2010-04-30

数学特別講義I(第3回)

今回、第3回の授業は、増岡彰先生による「4色問題」でした。4色問題は、ご存知の方も多いと思いますが、次のような問題です(先生の講義概要より引用)。

地図上の国々を、国境を接する2国が異なる色になるように塗り分けるのに、できるだけ少ない色で済ませたい。3色では不十分なことはすぐに判るが、4色で十分か。
というものです。

4色問題については、コンピュータを使って解いたという話を聞いた程度でしたが、今回の授業では、それとは全く別に、結び目の代数的表現を用いる証明が紹介されました。

そのために、授業では、平面グラフを導入し、地図の塗り分けを、グラフの塗り分けに帰着させました。それから、あらかじめ用意したt色で、グラフの塗り分けが可能な異なる方法の個数(t点彩色数)を導入し、グラフの塗り分けの問題をt点彩色数の計算に帰着させて解く方法を紹介しました。そして、与えられたグラフから、ある方法で結び目を生成し、結び目のある代数的表現が、しかるべき性質を満たすことにより、4色に塗り分ける方法が必ず存在する、という証明の道筋が紹介されました。

結び目の話は、ちょうど、前回、石井さんの授業で扱っていたので、親しみ深いものでしたが、4色問題を解くのに結び目を使うというのは全く予想外だったので、驚きました。増岡先生の授業の進め方も丁寧で、各種の概念が段階を追って平易な形で導入されていたので、わかりやすかったと思いますし、議論の進め方も興味深いものでした。

2010-04-26

数理科学II(第2回)

うっかり確認を忘れていたのですが、先週は学生さん達の健康診断が当たっていたので、先週は休講とし、今日が2回目の授業になりました。

今回は、前回延期した、数式処理システムの紹介を行い、多項式演算に関する術語や基本的知識を説明しました。主係数, UFD, 原始的な多項式, など。

次回は、多項式の四則演算、主に除算を扱います。

2010-04-23

数学特別講義I(第2回)

今日は、数学特別講義の第2回の授業がありました。と書こうとして思い出したのですが、昨年に引き続き、今年度もこの授業を担当することになったのを書くのを忘れていました。

しかも、今年度は、授業の世話人を仰せつかった次第です。授業のまとめ役として、各週の講義を担当する先生にお願いをし、準備をしてきました。そして、1学期の授業の間、毎回、進行役を務めます。授業に関する情報は、世話人のwebページをまとめましたので興味のある方はご覧下さい。 http://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/topics1-2010

第1回の授業は先週で、行きがかり上、講義は自分が担当しました。内容は昨年の授業とほぼ一緒だったので、とりあえず昨年の内容を参照していただければよいでしょう。一応、今年の内容も公表する予定です(変わり映えしませんが)。それより、とりあえず、今日の授業を聴いていろいろとためになったので、印象に残ったことを書きたいと思います。

今回、第2回の授業は、石井敦先生による「結び目の数理」でした。内容は、位相幾何で研究対象となっている「結び目」や「組み紐」の性質を調べるのに、結び目の特徴を数学的な対象(群の元)に対応させ、それらに対する計算を行うという話でした。授業の中で、単に解説するだけでなく、実際に「どの結び目が等しいか?」という問題演習をしたり、行列の計算をしたり、組み紐を模した紙細工をひねったり、と、実践がいくつもあり、大変おもしろかったし、参考になりました。寝てる暇ないですね。いいことです。

石井さんは、普段は柔和な方で、同僚として気楽におつき合いさせていただいていますが、講義では凛として、学生に厳しい表情で臨んでいるのが印象的でした。学生に対するこのような接し方も、なるほどな〜と参考になりました。それにしても、授業中にDSで対戦?かどうか確認できなかったけど、とにかく、DSを出していて取り上げられた学生がいたというのは残念。筑波で授業をしていて、こういう事に出くわしたのは初めてだったので。

そして、印象に残ったのが、授業の後半、学生に対するメッセージ。

「大学で学ぶことは役に立たない」なんて言う人間になるな!

曰く(ここから先は、石井さんの言葉のによる記憶(意訳含む)ですから、内容に誤りがあったら私の責任です。)
大学で学んだ計算法や手順が、社会に出てからすぐに役に立たない。これは、ある意味、当たり前です。本当に大切なのは、大学で学んだことを使って、これまで、誰も考えたことがないようなものを生み出すことです。例えば(これから線形代数の授業で行列を習うと思いますが)Googleのweb検索技術、あそこには、行列の計算が使われているということです。これを最初に考えた人はすごいと思います。皆さんが、大学で学んだことから、これまで誰も考えたことのないような新しいアイデアを作り出すようなチャレンジをされることを期待しています。
自分も大学1年生のときにこんな授業を受けてみたかった、そんな授業でしたし、今後、自分が同様の授業をする際にも、もっといろいろ工夫してみたいと思いました。

2010-04-22

新入生歓迎会

暖かくなったと思うとまた冬に逆戻り?と思ってしまう今日この頃ですが、今日は大学院の新入生歓迎会がありました。

毎回、初々しい新入生の人達の前途を祝う気持ちになりますが、今回は、教員になって初めて、新入生に自分と同じ高校出身の人に会い、思わず感激しました。

彼は、最初見た時から、落ち着いてるな〜と目に留まりましたが、高校で応援団だったと聞き「なるほど・・・」と納得でした。母校の話題でもいろいろ盛り上がりましたが、昨夏の高校野球の県大会決勝にも駆けつけたとのこと。さすが。(ちなみにこの決勝戦は、あの花巻東にうちの母校が当たった試合で、花巻が地元の私としては、地元も気になるけど母校も気になる、という組み合わせでした。)

そんなわけで、今日はまた格別な歓迎会でありました。新入生の皆さんの活躍を祈ります。

2010-04-21

研究科の新しいパンフレット

このほど、私が所属する研究科の新しいパンフレットが出来上がり、手元に届きました。

今年のパンフレットも、昨年までと構成自体はほとんど変わりませんが、一番の変更点は、教員の顔写真が載ったことです。

こちらが昨年のパンフレットで、

こちらが今年のパンフレットです。(どちらの写真も「研究分野と教員」の節から、数学専攻の最初のページです。)

これは、研究科の「見える化」プロジェクトとか言っていましたが、正月明けに、写真屋さんが学校に来て撮影を行いました。カメラマンは若い男性の方でしたが、スマイルを引き出すのがうまく、春先に見た校正刷りでも、皆さんのにこやかな表情が印象的でした。

今回の顔写真掲載の主目的は対外的なものだと思いますが、こうしてパンフレットを見ていますと、エレベータでよく顔を見る方の名前や仕事がわかったりして、案外ためになります。同じ研究科とは言っても、自分の所属する専攻の外はほとんど別世界とも思えるくらいなので、今回の顔写真掲載は、意外と対内的にも効果があるのかも、と思いました。

今のところ、パンフレットをオンラインで入手できるかどうかはわかりませんが、とりあえず研究科のwebサイトは http://www.pas.tsukuba.ac.jp/ です。

2010-04-12

数理科学II(第1回)

今日から新年度の授業が始まりました。

今日は大学院の講義です。昨年度に引き続き「数理科学II」を担当することになりました。内容は、計算代数(数式処理)の入門です。今年度は、履修者が比較的多いと思われる概論の授業と重なるのを避けて、授業時間をずらしたのですが、集まった人は4人。そのうち1人は昨年この授業を履修してくれたM2の人なので、実質3人ということになります。昨年度よりも人数が減りましたが、授業内容の調整はやりやすいかもしれません。

今日のところは、授業で扱う内容や、前提とする知識、成績評価など、ガイダンスの部分を、昨年よりも丁寧に説明したつもりです。その後、計算代数と数値計算の比較などについて説明しました。最後に、参考書の紹介をしました。本当はその前に数式処理システムの紹介をしようと思っていたのですが、参考書の紹介と両方やると時間内に終わらないこと、参考書は実際に本を持参したので、次回も本を持参するのは重いことから、数式処理システムの紹介は次回に回しました。

なお、授業後に、学生さんと健康診断の日程を確認したところ、数理物質科学研究科は来週4月19日(月)の午後ということですので、来週のこの授業は休講にし、次回の授業は再来週4月26日になります。

最後に、研究科のwebサイトに掲載したシラバスを載せます。

数学専攻 数理科学 II(筑波大学数理物質科学研究科)
http://www.pas.tsukuba.ac.jp/syllabus/display.php?major=1&NO=22

授業概要
計算代数の基礎的理論である、多項式環上の最大公約子(GCD)、因数分解、グレブナー基底の理論と、数式‐数値融合計算の話題について講義する。

キーワード
数式処理、計算代数、最大公約子、多項式剰余列、部分終結式、因数分解、Hensel構成、グレブナー基底、数式‐数値融合計算

授業計画

  1. 基本的事項
  2. 多項式の最大公約子(GCD)
  3. 多項式の因数分解
  4. 多項式環上のグレブナー基底の理論
  5. グレブナー基底の応用
  6. 数式‐数値融合計算の話題から