上界の一つとして黄金比が用いられることを紹介しました。

次回は「拡張Euclid互除法」について説明した後、Euclidの互除法の応用に進みます。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/compmath1-2015

2015-06-22

計算機数学I(第9回)

出張で1週間空けましたが、今回は、主に多倍長整数と1変数多項式に対する乗算のアルゴリズムについて説明しました。

多倍長整数の乗算については、単精度演算を単位とした計算量の見積もりを行いましたが、多項式の乗算については、見積もりが繁雑になるため、今回は、係数上の四則演算の回数を単位とした計算量の見積もりのみを行いました。

この時間の最後に、剰余つき除算の説明に入りました。次回は剰余つき除算を説明し、拡張ユークリッドの互除法に進む予定です。

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2015-06-19

Dagstuhl Seminar 終了

今日はセミナー最終日ということで、午前中のセミナーでは、主に structured matrix (構造をもつ行列)に関する発表がありました。

これで5日間にわたるセミナーが終わったわけですが、私にとっては、Pade 近似や multiexponential analysis など、自分にとって未知の分野を知ると同時に、その辺でも自分が取り組んでいるものと似たような問題意識があることを知り、非常に有意義な会議だったと思います。

また、会議の日程はゆったりしており、参加者の人達からいろいろな話を聞けたのも収穫だったと思います。普通の国際会議ですと、街中でやるので、その日のセッションが終わったら慌ただしく移動してよく顔を合わせる人との時間が主になることが多いですが、合宿形式で、時間に余裕があることで、より多くの人達と話ができたと思います。

あと、自分の研究テーマに関しても、新しい情報やコメントを得られたのも収穫でした。日本に帰ってからも、より広い視野を忘れないように、仕事に取り組みたいと思います。

2015-06-18

Dagstuhl Seminar 5日目

今日のプログラムは "sparse interpolation"(疎な多項式補間)の話題が中心でした。手法は様々でしたが、昨日までの講演にあった、指数関数の復元に対応するものがあり、両者の類似点を眺めることができたと思います。

自分の講演は、近似GCDでも用いる「部分終結式行列」に関する話題で、結果はまあまあ、といったところですが、いくつか有益なコメントをもらえたのは収穫だったと思います。

会議もいよいよ明日が最終日で、明日には町に戻ります。

2015-06-17

Dagstuhl Seminar 4日目

今日は会議は午前中のみでしたが、Pade近似に関する発表が中心でした。

午後のエクスカージョン(遠足)は、予定が二転三転しましたが、結局、バスの手配がついて、ドイツの古都トリーア (Trier) に行きました。会議場からは1時間くらいで着きます。トリーアは古代ローマ帝国によって造られ、ローマ帝国が分割統治されていた時期には、最も西の地域の首都だったそうで、当時の城門(ポルタ・ニグラ)、皇帝の宮殿(現在は教会として使用)、皇帝の大浴場など、興味深い建物や遺跡がいろいろありました。

会議は明日も続きます。

2015-06-16

Dagstuhl Seminar 3日目

今日は会議の2日目で、発表は Exponential Analysis に関するものを一日行いました。特に午前中のセッションでは、Prony method と呼ばれる、指数関数のパラメータをデータから再現する方法に関する発表がたくさんありました。

それから、今日は記念写真の撮影を行いました。写真の方はすでに会議のホームページに掲載されています。

2015-06-15

Dagstuhl Seminar 2日目

今日から会議が始まりました。午前中は、主催者の先生 (Annie Cuyt) から、この会議の趣旨説明を兼ねた講演があり、お茶の休憩の後、参加者が軽く自己紹介をしました。

午後は Application Section で、Multi exponential analysis の応用事例として、サンプリング(屋外の環境データなどの収集)の最適化や画像処理などが紹介されました。

今日は早めに日程も終わったので、明日に備えたいと思います。なお、セミナープログラムは会議のホームページにて公開されています。

2015-06-13

Dagstuhl Seminar: Sparse modelling and multiexponential analysis

今回、Dagstuhl Seminar(ダグシュトゥールセミナー)という国際会議に参加するため、ドイツにやってきました。

Dagstuhl Seminarは、ドイツ西部の町Wadern(ヴァーダーン)にあるSchloss Dagstuhl(ダグシュトゥール城)と呼ばれる施設で開催されている一連のセミナー(会議)です。「城」と呼ばれるだけあり、昔のお城、というか邸宅を使ってセミナーハウスにしたもののようです。

そして、セミナーの方は、情報科学のいろいろな研究テーマでセミナーを公募し、採択されたものが、それぞれ1週間くらいの長さで開催されます。ですので、ここの施設では、毎週次から次へと新しいセミナーが開催されているようで、だいたい2年後くらいまでのスケジュールが決まっているようです。

セミナーの運営も独特で、まず、参加者は、各セミナーの主催者からの招待によって参加します。それから、セミナーの細かい運営は主催者によって決まるようで、単に研究成果の発表にとどまらず、参加者間での討論などによる研究交流も重視されているようですが、今回はどうなることでしょう。とりあえず、出発日である今日の未明に、主催者からセミナープログラムが送られてきました。

今回私が参加するセミナーは"Sparse modelling and multiexponential analysis"というもので、計算代数では厳密計算や近似計算に基づく多項式補間の話題が中心になりそうです。 私はもともと数式・数値融合専門で、これらの分野とはやや離れているかもしれませんが、どんなことになるか、大きな期待と若干の不安を持っての参加です。

今日は東京からフランクフルトに飛んで、近郊のマインツに宿泊し、明日、現地に向かいます。

2015-06-10

ホームカミングデー

大学の行事「ホームカミングデー」が、今年は11月7日(土)に行われることになりました。

「ホームカミングデー」は、毎年、大学を卒業して20年にあたる卒業生を対象に、大学に再び集まって旧交を温める行事です。今年の対象は、1991年大学入学、1995年大学院修士課程入学の人達が中心になります。それから、大学も、筑波大学に加え、図書館情報大学に入った人達もた衣装です。

大学では、この行事のために「ホームカミングデー委員会」を組織して準備を行います。委員会は、委員長、副委員長、委員、事務方から構成されますが、委員は、各学群から、ホームカミングデーの対象者を中心に選出されます。今回、理工学群担当の教員で、本学卒業20年にあたる人が自分しかいなかったとのことで、私が理工学群選出の委員としてホームカミングデー委員会に参加することになりました。(ちなみに、今年の委員長は理工学群長ですが、数学の先生です。)

ホームカミングデーは、先に述べた通り、11月7日(土)に行われますが、この日はちょうど学園祭の1日目に当たっています。参加申込の受付はこれから専用のwebサイトで行われる予定ですが、同級生の皆さんの多数の参加をお待ちしております。

計算機演習(第8回)

今回はMathematica編の最終回で、タートルグラフィクス(コンピュータ上で「カメ」を動かし、その軌跡によって図形を描くこと)によるフラクタル図形の描画を行いました。

Mathematica編はこれで終わりますが、今後も折に触れてMathematicaのいろいろな機能を活用してもらえればと思います。

次回からはプログラミング言語 Haskell の実習に入ります。

2015-06-08

計算機数学I(第8回)

今回は、1変数多項式に対するHorner法の応用の一つとして、数の2進・10進変換の効率的な方法を紹介しました。2進・10進変換は、2進数を10進数に、あるいは10進数を2進数に変換する計算です。

非負整数の2進・10進変換は、比較的多くの資料が出回っていると思いますが、循環小数(2進)や有理数(10進)の2進・10進変換、そして、負の10進数を2の補数で表す変換については、原理は他の変換と同様、それ程難しくはありませんが、計算例はさほど多くなさそうですので、参考になるかもしれません。

来週は私の出張のため休講にするので、レポート課題を出しました。課題は授業テキストの演習問題の抜粋ですが、例題を用いて基本的な解法を説明しました。

次回は再来週、1変数多項式や多倍長整数の乗算と除算を扱う予定です。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/compmath1-2015

2015-06-03

計算機演習(第7回)

今回は、Mathematicaによるプログラミングの方法の一つとして「ルールベースドプログラミング」を扱いました。ルールとパターンマッチに基づく関数の定義です。

レポート課題の一つに、関数の微分を行うプログラムの作成がありましたが、定数の微分の定義を忘れていた人がいたようです。

次回は、Mathematica編の最終回ですが、今回のプログラミングと合わせたグラフィクスの話題を扱います。

2015-06-01

計算機数学I(第7回)

今回は、まず、前回に引き続き、1変数多項式の加算を取り上げ、そのアルゴリズムと計算量の見積もりについて説明しました。

次に、1変数多項式の評価を行う「ホーナー (Horner) 法」について説明しました。これは、高校の数学でも「組立除法」として紹介されている方法で、国立国会図書館電子展示会江戸の数学」でも紹介されています

次回は、Horner法の応用例として、10進数と2進数の間の効率的な変換法を紹介します。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/compmath1-2015