2016-11-22

Maple T.A. の評価に参加しました

Maple T.A. (メイプルティーエー)は、数式処理システムMapleを開発しているカナダのMaplesoft社が出している、オンラインの数学テスト/評価システムです。TAというと、大学では普段「ティーチング・アシスタント」(授業などで教員の補助をする、主に大学院生の職務)をいいますが、ここでは「Testing and Assessment(テストと評価)」の意味です。

私が数式処理の研究に携わり、Mapleを使っていることから、ここ数年の間、MapleおよびMaple T.A.の国内販売元にしてMaplesoftの親会社であるサイバネットシステム(株)の方々と交流させていただいておりますが、本年度、筑波大学 大学院数理物質科学研究科 数学専攻とサイバネットシステムで提携して、数学専攻の大学院生をインターンで受け入れていただきました。学生には、Maple T.A. のコンテンツ(教材)として、私が昨年の授業の際に作成した、小テストの教材をMaple T.A. 用にアレンジし、開発してもらいました。

そして、今日、サイバネットシステムの方に大学までお越しいただき、私の主宰するセミナーのメンバーである大学院生に、教材の評価をしてもらいました。今回評価したのは、小テスト1回分もしくは2回分、時間にして10分から20分間のものですが、サイバネットシステムの担当者の方から操作方法の説明を受け、各自問題を解いてみました。

Maple T.A. を本学で利用したのはこれが多分初の試みと思いますが、評価は興味深い体験だったとともに、インターン生による教材の完成度の高さと仕事の速さに感心したひと時でした。幸い、サイバネットシステムの方々にもインターン生の活動は好評だったようです。今後の大学院生の活躍や、サイバネットシステムと本学との連携の発展にも期待したいと思います。

2016-08-07

私のホームページが復旧しました

6月末より、私のホームページを閲覧できない状態が続いておりましたが、このほど、障害から復旧し、再び閲覧可能な状態に戻りました。ご迷惑をおかけしました。今後も引き続きご愛顧の程よろしくお願いします。

2016-07-26

数学セミナーA(第12回)

今回は、この授業の最終回でしたが、前回残したハミルトングラフに関する定理の系を証明してもらったのに続き、最短経路探索と、中国の郵便配達問題のアルゴリズムを説明してもらいました。

「中国の郵便配達問題」という名前は、証明した人が中国人ということで、「中国の郵便配達」とは関係ありませんが、この定理の他にも、別の授業で取り上げた「中国剰余定理」のような呼ばれ方があります(主に西洋の視点と思いますが)。

今回のテキストでは、アルゴリズムがきちんと提示されていたわけではありませんでしたので、必要があれば、他の本でアルゴリズムを確認するとよいのではないかと思います。

以上、今学期でテキスト全体の1/3程を読みましたが、授業中は積極的な質疑応答が行われ、よい雰囲気で授業ができたのではないかと思います。今後も、履修者の皆さんには、本を読んだり、仲間と議論したりすることで数学を理解し、これからの各自の研究などにつなげていってもらえればと思います。

2016-07-25

計算機数学I(第13回)

今回は、本授業の最終回でしたが、有理数の再構成について説明しました。今回は分量がやや多く、ちょっと急いでしまいましたが、講義ノート等で内容を補っていただければと思います。

以上、春学期の授業が一通り終わりました。計算機の構成、演算のしくみから、主に1変数多項式の基本的な演算、そして拡張Euclid互除法が中心になりました。内容は基礎的なものがほとんどでしたが、自分で手を動かして、アルゴリズムを理解してほしいと思います。

秋からは卒業予備研究が始まりますが、計算機分野への応募もお待ちしています。

授業サポートページ(予備):https://researchmap.jp/aterui/compmath1-2016/

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/compmath1-2016

2016-07-19

計算機数学I(第12回)

今回は、拡張Euclid互除法の応用例として、中国剰余定理とその計算を紹介しました。

次回がこの講義の最終回ですが、次回は有理数の再構成について説明したいと思います。

なお、授業サポートページが、アクセス権設定の不具合で閲覧不能な状態が続き、ご迷惑をおかけしましたが、このほど、別の場所に予備のページを開設しましたので、講義ノートのダウンロードや講義録画のアクセスはそちらからご利用ください。

授業サポートページ(予備):https://researchmap.jp/aterui/compmath1-2016/

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/compmath1-2016

2016-07-05

数学セミナーA(第11回)

今回は、ハミルトン・グラフについて論じました。特に、単純グラフがハミルトニアンになるための十分条件の一つを与えているOreの定理で、頂点数が一般のnの場合の証明について、詳しく議論しました。

授業日程の都合で、次回授業は7月26日、これが最終回となります。次回は、単純グラフがハミルトニアンになるための別の十分条件として知られているDiracの定理について調べたのち、グラフのいくつかのアルゴリズムについて学びます。

2016-07-04

私のホームページが見られない状態になっています

現在、私の仕事場のホームページ https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/ が閲覧できない状態になっています。より正確に申しますと、ページを表示するとログイン画面が現れます。

これは、私の意図でそのようにしたわけではなく、ベースになっているwikiのシステムをアップグレードしたところ、アクセス制御に何らかの不具合が発生している模様です。

現在、原因の究明と復旧に努めているところです。ご不便をおかけしている方々にお詫びします。以下、いくつかのう回先です。

計算機数学I(第11回)

今回は、拡張Euclid互除法の応用として、剰余環で与えられた元が乗法の逆元をもつ際に、その逆元(法逆元)を求める方法について説明しました。

次回は、拡張Euclid互除法の別の応用として、中国剰余定理の構成的計算法を紹介する予定です。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/compmath1-2016

2016-06-29

計算機演習(第11回)

今回は、Haskellにおけるリストの内包表記、タプル (tuple)、いろいろなデータ型が出てきました。

私も実際にレポート課題を解いていますが、昨年のことをほとんど忘れており、使わない知識はあっという間に忘れてしまうことを実感しています。なんとかプログラムを組んだのですが、TAの人から誤りを指摘されました。変数が動く範囲で、本来は「k未満」としなければならない部分が「k以下」になっていたようです。お恥ずかしいミスでした。

2016-06-28

数学セミナーA(第10回)

今回は、オイラー・グラフの性質の残った部分と、オイラー・グラフの小道 (trail) を構成するFleuryのアルゴリズムについて学びました。

次回は、セクションを進めてハミルトン・グラフについて学びます。

2016-06-27

計算機数学I(第10回)

今回は、前回紹介した拡張Euclid互除法の定理の証明の続きを行い、そのアルゴリズムの説明を行いました。そして、Euclid互除法の応用例として、連分数展開の計算を紹介しました。

有理数の連分数展開は有限項で終わりますが、無理数についても、2次無理数(整係数2次方程式の根)の場合には、循環連分数で展開できます。そこで、2次無理数の循環連分数展開についても説明しました。

次回は、拡張Euclid互除法の次の応用例として、法逆元 (modular inverse) の計算を紹介したいと思います。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/compmath1-2016

2016-06-22

計算機演習(第10回)

今回はHaskell編の2回目で、関数の定義やリストの操作を中心に行っています。

レポートには複数個の課題が出ており、提出はその回のすべての課題の解答(プログラム)を1つのファイルにまとめて提出することになりますが、開発の段階では、プログラム毎にファイルを作り、開発→デバッグを行うのが効率がよさそうです。

2016-06-21

数学セミナーA(第9回)

今回は、オイラー・グラフの定義と性質について議論しました。特に、連結グラフがオイラー・グラフであるための必要十分条件は重要です。

次回は、今回の節の残りの部分を読み、ハミルトン・グラフに進む予定です。

2016-06-20

計算機数学I(第9回)

今回は、Euclid互除法のアルゴリズムについて説明しました。アルゴリズムの停止性についてはテキストに説明がありましたので、授業では、Euclid互除法によってい生成される剰余列の長さの評価に関する性質を示し、これがフィボナッチ数列と関連があることや、剰余列の長さの上界に黄金比が現れることなどを紹介しました。その後、拡張Euclid互除法に入りました。

次回は、拡張Euclid互除法のアルゴリズムと性質を示し、拡張Euclid互除法の応用に進みます。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/compmath1-2016

2016-06-15

計算機演習(第9回)

今回から、プログラミング言語Haskellの演習に入りました。Haskell編は、同じ数学類の坂井公先生が担当されるので、私は端末室でHaskellを動かしたりしながら学生サポートに回っています。

今回は、Haskellの初回ですので、Haskellのプログラミングに慣れる内容で、テキストエディタによるプログラムの編集、Haskell環境 (WinGHCi) の使い方について、説明が行われました。その後、WinGHCiで対話的な計算を行っていました。

2016-06-14

数学セミナーA(第8回)

前回の授業から2週間空きましたが、今回は、連結なグラフの点(頂点)を除去してグラフを非連結にする際の性質について議論しました。そして、任意の連結グラフに対して、その辺連結度が(点)連結度と常に等しいかより大きくなるという性質を証明しました。この証明は、テキストには「証明できる」とだけ書いてありましたが、今日の担当者は自分達で証明を 学んで発表していたので、参考になったと思います。

次回は、連結グラフの中でもよく知られているオイラーグラフについて学びます。

2016-06-13

計算機数学I(第8回)

今回は、主に1変数多項式に対する剰余つき除算のアルゴリズムを示したのち、テキストの第4章に進みました。今日のところは、Euclidの互除法に入る前に、環やイデアルの概念を復習し、Euclid整域の定義を確認しました。

次回は、Euclid互除法から拡張Euclid互除法へと進みます。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/compmath1-2016

2016-06-08

計算機演習(第8回)

今回は、タートルグラフィクスを用いたフラクタル図形の描画を取り上げました。題材の中では、リストの作成、リストの要素の置き換え、線分の描画などを用いています。

Mathematica編は今回で終わりますが、今後も機会がありましたらMathematicaを活用されることに期待します。次回からはプログラミング言語Haskellを学びます。

2016-06-06

計算機数学I(第7回)

今回は、主に1変数多項式や多倍長整数の乗算のアルゴリズムとその計算量について説明しました。

内容としては、まず、1変数多項式の乗算のアルゴリズムと演算回数の見積もりを行い、ついで多倍長整数と単精度整数の乗算、そして多倍長整数どうしの乗算のアルゴリズムと計算量の見積もりを行いました。これらの応用により、1変数多項式の乗算についても、係数の大きさ(長さ)から計算量を見積もることができるようになると思いますが、この部分は各自での考察を促したいと思います。

次回は、主に1変数多項式に対する剰余つき除算を説明した後で、テキスト第4章のEuclid互除法に進む予定です。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/compmath1-2016

2016-06-01

計算機演習(第7回)

今回は、プログラミングの初歩として、「ルールベースドプログラミング」および「手続き型プログラミング」を行いました。

ルールベースドプログラミングは、関数の定義を再帰的定義などのルールを用いて記述するもので、例年授業で扱ってきました。しかし、実際にMathematicaを用いたデータ処理などの計算では、より伝統的なif文やfor文などを用いたプログラミングも有効な場合があることから、これまでは「発展学習」として紹介していた手続き型プログラミングを必修として追加しました。

今回の授業は、これまでより難度が上がったためか、いつもより質問がたくさん出ていて、教室内の動きもより活発な印象を受けました。レポートの方も健闘に期待したいと思います。

次回はMathematica編の最終回ですが、フラクタル図形の描画を扱います。

2016-05-31

数学セミナーA(第7回)

今回は、グラフが連結成分に分かれている場合の辺の個数に関する条件や、連結なグラフから辺や頂点を除去して非連結なグラフにする際の条件について議論しました。

次回は、連結グラフの中でもオイラー・グラフについて調べていきます。なお、来週6月7日は数学教育コースの修士論文中間指導会のため、次回の授業は6月14日となります。

2016-05-30

計算機数学I(第6回)

今回は、前回紹介したHorner法の応用として、数(整数、分数、小数)の10進・2進変換の話題を取り上げました。

私達人類が数を数える際、今日では10進数が広く用いられる(歴史的にはそれ以外の進法もあると思いますが)一方、計算機の内部ではほとんどの場所で2進法が使われています。ですので、10進数と2進数の変換はいたるところで用いられていると言ってよいでしょう。それらの計算にHorner法のアイデアを適用可能であることを紹介しました。

次回は、多項式などの乗算とそのアルゴリズムの説明に進みたいと思います。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/compmath1-2016

2016-05-25

計算機演習(第6回)

今回は、微積分の内容の後半で、不定積分、定積分、微分方程式の解法を中心に扱いました。また、リストに対するさまざまな処理についても学びました(今回のレポート課題の一つに、台形公式による数値積分があり、この中でリスト処理を行います)。

次回はMathematicaによる初歩的なプログラミングを扱います。

2016-05-24

数学セミナーA(第6回)

今回は、道と閉路に関する性質の最初として、グラフの歩道 (walk)、小径 (trail)、道 (path)、閉路や連結性の定義を行い、閉路に関する性質を、いくつかの定理で観察しました。さすがに数学の話題に入ってきた模様で、だんだんテキストを読んで説明するのにも時間がかかってきているようでした。

次回は引き続きグラフの連結性に関する性質などを扱う予定です。

2016-05-23

計算機数学I(第5回)

今回の授業では、1変数多項式の加算のアルゴリズムと計算量、1変数多項式の変数に値を代入して評価するHorner法を扱いました。

次回は、Horner法の応用として、整数や小数、分数の2進-10進変換を扱います。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/compmath1-2016

2016-05-18

計算機演習(第5回)

今回は、微積分の内容の前半で、関数の定義、関数の極限の計算、導関数の計算、Taylor展開の計算を扱いました。

今回の授業内容で目立ったトラブルとして、「三角関数のSin, Cosの頭文字を大文字にするのを忘れている」、「アンダーラインの入力方法がわからない」、「カッコの使い分け(小カッコは数式の計算の優先順、中カッコはリスト、大カッコは関数の引数)が正しくできてない」、がありました。

次回は微積分の2回目で、積分の話題を中心に扱います。

2016-05-17

数学セミナーA(第5回)

今回は、グラフを用いてパズルの問題を解く例として、「8つの円の問題」、「6人の会合」、そして「4つの立方体の問題」を紹介してもらいました。

次回は、第3章に進み、道と閉路に関する性質について学んでいきます。

2016-05-16

計算機数学I(第4回)

今回は、アルゴリズムの時間計算量の見積もりについて説明し、前回やった、多倍長整数の加算の計算量を見積もりました。その後、符号つき多売長整数の、2の補数を用いた表現について説明しました。

次回からは多項式の話題に入ります。まずは、1変数多項式の表現や演算の話題から進みたいと思います。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/compmath1-2016

2016-05-11

計算機演習(第4回)

今回は、主に線形代数のテーマを扱いました。ベクトルや行列のリストによる表現とその使い方です。応用では、行列の対角化の方法について復習しながら計算しました。

次回は微積分の内容を扱う予定です。

2016-05-10

数学セミナーA(第4回)

今回の授業では、グラフの隣接行列と接続行列を定義したのち、いろいろなグラフの例に触れました。術語を挙げていきますと、空グラフ、完全グラフ、閉路グラフ、車輪、正則グラフ、プラトン・グラフ、二部グラフ、立方体、といった感じです。

次回は、グラフを用いて主にパズルなどの問題を解く方法について見ていきます。

2016-05-09

計算機数学I(第3回)

これ以降、この授業では、数を正確なものとして扱いますが、今回は、整数の桁数が大きな場合に扱う「多倍長整数」の表現と演算(加算)について説明しました。

次回は、計算量について説明したのち、多倍長整数の加算にかかる計算量を評価します。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/compmath1-2016

2016-04-27

計算機演習(第3回)

今回は、前回のMathematicaの使い始めの続きで、連立方程式の解法、グラフィクスのオプション、アニメーションを扱いました。

次回の授業は連休をはさんでの実施になりますが、線形代数の内容を扱う予定です。

2016-04-26

数学セミナーA(第3回)

今回の授業では、グラフの連結性、隣接、部分グラフの概念を扱いました。どのテーマにおいても、教科書の例題から、より一般的な例について、教室内で議論されていたと思います。

次回は、グラフの行列による表現法から、さまざまなグラフの例に進みます。

2016-04-25

計算機数学I(第2回)

今回は、整数の表現として、符号なし整数と、2の補数を用いた符号つき整数について説明しました。そして、引き続いて浮動小数の概要を説明しました。IEEE浮動小数点規格や、浮動小数演算に伴う誤差などの詳細については今回は省きましたが、興味のある人は昨年の授業内容を参考にしていただければと思います。

次回は多倍長整数の説明に進みます。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/compmath1-2016

2016-04-20

計算機演習(第2回)

今回から、端末を使った本格的な授業が始まりました。

といっても、今回はほとんどが実習のガイダンスとなりました。e-learningシステムmanabaへのログイン、Mathematicaの起動、レポートの課題ファイルのダウンロード、レポートの作り方と提出手順などを説明しました。いろいろ細かく説明したところ、ガイダンスのみで授業時間がほぼなくなりました。

今年は、次回のテキストを早めに公開し、授業前に予習を促すことにしましたが、1回目がほぼガイダンスで終わったので、次回の予習はどの程度進んでいるでしょうか。注意深く様子を見たいと思います。

2016-04-19

数学セミナーA(第2回)

今回の授業は、第1章の「入門」で、グラフとは何かという話から始まりました。第1章は、主にテキストの各章で扱う内容の紹介でしたが、参加者からは、テキストの図で取り上げたグラフの趣旨は何かといった質問が出ました。また、グラフの「連結性」が紹介された際には、1点のみからなるグラフは連結か?といった質問も出ました。

次の第2章では、グラフに出てくる主要な概念の定義と、グラフの例が示されています。今回は時間の都合で、グラフの「同形」の概念で終わりました。次回は、グラフの「連結性」の概念から進みます。

2016-04-18

計算機数学I(第1回)

今年も、昨年に引き続き、数学類の専門科目「計算機数学I」を担当することになりました。

この授業では、主に代数計算、特にEuclidの互除法を軸にしながら、構成的な計算について説明します。授業では、アルゴリズム、データの表現、計算量の議論もしながら進めていきます。

今年も、授業のガイダンスの後、準備として、コンピュータの基本構成を説明しました。昨年に引き続き、タワー型のパソコンのケースを開けて中の部品の説明をする一方で、DVDドライブ、フロッピーディスク、MOディスクや、ハードディスクを解体した中身の紹介も行いました。その後、メモリの配置(メモリマップ)と計算機の「ワード」について説明しました。

今年も、毎回の講義ノートをwebの授業サポートページに掲載するとともに、講義の模様を録画して公開していきたいと思います。次回は、計算機による数値の表現に進みたいと思います。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/compmath1-2016

2016-04-13

計算機演習(第1回)

今年度も、数学類2年次春学期の「計算機演習」を担当することになりました。今年度も、授業の前半、数式処理システムMathematicaの実習を担当します。

今回は、授業のガイダンスということで、ティーチング ・アシスタント (TA) の人達にも集まってもらい、授業の概要を説明しました。履修者は数学類がほとんどで、人数は40人ちょっとといった感じです。次回から本格的な授業が始まります。

2016-04-12

数学セミナーA(第1回)

今年度の春学期に、教育研究科の数学教育コースにて「数学セミナーA」という授業を担当します。

この授業は、数学のセミナー(輪講)を行う授業です。輪講とは、教科書として数学の本を選び、毎回、事前に当番を決めて、当番が本の内容を予習し、授業時間にその内容を説明するというもので、交代で授業を行うようなものです。通常の数学の講義や演習と異なる点は、話題は講義のように順を追って進みますが、質疑応答のような、講師と参加者の対話の要素が増える点では演習に近いものがあります。「セミナー」は、数学の勉強を行う際によく取る形態の一つで、数学では、大学院生以上になると、セミナーは、新しい本の勉強の他、先生と学生や、研究グループ内で、研究の進捗状況や研究の新しいアイデアや研究成果の検討など、普段の研究のコミュニケーションの主要な要素になります。

教育研究科には、学部においていくつかの異なる分野出身の人達が一緒になります。数学の場合は、数学科等、理学系の学科出身の学生がいる一方で、教育学部の数学教育などの学科出身の学生もいます。数学科の場合は、卒業研究などで、セミナーを経験することがほとんどだと思いますが、出身学科や分野によって、数学のセミナー経験がない場合がありますので、そのような経験の差を埋め、学生に一定の数学の能力を確保しようということで、数年前から、数学教育コースの修士1年生に対し、春学期に「数学セミナーA」、秋学期に「数学セミナーB」という授業を行っていると聞いています。

今回、私の授業では「グラフ理論」を取り上げることにしました。理由はいくつかあります。1つめは、前提となる数学の予備知識が少なくて済むこと。2つめは、最初の段階は単純な理論から始まりますが、理解には数学的な思考が必要であり、そのような練習に適していること。3つめは、本学数学類においては取り上げられる機会の少ない分野であり、内部進学者と、学外から入学した人との既習の予備知識の差が比較的少なく、ほとんどの人が同じスタートラインから学習を始められると判断したこと、などです。

テキストには、R.J.ウィルソンの「グラフ理論入門」(西関隆夫, 西関裕子 訳, 近代科学社, 2001)を選びました。入門書として定評があり、本の厚さも比較的薄く、値段も比較的安く、本の書き方も平易で取り組みやすそうに思えます。

授業の運営は、基本的に学生に任せることにします。毎回、2人の人がレポーターとして説明を行います。彼ら/彼女らは、次の回で座長を務め、授業を進めます。それから、毎回の授業で、レポーターの補欠を2人決めておきます。そして、役割の順番は、1週目に補欠、2週目にレポーター、3週目に座長を務めることになります。今回は、私の方で座長2人を選び(偶然というか、成り行きというか、昨年度、卒業研究を指導した2人になりましたが)、彼らに、次回のレポーターと補欠を選ぶための相談を進めてもらいました。次回から、数学教育コースの13人の新入生達と、授業を進めていきます。

2016-03-11

5年前の仕事場を振り返る

東日本大震災から5年になります。この機会に、当時の私の仕事場と周辺の様子を写真とともに振り返ってみたいと思います。

地震発生の瞬間、私は、研究グループの合宿を1週間後に控え、合宿の最終案内のメールを書いていました。揺れを感じてオフィスの入口まで行きましたが、揺れはそれ程大きくなかったので、再び自分の机の前に戻りました。しかし、揺れは大きくはないものの、収まる気配がないことを不審に思い、「念のため」机の下に身を隠しました(結果的にこの動作は正解でした)。

その直後、大きな揺れが始まりました。ブラインドが窓に当たってガンガン鳴り、電気も止まって照明も切れ、室内が暗くなりました。自分の身が倒れないように膝を必死で抱えていました。ふっと机の外に目をやると、1回の揺れで書棚から本が水平に飛び出し、次の揺れで書棚が倒れてきました。見るものすべてに驚くのが精一杯で、恐怖を感じる余裕すらありませんでした。

ずいぶん長く感じられた揺れが収まり、この瞬間を記録しようと、まず自分が身を隠した机の下から、冒頭の写真を取りました。ところが、いざ机の外へ出ようと思ったら、椅子がつかえて外へ出られません。閉じこめられるのではないかと焦りました。無理にもがいても仕方がないので、1分間だけ脱出を試みて、それで出られなければ救助を待つことにして、もがいてみたら、間もなく椅子を押しのけて脱出できました。

廊下に出てみると、同じフロアにいた同僚の方は2,3人でした。隣のセミナー室の廊下に重ねてあった会議用の折りたたみテーブルの山が、見事に崩れて廊下をふさいでいました。私のオフィスのすぐ隣に階段がありますが、下のフロアには化学系の実験室もあり、万一化学薬品の漏出や爆発などが起こっていたりしたら危険ですから、建物の端にある非常階段に行きました。下を見下ろすと、道路(平塚通り)を隔てた大学会館の外にも人が集まっていました。

非常階段を降りて、とりあえず松美池のほとりに出ました。たぶん、学系棟や学群棟にいたと思われる人達が集まっていました。

避難中の15時15分頃には大きな余震がありました。立っているのが困難で座り込む人もいました。

避難して最も不安だったのは、この地震がどのような災害なのかということと、家族は元気かということでした。家族に携帯電話のメールを送ってもなかなかつながりませんでした。そのとき、知り合いの大学院生の人が持っているタブレット端末で、radikoでラジオのニュースを聴き、災害の様子がわかってきました。このとき、情報がいかに大切かということと、このような非常時には原始的な通信手段が最後まで生き残ることを、身をもって知りました。以来、携帯型ラジオをほぼ常に持ち歩いています。

その後、支援室の事務の方が池の前の「大気」の像のところにラジカセを置き、NHKのラジオのニュースを流し始めました。

そうしているうちに、数学以外の専攻では、どうやらスタッフが集まってミーティングが開かれているようでした。一方、数学の関係者は、先生方も学生の人達も、特に会議を開くこともなく、大気の像の周辺にとどまっていました。見たところ、皆さん無事の様子だったのは幸いでした。

私は岩手の出身で、小学校の頃から地震は日常茶飯事、学校の授業や日本海中部地震といった実際の地震などでも地震や津波の怖さを学んでいました。よって、ラジオのニュースを聴いた段階で、地震の大きさからして、きっと、津波など、大きな災害になるだろうと想像しましたが、そのうちに同僚の方が携帯電話のワンセグでニュースを見せてくれました。東北の太平洋岸に押し寄せる津波の映像に目を見張りました。その間にも松美池のほとりにはたくさんの人達がいました。

夕方4時を回り、そろそろ今日は解散ということになりました。学系棟も危険かもしれないので、グループで非常階段を上って建物に入りました。7階の数学域図書室の書庫を廊下から覗いたところ、書架には本がほとんど残っていませんでした。図書室の事務の方がオフィスにお財布を置いているというので、図書室のドアを開けたところ、カード目録を収めたラックがひっくり返っていました。やむを得ず、倒れたラックの上を歩いてお財布を取りに行きました。

それから、何人かの人達と自分のオフィスに向かいました。廊下は水浸しで、消火栓の扉が開いてホースが飛び出していました。後からわかりましたが、水浸しの理由は、消火栓ではなく、天井裏の水道管が切れたことによるものでした。

自分の仕事場に戻ってみると、もともと散らかってはいましたが(笑)、落ちた本で床が見えなくなっていました。その後、しばらくの間、復旧とリニューアル、耐震改修工事が最近まで続きます。

この後、いろいろなことがありました。震災直後にクラス担任として迎えた新入生も昨年春に卒業し、今では大学院生になった何人かの人達と交流が続いています。それから、入学時にその新入生を指導してくれたクラスリーダーの2人は、その後、私のところで東ロボで修士論文を書いてこの春卒業というのも、何かのご縁なのでしょう。これまでのことを記憶にとどめて、これから前へ進んでいきたいと思います。

2016-02-22

数学で世界に挑む(花巻市立若葉小学校 総合学習)

このたび、母校の小学校で講演を行いました。母校は今年創立50周年を迎え、これから秋にかけて記念行事が続きますが、その一環として、卒業を控えた6年生を対象にした総合学習の講演の一つとして行ったものです。今回、小学校のPTA会長で、小学校と中学校のときの同級生の伊藤達也さんのお招きで講演を行いました。

講演のタイトルは「数学で世界に挑む」というもので、私が専門にしている数学の話を中心に、前半では「世界に挑む」テーマの紹介、後半では「数学」の世界の紹介を行いました。

講演の前半の「世界に挑む」テーマでは、私が今年度、大学院生とともに参加した人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」の紹介を行い、プロジェクトの概要や、筑波チームの学生達の貢献、今後の課題などについて説明しました。

学生達の活躍の説明では、東ロボ君の活躍に貢献した学生がゲーム好きであること、しかし、彼を見ていて感心したこととして、ゲームに熱中するのと同じくらい数学やプログラミングにも熱中していたことを挙げ、生徒の皆さんにも、ゲームと同じくらい熱中できる何かを見つけてほしいことと、何かを自分で作ることに熱中できたら幸せ、ということを話しました。

模試の世界史の記述式の問題においては、現在の東ロボ君は教科書から関連のある文章を集めて組み立てているレベルで、答案の作文としてはまだ改善の余地があるそうですが、それでも、受験生の平均点は上回ったのだそうです。今回はこの事実に触れ、自分の頭で考えることが大切、ということを指摘しました。

講演の後半では、「数学」の世界の一例として「あみだくじ」を作る話題に触れました。「あみだくじ」は過去にも高校の講演で取り上げていますが、小学生相手の講演は初めてです。今回は、数学の理論は抜きにして、あみだくじをつくる手順を中心に説明しました。最初に、スタートとゴールを指定した上で、あみだくじを各自の手順で作ってもらいましたが、5分の制限時間で多くの生 徒さん達が正しいあみだくじを作ったことに驚きました。それから、あみだくじの作り方の手順を説明して作ってもらいましたが、生徒の皆さんはよく理解しているようで、全員が無事あみだくじを完成させたようでした。

最後に、私からのメッセージとして、広い視野を持ち、自分が夢中になれることを見つけてくださいということを述べ、講演を終えました。

今回、私を講演に呼んでくださった伊藤君は、地元の金属機械工作メーカーの社長さんとして生産と技術開発に取り組む一方、地元の産業を活性化させるべく、地元の若手経営者を率いて精力的に活動されています。今回は、将来を担う地元の後輩達のためにということでこのような話をさせていただき、大変嬉しく思います。これから中学校に進学し、未来にはばたく皆さんの活躍を願っております。

2016-02-05

微積分II(第14回)

今回はこの授業の最終回でしたが、重積分の変数変換の例題で、前回の授業で紹介しきれなかったものとして、極形式で表される曲線が囲む部分の面積の計算を取り上げました。その後、広義積分の例題として、積分領域が非有界の例と、与えられた積分領域で非積分関数が非有界の例を取り上げました。

以上で秋学期の授業時間が終わりましたが、曲面積の計算は残してしまいました。授業全体では基本的な計算を中心に解説したつもりですが、各自必要に応じて役立てていただければと思いますし、今後微積分を使わない人にも、数学の理論の組み立てや応用の一面を知っていただければと思います。今後の皆さんのご活躍をお祈りします。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/calculus2-2015

2016-01-29

微積分II(第13回)

今回は、前半で、重積分の変数変換の計算例について説明しました。代表的な変数変換として、極座標変換とアフィン変換による例題を説明しました。

後半では広義積分を導入しました。今回は理論的な部分で終わりましたので、次回に計算例を扱いたいと思います。この授業もあと1回です。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/calculus2-2015

2016-01-22

微積分II(第12回)

今回は、重積分の変数変換について説明しました。今日は主に理論的な部分で、変数変換の前後における微小領域の変化率を表すヤコビアンの導出を中心に説明しました。

次回は重積分の変数変換の例題を紹介したのち、広義積分に進みたいと思います。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/calculus2-2015

2016-01-08

微積分II(第11回)

今回は、累次積分について説明し、授業のおしまいの方で、重積分の基本的性質に触れました。今回の説明で、実際の重積分の計算が可能になると思います。

重積分の基本的性質のうち、一部は時間内に説明が終わりませんでしたので、それらについては次回の授業の際に説明したいと思います。次回授業では、その後、重積分の変数変換の話題に進みたいと思います。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/calculus2-2015