2013-12-09

計算機演習(第9回)

今回は、前回第8回のレポートの締切日でしたが、自由参加のオフィスアワーとし、必要に応じて質問を受けつけたりする時間としました。

全体では、目視で20人前後の参加者がいたと思いますが、それぞれがレポートに取り組んでいるようでした。レポート課題について、TAの人に質問したり、友達と話し合ったりしていた人もいたようです。私自身も、普段よりも余裕を持って学生の人達と会話ができた気がします。

さて、今年の授業を振り返っての私の感想ですが、今年の授業で昨年までの授業と変わったと思った点は、学生達どうし、もしくは学生と指導する私達との授業外での授業に関するオンラインでのやりとりが増えた点です。

特に Twitter については、学生が授業に関する内容をつぶやくということは、昨年までの授業では、少なくとも私が確認した範囲ではほとんどありませんでした。しかし、今年は、多くの人達がつぶやきで授業に言及していたようで、中には私が返信して質問に答えたり、学生の疑問点を解決したりという機会もありました。

授業の e-ラーニングシステムでも、昨年までは授業時間外の質問や連絡がほとんどありませんでしたが、今年は質問や連絡にも使われる機会が出てきました。こうしたコミュニケーションのとり方は、来年以降の授業の上で参考になりそうです。

来年度は、授業時間割、授業のカリキュラム、e-ラーニングシステムが変わり、またいろいろ変化があることと思いますが、履修者の人達が受講してためになるような授業になるよう、来年度も取り組みたいと思います。

2013-12-02

計算機演習(第8回)

今回は授業の最終回となりましたが、Mathematica のプログラミングによるフラクタル図形の描画を行いました。

以上、これでこの授業も終わりですが、来春に開講される「計算機数学I」の講義では、代数計算を中心に、実際の計算を視野に入れた数学の紹介が行われますので、興味がある人はぜひ受講されることをおすすめします。

それから、来年度からは、計算機演習も、2学期制に対応したカリキュラムに移行します。これまでは、3学期制の1学期間に相当する2モジュールの開講でしたが、来年度からは春学期ABCモジュールの半期の開講になります。これに伴い、授業時間数が増えますので、これまでのMathematicaに加え、プログラミング言語の授業が入る予定です。

というわけで、約2か月間のおつき合いでしたがありがとうございました。来週は、今日出題のレポート課題の締切日ですので、質問のためのオフィスアワーとし、担当教員とTAはサテライトで待機しています。

2013-11-25

計算機演習(第7回)

今回は「金融計算」ということで、四捨五入、単利と複利の計算や、元利均等返済などの概念を、年金やクレジットカードの分割払いなどの題材を通して扱いました。

レポート課題では、貨幣の「現在価値」の概念に慣れるまでが大変かもしれませんが、ぜひ頑張って取り組んでもらいたいと思います。

早いもので次回はこの授業の最終回ですが、フラクタル図形の描画を取り上げます。

2013-11-18

計算機演習(第6回)

今回は、Mathematica によるプログラミングの初歩として「ルールベースドプログラミング」すなわち再帰的な漸化式やルールを用いた関数定義によるプログラミングを扱いました。

レポート課題では関数の微分を行う課題を出しましたが、苦戦している人も見受けられました。ぜひ完成できるよう頑張ってほしいと思います。

次回は金融計算の話題を扱います。

2013-11-11

計算機演習(第5回)

今回は、微積分の2回目ということで、不定積分や定積分の計算、微分方程式の解法の話題を扱いました。

それから、後半では、リストの要素の様々な扱い方に触れましたが、これは、レポート課題で扱っている数値積分の計算に関連するものです。台形公式については、初めて学ぶ人もいるかもしれませんが、よく理解した上で計算に取り組んでもらいたいと思います。

次回は初歩のプログラミングの話題を扱います。

2013-11-06

計算機演習(第4回)

今回の授業は、微積分の1回目として、関数の定義、極限値の計算、導関数の計算、Taylor 展開の話題を扱いました。

次回は、微積分の2回目の話題を扱います。

今回の授業は水曜日に行われましたが、レポート提出の締切は通常通り来週の月曜日(11日)となります。普段より少々時間が短いですが、頑張って仕上げてもらいたいと思います。

2013-10-28

計算機演習(第3回)

今回の授業では、Mathematica における「リスト」を紹介し、リストを用いた、線形代数の行列やベクトルの計算を中心に紹介しました。線形代数では、固有値と固有ベクトルを用いた行列の n 乗の計算を取り上げました。

次回は微積分の計算を行う予定です。

2013-10-21

計算機演習(第2回)

今日は第2回の授業ということで、Mathematicaへの入門的な内容ですが、第1回より進んだ内容でした。題材は、連立方程式、グラフィクス、アニメーションなどでました。

アニメーションでは、空間の直線、曲線や曲面のパラメータ表示に対し、さらに時間に依存する変数を加えることによって図形を描画します。空間図形の数式による表現で苦労している人もいたようですが、こうした考察が数学的な思考力を鍛えることにもつながると思いますので、頑張ってほしいと思います。

次回は線形代数に関するテーマを扱います。

2013-10-18

研究集会「数式処理研究と産学連携の新たな発展」のレクチャーノートがオンラインで読めます

先日、 附属図書館に入れていただいた、研究集会「数式処理研究と産学連携の新たな発展」のレクチャーノートの電子版 (PDF) が、このほど、九州大学 マス・フォア・インダストリ研究拠点の web サイトに掲載されました。ぜひご利用ください。

http://gcoe-mi.jp/publish_list/pub_inner/id:2/cid:21

全文公開にご協力下さった著者の皆様、ならびに電子版の作成にご協力下さった九州大学マス・フォア・インダストリ研究所に御礼申し上げます。

2013-10-17

計算機演習(第1回)

今日から、実質的な授業が始まりました。今日は、e-learning システムの使い方と Mathematica の基本的な使い方について一通り説明した後で、第1回の教材に取り組んでもらいました。

昨年の授業の際、今年は全学計算機システムが入れ替わって「たぶん Windows 7 が入るでしょう」という予想を書きましたが、果たしてその通りになりました。今年から稼働している新しいシステムは、Windows の起動に非常に時間がかかるとの評判ですが(そして Mathematica の起動にも案外時間がかかるようです)、4月の導入以来、地道に改善の努力は続けているそうですので、今後の改善に期待したいと思います。

今日は木曜日ですが月曜授業の日で、今日出題の第1回レポート課題の締切は来週10月21日(月)です。通常より締切までの期間が若干短いですが、今回は初回で課題の量や難易度は若干控えめにしているつもりですので、各自頑張って取り組んでほしいと思います。

次回はMathematicaによるグラフィックスやアニメーションなどの話題を取り上げる予定です。

2013-10-07

計算機演習(第0回)

今年も、数学類の授業科目「計算機演習」を担当することになりました。内容は主に数式処理システム Mathematica の体験と実習です。

昨年度までと変わった点は、授業時間の変更です。昨年は火曜日でしたが、今年は2学期制移行による時間割の変更で、月曜日になりました。ただし、数学類では、昨年の新入生(=今年の2年生)までは、昨年度までの3学期制のカリキュラムが適用されるので、授業期間は3学期制の1学期間に相当する、秋学期のA, Bモジュール(10月から12月中旬まで)となります。

もう一つ、私にとって新しかったのは、今度の数学類の2年生の人達と授業で顔を合わせるのは初めての機会だということです。これまでは、何かの授業で、少なくとも一部の人達とは1年生の頃から顔を合わせていましたが、今回は初顔合わせです。これからよろしくお願いします。逆に、数学類以外で昨年度授業を受け持ったクラスの人達とは、久々の再会です。こちらもよろしくお願いします。

今日は、ガイダンスということで、Mathematica の紹介や、単位のとり方などの説明を行いました。実際の授業は、来週から、サテライト端末を使って行います。なお、今日の欠席者で、授業後に連絡を下さった人達には、これから個別に連絡します。

2013-10-03

卒業予備研究 (2014) 募集開始

今年も卒業予備研究の募集をする時期になりました。私は、今年度に引き続き、今年度の卒業予備研究と、来年度の卒業研究を担当することになりました。

私の担当する内容ですが、だいたいは昨年と同じです。今年、これまでの卒業研究を経験して、昨年から追加や変更をした点は次の通りです。

  • 卒業研究のテーマについては、今年度のチームの皆さんが、多項式の因数分解を中心に取り組んでいますので、来年度は当初予定のテーマから外しました。(学生の人達がこのテーマを希望すれば取り上げる可能性はありますが、ひとまず私が最初に用意する手札には含めない、ということです。)それに代わり、今回は量限子消去 (Quantifier Elimination) の話題を含めました。
  • プログラム言語 Java の学習については、今年、共通科目「情報」で開講された Java の授業を受講したので、来年も、スケジュールが合えば、その路線でいこうと思います。

私が担当する内容については以上ですが、今回はもう一つ、クラス担任として、卒業(予備)研究全体をとりまとめる仕事もあります。

卒業研究は、学生が担当教員から1人の先生を選び、その先生のもとで勉強するわけですが、その所属(配属)は以下の手順を経て決められます。

  1. 学生が各先生を訪問したりして、所属を希望する先生を選ぶ
  2. 所属希望調査を行い、第一希望と第二希望を提出(記入)
  3. 希望者が多いところは人数調整
  4. 全員の所属先を決定

こうした所属先の決定をとりまとめるのがクラス担任の仕事です。というわけで、今日は、卒業予備研究のためのガイダンスを開きました。ガイダンスでは、卒業予備研究と卒業研究の制度や所属の決め方について説明します。配布資料には、あらかじめ担当の先生方に書いてもらったシラバスを書いてもらって集め、資料としてまとめます。こうしたシラバスの執筆依頼や資料の編集もクラス担任の仕事です。

そんなわけで、今日の午後に行われた説明会も無事終わり、今年の3年生の卒業予備研究に向けた準備が始まりました。書くのが遅れましたが、今年から2学期制になったため、これまで3学期に行われていた卒業予備研究は、秋学期のB, Cモジュール(11月頭〜1月末)に行われます。所属希望調査の方は今月中に行われ、今月末には決まる予定です。

最後に、昨年同様、卒業研究のシラバスと案内書を作りましたので、リンクを載せておきます。

2013〜2014年度 卒業予備研究・卒業研究 シラバス http://goo.gl/zblWKY
2013〜2014年度 卒業研究案内 http://goo.gl/IizCt6

2013-10-01

研究集会「数式処理研究と産学連携の新たな発展」のレクチャーノートが附属図書館 web サイトにて紹介されました

去る8月に開催した研究集会「数式処理研究と産学連携の新たな発展」では、研究発表をまとめた予稿集を、九州大学よりレクチャーノートとして出版していただきました。

このたび、レクチャーノートを筑波大学附属図書館に寄贈し、附属図書館の学生向け web サイト「週5図書館生活、どうですか?」にて、教員の著作として紹介していただきました。その際に寄せましたコメントを転載します(元記事へのリンクは末尾をご覧下さい)。

【本の情報】

『数式処理研究と産学連携の新たな発展 : マス・フォア・インダストリ研究所共同利用研究集会II (COE lecture note : Kyushu University:v. 49. MI lecture note series)』. 九州大学マス・フォア・インダストリ研究所/九州大学大学院数理学研究院[グローバルCOEプログラム「マス・フォア・インダストリ教育研究拠点」] , 2013.8【分類418-Te76】

【コメント】

本書は、2013年8月21日から23日にかけて、九州大学伊都キャンパスで開催された研究集会「数式処理研究と産学連携の新たな発展」(https://sites.google.com/site/imidcar2013/) での研究発表をまとめた予稿集です。

「数式処理」は「数値計算」に比べてまだなじみが薄く、ご存知でない方もいらっしゃるかもしれません。「数値計算」が計算機で数値からなるデータを扱うのに対し、「数式処理」は、多項式や方程式といった「式」を直接計算機で扱います。本学の全学計算機システム(サテライト端末)にも「Mathematica」をはじめとする数式処理システムがいくつか入っていますので、興味がある人は使ってみてください。

さて、数式処理は、この30年くらいで大きな理論的発展を遂げ、応用も徐々に広まっていますが、欧米などに比べると、日本での産業界への浸透はまだ遅れていると思われます。そこで、この研究集会は、国内における数式処理の産業への応用や産学連携の促進を目的として開催しました。

研究集会では、海外や国内で数式処理の産業への応用を先んじて行っている方々を招き、それらの事例についてお話しいただきました。それから、国内の(若手の人達を中心とする)数式処理の研究者による研究成果を紹介してもらうとともに、数式処理を活用している、もしくは活用したいと思っているような応用分野の方々との情報交換を行いました。

本書では、招待講演2件、一般講演16件を収録しており、招待講演では数式処理の医療技術や自動車産業への応用、一般講演では、おそらく世界初となる17次の判別式の計算から、ルービックキューブや数独パズルの解析まで、数式処理の理論や応用の多岐にわたるテーマをカバーしています。

皆さんにも、本書で、数式処理の応用に向けた日本発の取り組みについて知っていただければ幸いです。さらに興味を持った人は、ぜひ一緒に数式処理のおもしろさを学び、新たな応用の世界を探求してみましょう!

レクチャーノートは、中央図書館に収蔵され、貸出可能になっていますので、ぜひご覧下さい。私の手元にも、数部残部がありますので、興味がある方はご連絡ください。

教員著作紹介コメント(照井章先生) http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/w5lib/?p=3364
週5図書館生活、どうですか? | 筑波大生のための図書館Webサイト http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/w5lib/

2013-09-17

卒業研究 (2013) 夏休み集中セミナー

今年度から、本学の学年歴が、それまでの3学期制から2学期制に変わりました。それに伴い、夏休みも、昨年まで7月と8月だったのが、今年から1か月繰り下がって8月と9月になりました。現在は、夏休みもあと半月弱を残すところです。

今年度の卒業研究のセミナーは、夏休み後半の9月に集中セミナーを入れました。今日も朝からセミナーでしたが、昨日は私の誕生日でした。私としては、誕生日は昨日の事と思っていましたが、チームの学生の皆さんがお祝いして下さいました。ありがとう!おかげさまで、今日は朝からおいしいスイーツをいただいてからのセミナーとなりました。(今回のようにケーキが出るのは稀ですが、普段からセミナーにはコーヒーとお茶菓子を常備しています。)

さて、夏休み中のセミナーは、9月の毎週火曜日、午前中と午後に入れています。午前中は10時から、計算代数の中から、多項式の因数分解のアルゴリズムを学んでいます。午後は、春学期から学んできたプログラミング言語 Java の勉強で、こちらは各自が机を合わせて(というか、大きなテーブルにまとまって)それぞれのペースで学びながら、互いに教えあったりする形をとっています。

Java の実習に使う計算機環境も、皆さんそれぞれです。基本的には、昨冬から使っている Ubuntu (Linux) を使っていますが、昨冬の卒業予備研究で作成した USB メモリから起動する Ubuntu を使う他、仮想化ソフトウェア VMWare で仮想マシンを作成し、そこに自力で Ubuntu をインストールして使っている人もいます。Java の開発環境は Eclipse を使っています(春学期に受けた共通科目「情報」から継続して使っています)。

各種ソフトウェアのインストールや設定は、昨冬の卒業予備研究の時は最初の機会でしたので、私が詳細なドキュメントを作って説明しながら進めましたが、現在は、学生間で教えあったりしながら、各自がほぼ自力で進めています。私が登場するのは、通常の作業手順にないトラブルなどが発生したときです。

午前と午後のセミナーの合間には、一同でランチに出かけます。先々週は焼肉店、先週は中華料理、今日はインドのカレー屋さんと、みんなでいろいろな味を食するのも楽しみの一つです。

午後のセミナーは午後4時過ぎにお開きになりますが、その後も、秋の大学院入試を受ける人が夕方まで院試対策に勤しんだり、皆さんそれぞれ頑張っているようです。

夏休みのセミナーはあと来週の1回を残すのみとなりました。休みが明けるとだんだん卒業研究モードになっていくと思いますが、卒業研究に向けて、数学と Java の基礎知識の仕上げに努めたいと思います。あと、来週にはチームでの飲み会も予定しています。これまで、計算機数学グループの懇親会はありましたが、チームの飲み会は、なかなか機会がありませんでしたので、今回が初めてです。こちらの方も楽しみにしながら、セミナーを頑張りたいと思います。

2013-09-09

筑波大学数学教室の YouTube チャンネル「つくば数学チャンネル」を開設しました

タイトルにあります「数学教室」は、正確には学部組織の「理工学群 数学類」、大学院の「数理物質科学研究科 数学専攻」、そして教員組織の「数理物質系 数学域」に分かれていますが、筑波大学の数学の組織から情報を発信するための YouTube チャンネルを開設しました。

つくば数学チャンネル (Tsukuba Math Cannel)
http://www.youtube.com/user/tsukubamath/
筑波大学 数理物質科学研究科数学専攻
数学専攻トピックス:数学専攻 オープンキャンパス(大学院説明会)の講演録画を公開(2013年9月9日)
http://nc.math.tsukuba.ac.jp/jotc36kfy-195/#_195

今回、開設のきっかけになったのは、大学院のオープンキャンパス(説明会)の模様の紹介です。

オープンキャンパスの際に行われる数学専攻説明会では、数学専攻の概要と、各研究分野の紹介を行っています。数学専攻の概要説明では、数学専攻の教育目標、カリキュラム、施設、進路状況などを紹介しています。各研究分野の紹介では、各分野の特徴や、指導教員の研究内容を紹介しています。
(上記記事より)

大学院への進学を目指す人にとっては、大学院の様子や教育・研究内容について、このように詳しく知ることのできる機会は貴重ではないかと思います(ついでに、オープンキャンパスの際は、上記の説明会の後に、大学院生の人達との懇談会もあり、そちらも大学院の内情を知る上でよい機会ではないかと思います)。それから、分野紹介では、各分野の教員と専門分野が一通り紹介されるので、筑波の数学でどのような研究が行われているか、どのような分野の数学を学ぶことができるかを知る上で、一般の人にとっても有益な情報ではないかと思います。

今回の動画公開にあたっては、私が、講演者の先生方と(私自身も昨年の情報数学・数理科学分野の紹介を行い、今回の録画の公開に加えましたが)、数学専攻学務委員(大学院の教務主任)の先生の協力を得て、準備を進めてきました。専攻内には、こうした形の情報公開についていろいろな意見があるので、今回は、オープンキャンパスに限っての動画公開が数学専攻で承認されました。今後も、当面の間、動画公開にあたっては、案件毎に承認を得て進めることになると思いますが、これからも、新しい形での情報発信の可能性を探りたいと思います。

2013-08-29

研究集会「数式処理研究と産学連携の新たな発展」

先週になりますが、8月21日から23日にかけて、研究集会「数式処理研究と産学連携の新たな発展」が、九州大学伊都キャンパスにて開催されました。

この研究集会は、もともと、京都大学数理解析研究所にて、RIMS共同研究「数式処理研究の新たな発展」として、例年7月に行われているものです。今回は、九州大学マス・フォア・インダストリ研究所 (IMI) の共同利用研究の一つとして、九州大学で行われました。

RIMSの場合もそうですが、「共同利用研究」とは、研究所が数学のいろいろな分野(IMI は特に産業と結びつくような数学に重点を置いています)の研究の発展を支援することを目的として、「研究集会」や「短期共同研究(数人程度の研究者が集中的に議論をすること)」の提案を募り、選定された事業(研究集会やセミナー)に対して、場所や資金の援助をするものです。IMI の共同利用研究の場合は、開催場所の提供、講演者への旅費の援助、レクチャーノート(予稿集)の出版といった援助を受けられます。

今年は、諸事情により、私が研究代表者を仰せつかり、年始に研究集会の応募を行いました。そして、幸いにも春先に採択され、これまで準備を進めてきました。

IMI の研究集会は、産学連携を推進する立場から、「組織委員会の委員と講演者とには,それぞれ産業界からの参加を必須と」することと、「国際化の推進のため,招待講演者として外国人を1名以上含めること」という条件がありました。日本においては、数式処理は数値計算に比べると一般的に認知度が低く、産業界で数式処理が使われるというのはまだ少ないと見ています。そこで「数式処理の理論を産業に応用しようという先進例」と「現場のエンジニアの方が積極的に数式処理を使おうという試み」という立場から、第一人者の方々を招いてお話してもらうことにしました。

「数式処理の理論を産業に応用しようという先進例」では、Wen-Shin Lee さん(ベルギー・アントワープ大学)に「関数補間の信号処理への応用」という内容でお話いただきました。「関数補間」は、いくつかの測定データから、もとの関数を求めるという計算です。Wen-Shin さんらの研究グループが行っているのは、これを医療などの信号処理に役立てようというものです。医療現場では、脳波など、いろいろな生理学的な測定データからなる信号が作られ、それらが人体に取り付けられたセンサから測定機に送られます。最近は無線で信号を伝えることも多いですが、測定データがたくさんあると、それだけ信号の伝送にも時間がかかり、機器の消費電力もかさみます。そこで、測定データを適切な関数で表すことで、信号の伝送量を節約し、電気も節約しようというのです。

これは、日本の数式処理屋にとってはいくつもの点で驚きです。まず、医学の分野で数式処理が応用されるというのは、少なくとも日本ではこれまで聞いたことがありません。次に、信号処理への応用も、日本ではまだあまりなじみがありません。すでにやられている方もいるかもしれませんが、少なくとも日本の数式処理の研究者の間ではほとんど知られていないと思います。こういう点から、数式処理の産業への応用例として、非常に参考になりました。

「現場のエンジニアの方が積極的に数式処理を使おうという試み」では、伊藤久弘さん(トヨタ自動車)に「数式処理のエンジン制御系設計への活用に関する課題と期待」という内容でお話をいただきました。現場のエンジニアにとっては、数式(文字を含む式)を直接扱うことのできるソフトウェアが役に立つこと、燃焼の化学反応などは、ある時間を固定すれば最適な設計パラメータが得られるが、これを時間の推移とともに次々に求めるにはまだまだ現在の計算法やソフトウェアの技術は不足であること、これらの問題を解決するために、今後の数式処理の理論やソフトウェアの発展に期待が集まっていることなどが話されました。数式処理を実際に使う立場からの要望として、非常に参考になったと思います。

研究集会では、これらの招待講演のほかに、16件の一般講演も行われました。内容も、数学への応用から、数独やルービック・キューブの話題まで、多岐にわたり、質疑応答も活発に行われました。

この研究集会は、例年、比較的小規模に行われていますが、今回は、最大で35人程度の人達が集まり、活況を呈していました。参加された皆様に御礼申し上げます。今後も、数式処理の活用の場がより広がるよう、活動を続けたいと思います。なお、予稿集は、九州大学より「MIレクチャーノート」の1冊として刊行され、今後、オンラインでも公開される予定です。

2013-08-07

研究集会「数式処理研究と産学連携の新たな発展」開催と参加のご案内

以前、お知らせした研究集会ですが、いよいよあと2週間程で開くことになりました。

下記の通りお知らせいたします。つきましては、皆様ふるってご参加下さいますようご案内申し上げますとともに、関係各位に広くお知らせいただければ幸いです。


九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所 共同利用研究集会

数式処理研究と産学連携の新たな発展

https://sites.google.com/site/imidcar2013/
2013年8月21日(水)~23日(金)
九州大学伊都キャンパス センター2号館 2310室(福岡市西区元岡744)


研究集会のあらまし

本研究集会は、これまで毎年夏に京都大学数理解析研究所にて開催されてきた RIMS 共同研究「数式処理研究の新たな発展」のシリーズの一つですが、今年は、九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所 (IMI) の共同利用研究として、数式処理研究の産学連携や産業界への応用を特に視野に入れて開催します。

今回は、数式処理の産業への応用研究や、産業界における数式処理システムの活用事例と数式処理への期待と課題などについて、海外および国内の招待講演者によるチュートリアルセッションを企画しています。

一般講演の方は、制御系設計といった数式処理の産業への応用をはじめとして、数学における数式処理の利用、ソフトウェア、教育など、数式処理の理論、実装、応用に関するさまざまな取り組みに関する研究発表が予定されています。

参加申し込み

参加費、事前参加申し込みは不要で、どなたでも参加できます。

プログラム

プログラムは、研究集会 web サイトに日本語版、英語版のPDFファイルを置いてありますので、ご利用ください。
https://sites.google.com/site/imidcar2013/program

「情報交換」のセッションについて

研究集会2日目、8月22日の最後に「情報交換」のセッションがあります。 これは、数式処理や計算代数に関連した研究会等の開催に関する情報提供やアナウンスを行うものです。

アナウンス時間は、原則として1件につき数分(~5分程度)とさせていただき、内容に関しては、大学の研究集会であることから、原則として非営利目的のものに限らせていただきますので、ご了承ください。(ご不明な点がございましたらご相談ください。)

アナウンスには講演同様プロジェクタを利用できます。チラシも(通常ですと)会場内に置くスペースがあると思います。

もし、このセッションでの宣伝等をご希望の場合は、簡単な内容を添えて、組織委員連絡先 dcar2013 at math.tsukuba.ac.jp までご連絡下さい。

もちろん当日飛び入りでもかまいませんが、もしあらかじめアナウンスを予定されている場合はご連絡いただければ、当方の段取りの上で助かります。

懇親会の開催について

以下の要領で、懇親会の開催を予定しています。

  • 日時:8月22日(木)(第2日目)日程終了後(上記の「情報交換」セッションの後)
  • 場所:天神地区周辺

つきましては、参加予定の方は、8月16日(金)までに、組織委員の横山俊一(連絡先はホームページを参照)までご連絡いただければ幸いです。(当日参加も可能です)

その他、何かございましたら、組織委員連絡先 dcar2013 at math.tsukuba.ac.jp までご連絡下さい。

以上、よろしくお願いいたします。

照井 章(研究代表者; 筑波大学)

2013-07-31

数理科学IIA(第15回)

今回は、この授業の最終回でしたが、前回までに証明した「部分終結式の基本定理」を踏まえ、(拡張)Euclid 互除法による多項式剰余列計算の際に起こり得る係数膨張を抑える方法の一つとして、Collins (1967) による「縮小 PRS 算法」を紹介しました。

  • George E. Collins. Subresultants and Reduced Polynomial Remainder Sequences. Journal of the ACM, Volume 14, Issue 1, 128-142, 1967. doi: 10.1145/321371.321381

縮小 PRS 算法による係数膨張の抑制の仕組みを説明した上で、数式処理システム Mathematica を用いて例題を計算し、擬剰余による PRS と縮小 PRS での係数膨張の程度を比較しました。

以上でこの授業を一通り終えました。この授業では、計算代数の基礎を取り上げ、多項式演算、アルゴリズム、計算量といった、現実の計算を考慮する上で必要な概念を説明しました。今後も皆さんの学習に役立てていただければ嬉しく思います。

なお、今回、本授業最後となるレポート課題を出題しました。それから、今回のレポート課題には、今日の授業の内容が必要ですが、今日は学会参加等で授業を欠席している人もいましたので、今回のレポート課題と授業資料を PDF ファイルにして配布します。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/ms2a-2013

2013-07-30

線形代数I(第28回)

今回は、この授業の最終回になりましたが、前々回の授業で証明を説明しきれなかった部分(線形写像の核が部分空間をなす、等)の説明と、線形写像の像と核を計算する例題を説明し、この授業を終えました。

最後に、この授業を終えるにあたってのコメントですが、普段、授業でこういった話をすると、しばしば話にまとまりがなくなるものですが、今回、珍しく、授業の最後にまとまった話ができましたので、抜粋して引用します。(録画では 49分00秒 頃からです。)

これで、春学期の線形代数Iの範囲は一通り終わりました。分量の割に時間の制約もあったりして、本来説明したいと思うこと全部は説明できませんでしたが、この授業で説明したいと思った内容は、講義ノートの方に書きましたので、今後も必要に応じて参照していただければと思います。

この授業で、線形代数の基本的な事項を説明すると同時に、数学において、どのように問題を解くかや、どのような道具立てで現代の数学が成り立っているか、といった基本的な部分について(説明したつもりですので)、少しでも皆さんに知っていただければ嬉しく思います。

今後、皆さんが数学に触れる機会は、人によってはもうほとんどないかもしれませんし、人によってはまだあるかもしれませんが、線形代数は、微積分と並んで、現代の科学技術が発展した社会において、どこでも使われている道具(の一つ)ですので、皆さんがこれから社会に出たり勉強を続けたりする中で、また(線形代数が)必要になりましたら、線形代数の教科書やノートを広げてほしいと思います。

この講義も一通りビデオ収録しまして、(今後)何事もなければ、収録した録画もずっと(今のまま)置いているつもりですので、また(線形代数を)復習したくなったり、あるいは照井の話を聞いてみたいと... ないかもしれませんが(笑)... 思った時には、戻ってきていただければありがたいと思います。

ということで、皆さん、これから大学生活が続くと思いますが、ますますのご活躍を祈りまして、それから(今度の)試験の成功も祈りまして、この授業を終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/la1-2013

2013-07-26

線形代数I(第27回)

今回は「線形結合と部分空間」ということで、いくつか(とりあえずここでは有限個)の数ベクトルの線形結合全体のなす集合が、もとの数ベクトル空間の部分ベクトル空間をなすこと、2つの数ベクトル空間 A, B と、A から B への線形写像 f が与えられたときに、A のすべての基本ベクトルを f で移したベクトル達が、f の像空間 Im f を生成するという事実(定理)を説明しました(証明つき)。それから、付録として、数ベクトル空間の基底と次元について説明しました。

次回は最終回ですが、前回の授業で時間が足りなくなって説明できなかった、定理の証明の一部と例題を説明したいと思います。

なお、本授業の期末試験は、来週8月2日(金)に実施します。要項は授業のサポートページに書きましたので、履修者はよく確認してください。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/la1-2013

2013-07-23

線形代数I(第26回)

今回は、まず前回の線形写像に関する例題を解説した後、線形代数の像と核の定義を説明しました。 その後、像と核が部分空間をなすという性質の証明を始めましたが、時間が足りなかったので、像の部分の証明で終わりました。

次回までに第5章を一通り終える予定のため、次回は次節の「ベクトルで張られる部分空間」について説明し、本節の証明などで説明が残った部分は、次回と次次回の授業で、時間が許す限り取り上げる予定です。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/la1-2013

2013-07-19

線形代数I(第25回)

今回は、線形写像と行列について学びました。具体的には

  • (m, n) 行列が数ベクトル空間 Kn から Km への線形写像を与えること
  • Kn から Km への線形写像は n 個の基本ベクトルがどう移されるかを決めることで与えられること
  • Kn から Km への線形写像を、ある (m, n) 行列で表せること
について学びました。

次回は、線形写像の像と核と呼ばれる部分集合(部分空間)について学びます。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/la1-2013

2013-07-17

数理科学IIA(第14回)

今回は、前回残った「補題2」の証明を終えた後、「部分終結式の基本定理」の証明を一通り終えました。

来週7月24日(水)は月曜日の授業のため、この授業はありません。再来週7月31日(水)がこの授業の最終回となります。次回は、部分終結式の基本定理を用いて、多項式剰余列を計算する際に起こり得る係数膨張を防ぐ工夫について説明する予定です。

2013-07-16

線形代数I(第24回)

今回は、まず、第4章「行列式の発展」の締めくくりとして、固有ベクトルの定義と「クラメールの公式」を説明しました。

それから第5章「数ベクトル空間と線形写像」に入りました。教科書では、線形写像の説明から初めていますが、今回は、その前段階として、数ベクトル空間の定義や、部分空間の定義を説明しました。

次回からは、教科書の内容に沿って、線形写像から説明する予定です。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/la1-2013

2013-07-12

線形代数I(第23回)

今回は、第4章「行列式の発展」から

  • 多項式の定義、多項式と方程式の違い
  • 固有多項式、固有方程式
  • ハミルトン・ケーリーの定理
  • 固有値
を説明しました。あと、固有ベクトルの導入まで説明しましたが、定義には至りませんでした。

次回は

  • 固有ベクトルの定義
  • クラメールの公式
について説明した後、次の第5章に進みたいと思います。

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2013-07-10

数理科学IIA(第13回)

今回は「部分終結式の基本定理」の証明に向けた最初の補題である「補題1」の証明の後半部分を行った後、次の「補題2」の証明のほとんどの部分を行いました。

次回は「補題2」の証明の残りの部分を行った後、「部分終結式の基本定理」の証明を行いたいと思います。

2013-07-09

線形代数I(第22回)

今回は、正方行列の余因子や余因子分解について解説し、余因子を用いて逆行列の計算を行う公式(定理)を説明しました。そして「ファンデルモンドの行列式」を説明し、第3章の内容を終えました。

次回は、第4章「行列式の発展」から、重要と思われるトピックを選んで解説したいと思います。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/la1-2013

追記(7月12日):授業を収録し、編集後の動画に意図しないコマが割り込む不備が見つかり、動画のエンコードをやり直しています。動画の公開にはもう少し時間がかかる予定です。

追記(7月18日):動画を再エンコードしましたが、不備は変わらないようです。授業内容には影響ありませんので、そのまま公開します。

2013-07-05

線形代数I(第21回)

今回は、行列式の性質を、特に行列式の計算に有用なものを中心に説明しました。

次回は、正方行列の余因子や余因子分解について解説し、余因子を用いた逆行列の計算などについて説明する予定です。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/la1-2013

2013-07-03

数理科学IIA(第12回)

今回は、部分終結式を1つの行列式で表す表現について説明した後、「部分終結式の基本定理」の証明に向けて、最初の補題の証明に入りました。

次回は、この補題の証明の残りの部分から先へ進めていく予定です。

2013-07-02

線形代数I(第20回)

今回はまず、2次や3次の行列式の計算に欠かせない「サラスの公式」を説明した後、「置換行列」の定義や構成について説明し、最後に行列式に関するいくつかの性質(「上三角行列の行列式の値は対角成分の積に等しい」など)を説明しました。

次回は今回に引き続き、行列式に関する(特に行列式の計算において有用かつ重要な)性質を紹介する予定です。

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2013-06-25

線形代数I(第19回)

今回は、置換の中でも特に重要な概念の一つである「奇置換」「偶置換」について説明し、最後に行列式の定義を行いました。

次回は、行列式の基本的な性質や、置換行列について説明する予定です。なお、今週金曜日の6月28日の講義は出張のため休講とし、次回は7月2日に行います。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/la1-2013

2013-06-21

線形代数I(第18回)

今回は、置換の話題の続きとして、置換の積、逆置換、互換を導入し、互換とあみだくじの関連性も交えながら説明しました。

次回は、行列式の導入において重要な、置換の符号、偶置換、奇置換の話題を説明し、行列式の定義に進む予定です。

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2013-06-19

数理科学IIA(第11回)

今回は、前回に引き続き、例題を用いて、多項式剰余列の各要素の係数が、与えられた2つの多項式からどのように導かれるかを調べました。その上で、1変数多項式の「部分終結式」の定義を行いました。

来週6月26日は私が出張ですので休講となり、次回の授業は7月3日となります。次回以降は、部分終結式を1つの行列式で表す表現を導入した上で、「部分終結式の基本定理」を証明するための準備に入る予定です。

2013-06-18

線形代数I(第17回)

今回は、まず、前回の行列式の紹介の際に説明した「符号つき面積」で残った部分を説明しました。それから「置換」の説明に入りました。今回は「巡回置換」の定義まで行いました。

次回は、置換の積や、置換とあみだくじの関係などを説明しながら進む予定です。

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2013-06-14

線形代数I(第16回)

今回は、まず、連立1次方程式の解が一意的に存在する条件や、斉次連立1次方程式の解と係数行列の rank の関係について説明しました。

引き続いて「行列式」の話題に入りました。まずは行列式の紹介ということで、平面ベクトルによって張られる平行四辺形の「符号つき面積」との対応づけで行列式の性質を説明しましたが、今日は途中で終わりました。

次回はこの説明の残りを行った後、「置換」の説明に入る予定です。

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2013-06-12

数理科学IIA(第10回)

今回は、部分終結式の導入の第1弾として、1変数多項式の擬剰余の係数が、与えられた2つの多項式からどのように導かれるかを、例題を用いて調べました。

次回は、同じく第2弾として、多項式剰余列を例に取り上げ、多項式剰余列の各要素の係数が、与えられた2つの多項式からどのように導かれるかを調べる予定です。

2013-06-11

線形代数I(第15回)

今回は、行列の階数を定義し、階数に関する性質を一通り説明した後、連立1次方程式の解の存在性や個数が、係数行列の階数と深く関わっていることを、定理を証明しながら説明しました。

次回は、斉次連立1次方程式などと係数行列の階数との関係に触れてから、次章の「行列式」に進みたいと思います。

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2013-06-07

線形代数I(第14回)

今回は、連立1次方程式の話題の延長として、数ベクトル空間の基底の個数の一意性などについて説明した後、行列の列変形と階数 (rank) の話題に入りました。今回は、簡約階段行列に対する列変形を行うことで、行列の階数標準形を導き、与えられた行列の階数標準形が一意に定まる事実などに触れました。

次回は、今回の話題を踏まえて、行列の階数を定義し、階数の性質を確認した上で、行列の階数と連立1次方程式の関係について議論する予定です。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/la1-2013

2013-06-05

数理科学IIA(第9回)

今回から、多項式剰余列を計算する際の係数膨張を防ぐための方法に関する話題に入りました。

多項式剰余列を計算する場合、擬除算などを用いると、計算される多項式剰余の係数がどんどん大きくなることがあります。ところが、これらの係数には共通な因子があり、しかもそれらは、多項式剰余の定義に応じてある規則に従って増えていきます。この規則を調べることにより、わざわざ係数の GCD を計算しなくても、共通な因子を計算して多項式から取り除くことができます。この規則を知る手がかりになるのが「部分終結式の理論」です。

今回はまず、多項式剰余列を計算する際に起きる係数膨張の例を、数式処理システム Mathematica で実際に多項式剰余列を計算しながら説明しました。後半では、今後の準備として「終結式」や「判別式」の定義を説明しました。

次回からは、擬除算や多項式剰余列の計算の際の係数膨張の様子を例題を通して見つつ、部分終結式の導入につなげたいと思います。

2013-06-04

線形代数I(第13回)

今回は、前回の続きとして、連立1次方程式の解の個数や表現に関する定理の証明の概要を説明しました。その後、斉次連立1次方程式の定義と性質、基本解について説明しました。

次回は、ベクトルの集まりが線形従属になる条件や、数ベクトル空間の基底に関する性質などについて説明します。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/la1-2013

2013-05-31

線形代数I(第12回)

今回は、前回最後の方で説明したいくつかの定理を復習の後、逆行列の計算について説明しました。ここは、教科書の例題を、数式処理システム Mathematica の計算でデモンストレーションしながら説明しました。

その後、連立1次方程式の話題に入りましたが、今回は係数行列をはじめとする術語の説明で時間がきましたので、ここで終了となりました。

次回は、連立1次方程式の解の個数や表現を、係数行列からどのように調べるかという話題から話を続けたいと思います。

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2013-05-29

数理科学IIA(第8回)

今回は、前回の授業の続きで、拡張 Euclid 互除法の余因子 (cafactor) の次数上限の証明と、余因子の一意性の証明を行いました。そして、拡張 Euclid 互除法をアルゴリズムの形で提示して時間となりました。

次回からは、多項式剰余列計算の際に生ずる係数膨張などの問題点を紹介し、その対策の話題に入りたいと思います。

2013-05-28

線形代数I(第11回)

今回から教科書の第2章に入りました。今回は、行列の行変形、および、行変形による簡約階段行列への変換について説明しました。

授業の最後に、行変形の計算例を、数式処理システム Mathematica で実際に計算しながら説明しましたが、時間が十分でなかったため、デモンストレーションの前の定理の説明が一部不十分になったと思いますので、次回適宜復習しながら進めたいと思います。

次回は、今回の簡約階段行列に関する性質を復習し、逆行列の計算や連立1次方程式の話題に進みたいと思います。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/la1-2013

2013-05-24

線形代数I(第10回)

今回は、前回の「特殊な行列」の話題の残りの部分から入りました。まず、教科書の例題として「すべての正方行列は、対称行列と交代行列のわに一意的に表される」性質を紹介し、つづいて上三角行列と下三角行列の定義を行いました。

後半では、正則行列と逆行列の定義を説明し、「正則行列の積もまた正則行列」や「正則行列の転置行列もまた正則行列」といった性質を紹介しました。

今回で、教科書の第1章「数ベクトルと行列」による道具立ての準備は終わりとし、次回から、教科書第2章「連立1次方程式と行列」にて、連立1次方程式と行列の関係を見ていきたいと思います。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/la1-2013

2013-05-22

数理科学IIA(第7回)

今回はまず、前回の時間にシステムの不具合でできなかった、MathLibre 2013 のデモンストレーションを行いました。今度はシステムが無事起動し、ひとまず、ソフトウェアの紹介ページを紹介して(くどいですが)説明しました。

その後、Euclid の互除法について、前回、証明が途中までで終わった "GCD recursion theorem" の証明の残りを説明しました。後半では、拡張 Euclid 互除法の説明に入りました。拡張 Euclid 互除法の定理の証明は、余因子 (cofactor) の次数に関する性質の証明の途中まで行ったところで、今日は時間になりました。

次回は、拡張 Euclid 互除法の定理の残りの部分を説明し、同アルゴリズムの説明を行う予定です。

2013-05-21

線形代数I(第9回)

今回は、特殊な行列として、転置行列、対称行列、交代行列、対角行列、スカラー行列を紹介しました。授業の後半では、教科書の例題により、ある条件をみたす行列がスカラー行列になるという命題を説明しました。

次回は行列のブロック分割について説明し、時間に余裕がありましたら、正則行列の説明を行う予定です。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/la1-2013

2013-05-17

線形代数I(第8回)

今回は、行列の積(乗算)の定義から始めました。そして、行列の積の結合法則の証明を、3行3列の場合を例に取り上げて行いました。

次回は、転置行列や対称行列などの特殊な行列と、それらに特有の性質を紹介します。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/la1-2013

2013-05-15

数理科学IIA(第6回)

今回から、1変数多項式の最大公約子 (GCD) の話題に入りました。今年度の授業の残りの時間はこの話題が中心になると思います。

今回は、Euclid の互除法のアルゴリズムと、Euclid の互除法の理論的根拠を与える "GCD recursion theorem" を紹介し、同定理の証明の前半を説明して終わりました。

授業時間の残り5分程度で、最初の時間に配った MathLibre 2013 DVD のデモンストレーションを行おうとしましたが、DVD がうまく起動しませんでしたので、授業はそのまま終わりとしました。授業終了後、パソコンの電源を切ってもう一度電源を投入すると DVD が起動しましたが、デモンストレーションは次回行いたいと思います。

次回はMathLibre 2013 DVD のデモンストレーションを行うとともに、今日の定理の証明の続きを行い、 拡張 Euclid の互除法に進みたいと思います。

2013-05-14

線形代数I(第7回)

今回は、行列の定義から始めました。行列の定義と用語を順次説明し、行列の和とスカラー倍を定義しました。

そして、行列の積の定義を行う前に、和の記号について説明したところで時間となりました。和の記号(Σ)は高校数学からなじみ深いと思いますが、インデックスのとり方の表記として、自然数の部分集合などからインデックスをとってくる表記法は、まだなじみが薄い人もいると思うので、この機会に慣れるとよいのではないかと思います。

教科書にある、行列の和とスカラー倍に関する性質は、の証明は、数ベクトルにおける証明と同様ということで、時間の都合で省略しました。講義ノートの方には記載していますので、適宜参考にしてほしいと思います。

今回はレポート課題を出題しました。締切は次回5月17日の授業時です。次回は行列の積の説明から入ります。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/la1-2013

2013-05-10

線形代数I(第6回)

今回は、前回に引き続き、複素数の説明から始めました。授業の前半では、偏角と、四則演算のうち除算を除く演算の定義を説明しました。それから、オイラーの公式(特に「オイラーの等式」も含めて)の紹介を行いました。

授業の後半では、n項数ベクトルの定義や演算などの説明を行いました。これらは基本的に、以前説明した平面ベクトルの定義や演算などと同様であるため、説明の詳細は省きましたが、本来説明したかった内容は講義ノートの方に書いてあります。

今回は行列には至りませんでした。次回は行列の定義から始める予定です。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/la1-2013

2013-05-08

数理科学IIA(第5回)

今回は、計算量の表記法について説明した後、1変数多項式の四則演算の計算量解析について説明しました。

今回、計算量の基本とした演算は、係数どうしの加減乗除で、これを伴わないような単項や多項式の和は除きました。この辺は、計算機における多項式の内部表現と合わせて議論する必要があると思いますが、ひとまず単純な解析をしています。なお、擬剰余の計算量解析をレポート課題にしました。

次回からは1変数多項式に対する拡張 Euclid の互除法を扱う予定です。

2013-05-01

数理科学IIA(第4回)

今回は、1変数多項式の四則演算のアルゴリズムの続きで、減算、乗算、擬除算の定義を行いました。それから、計算量の紹介をちょっと行ったところで時間になりました。

次回は計算量の評価の際に現われる O 記号の定義について説明した後、これまでに授業で定義した、1変数多項式の四則演算のアルゴリズムについて、それらの計算量を見積もる予定です。

2013-04-30

線形代数I(第5回)

今回は、まず内積に関する公式の証明を行いました。教科書の証明をより一般的な状況で考える必要があることが、自分が予習をやっていてわかりました。

引き続いて複素数の説明に入りました。複素数の説明では、複素数の定義を行い、複素平面を考えることにより、複素数と平面ベクトルを対応づけることができることを説明しました。

次回は複素数の後半として、偏角の定義や四則演算を説明し、それから一般の数ベクトル空間を紹介して、行列の定義に進む予定です。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/la1-2013

2013-04-26

線形代数I(第4回)

今日は「任意の平面ベクトルがそれらの線形結合で表されるようなベクトルはどのようなものか?」という疑問から、平面ベクトルの線形独立(1次独立)の概念の導入を行い、ついで平面ベクトルの基底の定義を説明しました。それから、残りの時間で平面ベクトルの内積の定義を行い、内積に関する公式を提示したところで時間となりました。

次回は内積に関する公式の証明を行い、複素数の説明に進む予定です。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/la1-2013

2013-04-24

数理科学IIA(第3回)

今回はまず、アルゴリズムの基本的な事項として、アルゴリズムの要件と記法、制御構造について説明しました。後半では、1変数多項式の四則演算をアルゴリズムの形で書き下すことにし、今回はまず加法のアルゴリズムについて説明しました。

次回は、今回に引き続き、1変数多項式の四則演算のうち、減算からアルゴリズムの形で書き表すことについて説明します。

2013-04-19

線形代数I(第3回)

今日は、まず平面ベクトルの「生成」(「張る」ともいう)という言葉を定義した後、平面ベクトルの幾何的意味づけをするために、平面上の有向線分と平面ベクトルの対応づけについて説明しました。

普段は平面上の矢印をベクトルとして扱っていると思いますが、本来、平面上の有向線分は、図形として平面ベクトルとは関係をもたないものと見ることができますので、それらの対応を定義として与えることにより、平面上の有向線分と平面ベクトルを同じように扱うことができるようになります。これを経て、最後に、平面ベクトルの「生成」の幾何的な意味について説明しました。

次回はベクトルの線形独立の説明から始める予定です。なお、授業中に連絡を忘れてしまいましたが、来週4月23日(火)は学生定期健康診断の時間が重なるために休講にし、次回の授業は1週間後の4月26日(金)に行います。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/la1-2013

2013-04-17

数理科学IIA(第2回)

今日は、多項式演算を考える上での基礎として、まず、多項式環の中での記法や概念の定義に関する説明を行いました。

その後、多項式演算のうち、計算代数特有のものとして「擬除算」の説明を行いました。最後に、擬除算の計算を1題、レポート課題として出題しました。

次回はアルゴリズムの基本的な事項や記法について説明する予定です。

2013-04-16

線形代数I(第2回)

今日から本格的な授業が始まりました。

今日はまず、数学における「定義」や「定理」などの議論の進め方を紹介しました。数学に置ける議論の進め方は、チェスや将棋のようなゲームの分析の進め方と対応づけることができると思います。線形代数といった理論は、ある世界にルールを設定してゲームを行うようなもの、ともとらえることができます。数学における「定義」によってゲームのルールを設定し、「定理」は、ゲームにおけるある盤面(が存在すること)で、定理の証明は、ゲームのスタートからルールに従ってゲームを進め、ある盤面に到達可能であることを示すといった具合です。

次に、これから行う春学期の授業内容について、概要を説明しました。春学期の「線形代数I」では、数ベクトルと行列、連立1次方程式を行列の消去法を使って解く解法、行列式の定義と性質、数ベクトル空間と線形写像、といった内容を説明します。

その後、数ベクトルの定義に入り、ベクトルのスカラー倍や和の演算、線形結合の定義を行いました。

次回は、平面ベクトルの幾何的な意味を説明し、線形独立(1次独立)の概念を説明します。

授業サポートページ:https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/la1-2013

2013-04-12

線形代数I(第1回)

今年度は、春学期の「線形代数I」(化学類対象)の講義を担当することになりました。内容は、数ベクトル、連立1次方程式の解法、行列式といった内容で、線形写像に入る手前までを扱います。

今年度の2学期制への移行により、時間割がだいぶ変わりました。これまで、線形代数の講義や演習は水曜日に行われることが多かった(近年、一部の学類では水曜日以外に移動もしていた)のですが、今年の講義は、火曜日と金曜日の週2回、毎週2時限ずつ行われます。

今日は、昨年の微積分の講義のときのように、最初の授業でしたのでガイダンスに徹しました。授業の概要、教材、単位などについて説明した後、大学での数学の学び方に関する話をしました。昨年のガイダンスはここまででしたが、今回は、線形代数の成り立ちや応用といった紹介も含めました。

授業で用いる教科書ですが、入荷が遅れており、今日、講義を担当される先生方と急きょ教科書の第1章の範囲をコピーして、履修者に配りました。納期等については、今後の状況を見なければわかりませんが、とりあえず、第1章を勉強している間に入荷することを期待しています。

今年も、昨年の微積分同様、授業のサポートページを作りました。今後の情報はサポートページの方にまとめていく予定です。 https://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/la1-2013

2013-04-10

数理科学IIA(第1回)

今日から今年度の大学院の授業が始まりましたが、早速、私の授業も始まりました。

私が担当する大学院の授業は、これまでと内容は同じで、5回目の担当になりますが、授業編成で昨年度からの変更点がいくつかあります。まず、2学期制への移行に伴い、これまでの「数理科学II」が、春学期(前期)の「数理科学IIA」と秋学期(後期)の「数理科学IIB」に分割されました。春学期の「数理科学IIA」を私が担当し、秋学期の「数理科学IIB」を田島慎一先生が担当される構成は昨年度と同じです。次に、この授業は今年度から教育研究科 教科教育専攻 数学教育コースの授業「情報数学概論IIA」を兼ねての開講になりました。

春学期の「数理科学IIA」では、おもに1変数多項式の最大公約式 (GCD) を計算する部分終結式算法を中心に、多項式演算やアルゴリズムの概要について説明します。今日は授業のガイダンスとして、授業内容の説明と、参考書や主な数式処理システムの紹介を行いました。次回から数学の話に入ります。次回は多項式環の基本的事項から説明する予定です。

今年度から教育研究科の授業を兼ねたためか、これまで片手で数えられるくらいだった履修者数が、今日は大幅に増えました。皆さんいずれ履修科目の取捨選択を行うとは思いますが、より多くの人が理解できる授業にしていきたいと思います。

2013-04-01

研究集会「数式処理研究と産学連携の新たな発展」開催のお知らせ

このたび、関係者の皆さんの協力のもと、私が研究代表者として、標記研究集会を開催することになりました。

詳細は下記の通りです。今回は、特に数式処理と産学連携がメインのトピックですが、従来の研究集会同様、数式処理の理論/実装/応用に関するさまざまな話題も歓迎しますので、ふるってのご応募/ご参加をお待ちしております。

以下、参考資料です。詳細な情報は追ってお知らせします。


このたび、下記の通り研究集会を開催いたします。

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九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所 共同利用
研究集会「数式処理研究と産学連携の新たな発展」

2013年8月21日(水)〜23日(金)
九州大学伊都キャンパス
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●研究集会のあらまし

本研究集会は、これまで毎年夏に京都大学数理解析研究所にて開催されてきた RIMS 共同研究「数式処理研究の新たな発展」のシリーズの一つですが、今年は、九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所 (IMI) の共同利用研究として、数式処理研究の産学連携や産業界への応用を特に視野に入れて開催します。
※申請内容の詳細は IMI ホームページにて公表されています。 http://www.imi.kyushu-u.ac.jp/joint_research/detail/20130003

今回は、数式処理の産業への応用研究や、産業界からの数式処理への期待と課題などについて、海外および国内の招待講演者による
チュートリアルセッションを企画します。

一般講演の方は、今年は特に、数式処理研究の産学連携や、産業界における諸問題への応用、応用分野から数式処理に対する問題提起などの発表を歓迎しますが、例年通り、数式処理の理論、実装、応用に関するさまざまな取り組みに関する研究発表(特に、大学院生や若手研究者の方々の応募)も歓迎しますので、ふるってご応募ください。

●主要日程

今回は、講究録を予稿集として発刊し、会議の際に参加者に配布します。
講演者の皆様には、あらかじめ予稿原稿を作成、提出していただきますのでご留意下さい。

詳細アナウンス:4月中旬
講演募集開始:5月初旬
講演申込締切:6月初旬
予稿原稿締切:6月末
会議:8月21日(水)〜23日(金)

●組織委員

照井 章(筑波大学, 研究代表者)
小原 功任(金沢大学)
濱田 龍義(福岡大学)
横山 俊一(九州大学)
穴井 宏和(富士通研究所/九州大学)
横田 博史(東芝インフォメーションシステムズ)

●今後の情報提供について

本研究集会の詳細(応募要領やホームページなど)については、追って皆様にお知らせいたします。
本研究集会に関するお問い合わせや、本研究集会の周知にかかわるご連絡先の追加や変更、削除などのご希望がございましたら、照井までお知らせ下さい。
関連分野の皆様に広くお知らせいただければ幸いです。

照井 章(筑波大学)

p.s. 本状の送付日が4月1日となっておりますが、エイプリルフールではございませんのでご了承ください。

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照井 章 
筑波大学 数理物質系 数学域

2013-03-23

「微積分I (2012)」の再生リストを作りました

ほぼ1年前になりますが、今年度の1学期に担当した「微積分I」講義の録画 (インターネット動画共有サービス YouTube で公開中) について、再生リスト(プレイリスト)をつくりました。

微積分I (2012) / Calculus I (2012)
http://www.youtube.com/playlist?list=PLmf8las6ISTLmu2CQUDLdnNkbqWwSP0eB

これで、各回の授業の録画を一通り見渡せます。なお、講義ノート等は授業のサポートページで公開していますので、適宜ご利用下さい。

微積分I (2012) サポートページ http://www.math.tsukuba.ac.jp/~terui/calculus1-2012

2013-03-18

Risa/Asir Conference 2013 + 第5回六甲博多計算代数会議 一般講演「行列 Horner 法の並列化の実装について」

3月16日から18日まで、神戸大学で行われた研究会「Risa/Asir Conference 2013 + 第5回六甲博多計算代数会議研究会」にて、田島慎一先生(筑波大学)、小原功任先生(金沢大学)と共同で「行列 Horner 法の並列化の実装について」というタイトルで講演を行いました。

これは、田島先生、小原さんと取り組んでいる、行列のスペクトル分解や固有ベクトル計算などの一連の計算のによく現われる計算で「1変数多項式に行列を代入する」計算が、計算機では(行列や多項式のサイズが大きくなると)なかなか大変なので、計算効率を改善しようという取り組みの一つです。

昨夏の研究発表の際は、並列計算の効果がなかなか上がらないという課題がありましたが、昨年の夏休みに金沢大学の小原さんのもとに滞在して実装を改善し、その後も徐々に改良を重ねて今回の結果を出しました。

少し詳細を述べますと、これまでの行列 Horner 法の効率化は、行列どうしの積の算法は古典的算法のまま扱い、行列どうしの乗算の回数を減らすことで全体の計算を効率化させる方針をとっています。それを踏まえて並列化する部分を検討したところ、行列どうしの乗算の部分を並列化することにしました。

並列化の実装には、数式処理システム Risa/Asir 上で、小原さん作の「並列計算フレームワーク oh_p」を用いました。もともと、Risa/Asir では、並列計算基盤の OpenXM を使うことができますが、現時点では基本的な命令しか実装されていません。このため、一般ユーザが使うのにはちょっと敷居が高かったですが、oh_p の登場により、これまでよりもかなりお気楽に並列計算の実装が可能になると思います。

行列 A と B の積を並列化する際には、A の方を何らかの形で分けて B との積をとる計算を、同時にいくつかのプロセスに振り分けます。A の分け方として、1) A を1行ずつ行ベクトルに分ける、2) A をプロセス数と同じ個数のブロックに分ける、の2方法を比較した結果、2) の方がより並列計算の効果が現われることを実験で確かめました。その理由としては、2) の方が並列計算のプロセスの起動回数が少ない分、並列計算に伴うプロセスの起動やプロセス間の通信などの手間が省けるためだろうと推測しています。

以上が講演の概要です。参考までに、講演時のスライドを以下に掲げます。

行列 Horner 法の並列化の実装について (A Parallel Implementation of Horner's Rule for Matrices) by Akira Terui


2013-03-08

今年も計算機数学のセミナー合宿を行います

今年も、筑波大学 数学教室の計算機数学グループ恒例の春のセミナー合宿が、明日3月9日(土)から11日(月)の日程で、筑波大学館山研修所(千葉県館山市)にて開催されます。

この合宿は、私が学部生の頃から毎年行われているもので、そろそろ20年になると思います(私が最初に参加したのは 1994 年でしたが、それより前から行われていたはず)。今年は、久々に学部生がたくさん参加して、にぎやかな合宿になりそうです。

数年前から、セミナーの模様をインターネット動画共有サービスの Ustream で中継しておりますが、今年も実施の予定です。Ustream のチャンネルは http://www.ustream.tv/channel/tateyama2013 です。セミナーは明日3月9日(土)の夕方から始まります。スケジュールは合宿のホームページ http://sites.math.tsukuba.ac.jp/tateyama2013/seminarprogram でご確認下さい。

合宿の情報は Twitter でも配信しています。詳しくは http://sites.math.tsukuba.ac.jp/tateyama2013/twitter をご覧下さい。

2013-02-23

並木 SSH 数学セミナー「あみだくじを作ろう」


今回、茨城県立並木中等教育学校のスーパーサイエンスハイスクール (SSH) 事業の一環として行われた SSH 講座「数学セミナー」にて「あみだくじを作ろう」という題目で講演をしました。

スーパーサイエンスハイスクール (SSH) 」は、文部科学省から指定を受けて、自然科学や工学などの先進的な教育の取り組みや、大学や研究機関と連携した研究、教育活動を行うもので、独立行政法人科学技術振興機構 (JST) から資金援助を得て行うものです。

並木中等教育学校は、茨城県つくば市に位置する県立初の中高一貫校で、もともとは県立並木高校でしたが、5年前に中高一貫教育を始め、来春、1期生が大学受験を迎えるとのことです。そして、SSH は今年度(昨春)から5年間のプロジェクトで指定を受けて活動をしています。SSH 講座は、これまで、宇宙物理や医学などの講演を行ってきたとのことですが、今回は初の数学の講座ということで呼んでいただきました。直接声をかけてくださった齊藤利仁先生は、学生時代、私と同じ研究室で1つ下です。

今回の講演は2件で、最初の講演が、讃岐勝さん(筑波大学 医学医療系/筑波大学附属病院総合臨床教育センター)による「さまざまな曲線の描き方と利用法について—昔の人は曲線をどのように描いたか—」で(讃岐さんも私と同じ研究室の出身で、私が助手の時に大学院生でした)、その後で私が講演しました。そして、最後に、茨城県教育庁指導主事の内桶二郎先生による「最小ネットワーク問題の実験」の実演が行われました。

讃岐さんの講演では、昔の人々が円錐曲線などのさまざまな曲線を描画するのに用いた平面幾何学の性質や、それらの理論に基づいて彼らが作った作図機器などが紹介されました。讃岐さんは、大学院を出て最初に就職した筑波大学の数学教育の部署で、作図法を中心とした数学史の研究にも携わり、「曲線の事典」という、非常に興味深い内容とすばらしい装丁の本も執筆されています。昔の人々が、いかに工夫して器械を作り、コンピュータもない時代に正確で美しい図形を描画していたかを見ると、驚かされます。

それから、戦時中の中学校の数学の教科書でも、平面幾何の性質(円周角と中心角の関係)を用いた器械の動作が取り上げられていたことも紹介されました。これは講演の後でも居合わせた生徒さん達や先生方とも議論になりましたが、たぶん、戦時中でものづくりの技術が重視されたのではないかと推測しました。講演の後では、平面幾何の課題研究をしている中学3年生の生徒さんが讃岐さんといろいろ議論をしていて、その熱心さに私も感心しました。

次の私の講演では、あみだくじと代数学の関係から「スタートとゴールが決まったあみだくじを、最小本数の橋をかけて作る作り方」の話をしました。あみだくじは、代数学の「置換群」として扱うことができ、その理論から、スタートとゴールが与えられたあみだくじを作るのに必要な橋の最小本数がわかります。今回は、この理論の部分は(時間も知識もある程度必要ですので)認めた上で、実際に条件を満たすあみだくじを作るための構成的手順に絞って解説しました。講演の後半では、生徒さん達が眠くならないよう、実際に生徒さん達にもあみだくじを描いてもらいながら作業を進めました。生徒さん達は無事に目的とするあみだくじを作ることができたようで、よかったと思います。

最後の内桶先生による「最小ネットワーク問題」は、たとえば「三角形の3点 A, B, C に位置する学校どうしをネットワークで結ぶのに、距離の合計が最小になるネットワークの結び方はどのようなものになるでしょう?」というものです。この条件をみたす点は「シュタイナー (Steiner) 点」と呼ばれ、いろいろな図形(より一般には「無向グラフ」)のシュタイナー点を求める問題は「シュタイナー問題」と呼ばれているそうです。

さて、先生のお話では、まず三角形の場合に、距離最小のネットワークがどのような形になるか、私達に予想してもらい、では実際に実験で確かめてみましょう、ということになりました。出てきたのは、2枚の透明なプラスチックの板を 10mm くらいの間隔で重ねて、3か所、ネジ止めした自作の器具で、せっけん水に浸してみると、せっけん膜が見事に距離最小のネットワークの形になったのでした。それから、四角形、五角形、六角形の実験が実演され、私達は「すごい!!!」とわくわくしっぱなしでした。

最後に、私の「あみだくじ」の話でも下敷きになった「置換群」の話題で(私の講演では、直接「置換群」という言葉は出しませんでした)、隣り合う互換によって移り合う文字列を結ぶと、美しい図形になることが紹介されました。3文字の置換群 S3(3本の縦線で作るあみだくじに対応する)では正六角形が現われ、4文字の置換群 S4(4本の縦線で作るあみだくじに対応する)では、ちょっと不思議な立体が現われることが紹介されました。

内桶先生の実演は、数学的なアイデアを視覚化するという点で、大変参考になるものでした。昨年紹介しましたが、私のところでは、学園祭の際に、子供達を対象にした科学実験の学生企画が伝統的に行われています。この中で、数学については、小学生のような生徒が、パッと見て内容がわかる、とか、すごいと思う、というような実演をするネタを作るのがなかなか大変だという印象を得ていたので、今回の内桶先生の実演は、ぜひ、数学のおもしろさを伝えたいと思っている大学生にも見てもらいたいようなものでした。

一連の講演の後で、何人かの生徒さん達が質問をしたりして居残っていて、関心の高さに感心しました。彼らの年頃だった頃の自分を振り返ると、それ程質問できるような知識は持ち合わせていなかったけど、おもしろそうだなーと思って、質問する友達のそばで話を聞いていましたが、なつかしい気持ちにもなりました。

並木中等教育学校のスーパーサイエンスハイスクール (SSH) 事業は、今年度から始まったということで、初年度の運営ですから、たぶんほとんどの行事が初めてで、担当の先生方もいろいろご苦労があったことと思います。そのような中で、先生の指導のもとに生徒が課題を設定して研究を行ったり、いろいろな分野で第一線で活躍されている先生方の話を聞いたり、研修で海外に出かけたりと、彼らの年頃だった頃の自分達のことを思い出すと、本当にうらやましくなるような体験だなーと思いました。

先生方に伺ったところ、今日のような講演では、高校生よりも中学生(中等1〜3年生)の方が出席者が多いようで、高校生の人達の参加が少ないのは残念な気もしますが、この事業を続けていく中で、今の中学生の人達が高校生になって、参加者が増えることを期待したいと思います。

というわけで、今日は非常に有意義なひとときを過ごすことができました。今回のセミナーを企画された並木中等教育学校の責任者の齊藤達也先生、お誘い下さった齊藤利仁さんに感謝いたします。

あと、今回の私の講演ネタは、もともとは私が就職したての頃に筑波大学自然学類の「線形代数演習」の授業で作ってきたものです。この過程で、筑波大学数理物質系(数学域)の森田純先生には、転倒数に関する理論の方で助言をいただきました。また、2005年には、SSH 事業で学校訪問に来た高校に対し、自然学類で数学講座を開きました。このとき、私の授業資料をもとにして、筑波大学大学院数理科学科学研究科の修士課程に在学していた山内(現・坂口)歩さんに、実際のあみだくじの作り方に関する講演をしてもらいましたが、今回は、山内さんの講演資料も参考にさせていただきました。あわせて感謝いたします。

最後になりますが、今日の私の講演で使ったスライドを載せておきます。

あみだくじをつくろう (Let's Make an Amidakuji (Ghost Leg Game)!) by Akira Terui


2013-02-21

卒業予備研究セミナー (2013-8)

今日は、前半、Emacs のチュートリアルを使って使い方の実習の続きを行いました。前回と今日で Emacs の方は一通り済みました。チュートリアルはなかなかよくできていて、内容も全体的にわかりやすかったと思います。

後半では、LaTeX に入り、とりあえず、最初のサンプルの文書を作って、PDF ファイルの生成まで行いました。今後、合宿までに、Beamer によるプレゼンテーションの作成を目指して頑張りたいと思います。

微積分演習(生物)(第10回)

今日がこの授業の最終回となりましたが、今日は授業の冒頭でレポート課題を出題し、あとは各自自習という形で、復習や質問、レポート課題への解答を進めてもらいました。

この授業は人数が少ない分、気軽に質問もしてもらって対応することができたと思いますし、お互いにわからないところを教え合ったりできる雰囲気もよかったと思います。そういう意味で、皆さん積極的に授業に参加してくれたのはありがたかったです。

今後は数学に触れる機会も少なくなるかもしれませんが、それぞれの分野でのご活躍をお祈りするとともに、今後、数学で詰まったら声をかけてもらえると嬉しいですし、数学で詰まらなくても、学内などで見かけたら声をかけてもらえると嬉しく思います。というわけで、短い期間でしたが、お疲れさまでした。

2013-02-20

微積分III演習(第9回)

今日はこの授業の最終回でしたが、関数の極限や連続性に関する問題と、無限級数の収束性判定に関する問題を発表してもらいました。学期末の成績評価は、期末試験に代わるレポート課題を出しました。

今年度も、微積分III演習の化学類と地球学類の混成クラスは、小数精鋭でしたが、先日に比べると今日は若干出席者が増加しており、0に収束しなくてよかったと思います(笑)。これは冗談ですが、少人数ながら、出席者は皆さん積極的に授業に参加し、議論も深まったのがよかったと思います。今後、このクラスの中で数学を続ける人は少ないと思いますが、この授業で行われた考え方や議論の進め方が、教養の一つとして皆さんに伝われば嬉しく思いますし、もし、これらが今後の皆さんの人生の上で活かされる場面があれば、さらに嬉しく思います。

というわけで、皆さんの今学期の期末試験のご健闘と、今後のご活躍をお祈りします。

2013-02-19

計算機演習(第9回)

今日は、先週第8回のレポートの締切日ということで、出席自由のオフィスアワーとしました。

今日の出席者数はちゃんと数えていませんのではっきりとはわかりませんが、授業場所の端末室にある 80 台の端末はほとんどが埋まっていました。いろいろ仕事をしている人達がいたようです。この授業の履修者の人達も、活発に質疑応答や議論をしながらレポートに取り組んでいました。

余談ですが、来月にシステムの入れ換えがあり、現在使っている端末は間もなくその使命を終えます。今のシステムは、サテライト端末で初めて全学統一の管理のもとに運用されたシステムでした。(それ以前は、自然学類(2007年の学群・学類再編の後は自然系の学類)で独自に管理していました。)4年間、この授業を含むたくさんのユーザを支えてきたシステムに感謝したいと思います。

2013-02-14

微積分演習(生物)(第9回)

今日の授業は、今週も水曜日の講義でレポート課題が出たとのことで、まずはレポート課題に出た2次形式の計算問題について、定義や解法の方針を確認しました。その後、定積分の変数変換に関する計算問題を発表してもらいました。

早いもので、この授業も来週が最後になりますが、各自頑張って演習問題に取り組んでもらいたいと思います。

2013-02-13

微積分III演習(第8回)

今日は、主に関数の極限に関する問題を扱いました。

ε-δ 論法による証明の手順は共通していますが、個々の問題によって、関数の評価の際にいろいろと工夫することになります。それらのステップを順を追って理解しながら証明を進めるという部分も大切だと思いますので、各自、自分で納得がいくまで考えることを望みます。

この授業も、残すところあと1回となりました。来週は、関数の極限に加えて、関数の一様連続と、級数に関する演習問題を扱います。

2013-02-12

計算機演習(第8回)

今日は、この授業の最終回ということで、フラクタル図形の描画を扱いました。

一方、前回の「金融計算」の回のレポート課題は今日が締切ということで、今日の授業時間中もも活発に議論しながらレポート課題に取り組んでいるようでした。前回、今回と、難易度がやや高い課題が続きますが、私達をうーんとうならせるような(よい意味で)レポートの提出に期待します。

今学期のこの授業では、数式処理システムに触れる機会になりました。今春から始まる3年次の「計算機数学I」では、理論的もしくは実際的な計算を視野に入れた数学の基本となる理論や方法に触れることになると思います。さらに、3年次後半の「卒業予備研究」と4年次の「卒業研究」では、私も担当する可能性がありますが、その際には、今回使った Mathematica の基盤になっている、計算代数や数式処理の理論について学ぶコースも用意すると思いますので、興味のある人にはぜひ、数式処理システムにも触れながら、この分野の勉強も続けてもらえればと思います。

それから、これはクラス担任としてのコメントですが、今回の履修者の多くは、おととし春に入学した数学類の人達で、早いもので入学からもうすぐ2年、大学生活の折り返し点にさしかかっています。大学生活後半の2年間も、皆さんにとって実り多いものになることを望みます。

2013-02-08

平成24年度 第3学期 数学類クラス連絡会

今日の夕方、学生と教員の懇談会が行われました。出席するのはたしか昨年2月の会以来だったと思います。

今回は、まず、2学期の授業評価アンケート結果の報告があり、それから福利厚生に関する学生からの要望について、討論が行われました。今回のテーマは「ペデストリアン(ペデ; キャンパスを貫いている(というか、筑波の学園都市中心部を貫いている)歩行者自転車専用道で、学内のペデは学生の主要な通学路の一つ)が雨が降ると滑りやすくて危険」と「宿舎の暖房について」でした。

「ペデが雨で滑りやすい」話題に関しては、数学類生が主にいる第一エリアについては、昨年改修工事が行われたので、以前程滑らないのではないかという指摘があった他、利用者のマナーの向上が先という意見が出されていました。

一方「宿舎の暖房について」では、具体的な要望として「暖房は期間を区切って始まるが、それ以前にも寒い日があるので、気温を基準に暖房を入れてほしい」という要望と、「暖房の運用時間が現状では午後11時までであるが、学生はそれ以降の深夜も活動する人が多いので、運用時間を延長する、もしくは遅い時間にずらしてほしい」というものでした。宿舎の暖房設備は、いわゆるセントラルヒーティングで、部屋毎に入れたり切ったりすることができないので、なかなか難しい問題ではあると思います。

さて、昨年の連絡会の際には「議論は低調」といった感想も書きましたが、今回残念だったのは、授業評価アンケートに関する学生と教員の意見交換がなかったことです。この点は、本会の最後の方で先生方からも指摘がありました。福利厚生の問題も重要である点は理解できますが、学生と教員の意見交換が行われない状況では、教員が連絡会に出席する意義を疑わざるを得ないところです。この辺、運営するクラ代会(クラス代表者会議)の論点の設定のしかたや議論の掘り下げ方に、昨年以上により一層の工夫を望みます。

あと、本学で来年度から導入される GPA (Grade Point Average) 制度も話題になりました。GPA は、学生の成績の A, B, C などを点数化して、評価対象となる授業でその平均値をとるというもので、本学では、来年度から始まる2学期制の導入をはじめとする授業運営体制の改革の一部となっています(PDF資料)。

GPA については学生の関心も高いようで、数学類長の笠原先生との質疑応答も行われました。他学類では、卒業研究の配属にあたって、GPA が高い学生から優先的に希望先に配属されるといった制度がある(学生の指摘)ようですが、数学類では、GPA を学類内でどのように使うかは、現在のところまだ決まっていないというのが答えでした。今後、GPA をどのように使っていくか、検討が行われるものと思われます。

というあたりで今回は時間になりましたが、今後も学生と教員の意見交換の場が有効に活用されることを望みたいと思います。

2013-02-07

微積分演習(生物)(第8回)

今日もいつも通り授業が始まりました。水曜日の講義の方は、今週から複素解析に入ったとのことで、早速レポート課題が出たそうなので、それについての検討を行いました。その中では、複素関数が正則(微分可能)であるための必要条件として知られている「コーシー・リーマンの微分方程式」などについて説明しました。

授業の後半では、重積分の変数変換に関する計算問題を発表してもらいました。次回も引き続き、演習問題に取り組みたいと思います。

2013-02-06

微積分III演習(第7回)

今日は、実数の連続性に関する問題を発表してもらい、特に上極限や下極限の概念や計算に関する復習を中心に行いました。それから、関数の極限に関する ε-δ 法の使い方も行いました。

数学の概念を他人に正しく説明するのは、最初のうちはなかなか大変な部分もあると思います。今日、説明してもらった人も、苦労しながら頑張っていました。ある事実をきちんと説明できるためには、その事実がどのようにして成り立っているか、なぜその事実が正しいと言えるのか、説明に必要とされる定義や性質をよく理解しておくことが必要だと思います。

私も学生の頃、演習の授業中に先生に何度もツッコミを受けながら解答を説明した経験を思い出しましたが、こうした経験を通して、数学を学ぶとともに、何かを身につけて使いこなすというのがどういうことかを学んだと思います。履修者の人達が現在学んでいる数学の授業は、こうした思考や学習のトレーニングの機会としても有効だと思いますので、残り少ない授業期間ですが、頑張ってほしいと思います。

次回は、関数の極限に関する話題を中心に扱います。

2013-02-05

計算機演習(第7回)

今日の授業では、新しいテーマとして、金融計算の基礎を取り上げました。四捨五入、単利と複利の計算や、元利均等返済などの概念を、国民年金保険料の納付などを例に説明しました。

天野先生が作られた授業テキストでは、国民年金保険料を納める際に、1年前納もしくは半年前納を行った際の割引額の根拠について、複利法で納付金の現在価値をもとに算出されることが具体的に説明されています。その他には、クレジットカードで分割払いをする際の元利均等返済の原理についても説明されています。

レポート課題では、平成25年度の国民年金保険料を前納した場合の納付金額や、住宅ローンの組み方といった課題が出ました。特に住宅ローンの計算は個人的にも興味深いテーマです。これまでのレポート課題の中では比較的難易度が高い課題だと思いますが、基本的な考え方をよく理解した上で、課題に取り組んでもらいたいと思います。

早いもので次回はこの授業の最終回です。次回はフラクタル図形の描画を取り上げます。

2013-01-31

微積分演習(生物)(第7回)

今日はまず、重積分の変数変換に関する演習問題を解いて発表してもらいました。その中で、cos θ の n 乗の積分の公式を使う場面があり、直接公式を使って問題を解いた人と別の人が、自分で計算した証明をしてくれました。一同参考になったと思います。

授業の後半では、昨日の講義で新しいレポート課題が出題されたとのことで、さらに別の人が必要事項について解説してくれました。自主的に発表してくれた人もいて、他の人も熱心に討論に加わってくれたので、今日も有意義な授業になったと思います。次回も楽しみです。

2013-01-30

微積分III演習(第6回)

今回も、前回に引き続き、実数の連続性に関する問題を扱いました。

講義の方はすでに無限級数に入っているそうですが、授業日程から、今学期の授業は残すところあと2回とのことです。一方、演習の方は、若干進度はゆっくりめですが、授業の残り回数はあと4回ありますので、進めていきたいと思います。

次回は関数の極限値や連続性を中心に扱う予定です。

2013-01-29

計算機演習(第6回)

今日は、Mathematica によるプログラミングの初歩として、パターンマッチに基づくプログラミングを行いました。

今日のレポート課題として、関数の微分を行うプログラムを出題しました。なかなかうまく計算できず苦労している人が何人もいました。私が質問を受けつけた範囲では、皆さんうまく計算できるようになりましたが、ぜひ残りの課題も頑張って仕上げてレポートを提出してほしいと思います。

次回の授業ではファイナンスに関する話題を取り上げます。

2013-01-27

日本数式処理学会 東北地区合同分科会 一般講演

今日1月26日(土)と27日(日)の2日間、宮城県仙台市にて、日本数式処理学会 (JSSAC)東北地区合同分科会が行われています。

今回、私は、一般講演として「数式処理における近似最大公約子 (Approximate GCD) 計算の最近の動向」というタイトルで発表しました。私は、昨年6月から来年6月までの予定で、学会の基礎理論分科会委員を務めており、今回の発表は、委員としての活動の一環という面もあります。普段は主に理論分野の研究会で発表していますが、今回は、基礎理論、システム、教育の3分科会による合同分科会でしたので、普段私の発表にあまりなじみのない方々にも私自身や私がいる分野の研究活動を紹介する発表を行いました。

ご参考までに、今回発表に用いたスライドを載せておきます。

数式処理における近似最大公約子 (Approximate GCD) 計算の最近の動向 by Akira Terui


2013-01-24

微積分演習(生物)(第6回)

今日は、前日の講義でレポート課題が出たとのことで、授業の前半の時間はレポート課題の問題を出席者の皆さんと考えました。後半では、先週配布した演習問題から、重積分の変数変換の問題を発表してもらいました。

次回は、基本的に、引き続き重積分の変数変換の演習問題を扱いたいと思います。(講義で新たなレポート課題が出題されたりした場合は、内容の一部変更もあり得ます。)

2013-01-23

微積分III演習(第5回)

先週の水曜日は月曜の振替授業日だったため、今日の授業は2週間ぶりになりました。

今日の授業では、実数の連続性を用いる問題を扱いました。特に、与えられた数列が有界な単調列であることを示して収束を証明し、極限値を求める問題を中心に行いました。

次回は、関数の極限や連続性の問題を中心に扱う予定です。

2013-01-22

計算機演習(第5回)

今日の授業では、微積分の2回目として、主に積分に関する内容と、リストの要素に対する計算を行いました。

次回の授業では初歩的なプログラミングを扱う予定です。

2013-01-17

微積分演習(生物)(第5回)

今週は、水曜日が月曜の振替授業日になった影響で講義がなかったようですので、演習の方は久々に重積分の計算に戻りました。

今日は、重積分の変数変換の計算について説明し、それから各自演習問題に取り組んでもらいました。来週は、今日の範囲の演習問題の解答を発表してもらう予定です。

2013-01-15

計算機演習(第4回)

今日の授業では、微積分の1回目として、極限の計算、導関数の計算、Taylor 展開の計算などを扱いました。

ところで、今日は前回第3回のレポート課題の締切でしたが、今日の授業時間中に、第3回のテキストに不備が見つかりました。レポート課題のうち、一部の課題を解くのに必要な話題(リストを集合として扱う演算)で、本来、テキストの末尾に記載すべきものが抜けていました。履修者の人の指摘を受けて、大急ぎでテキストを更新しましたが、該当するレポート課題の解答に支障が出た人にはお詫びいたします。レポート課題解答の不備の原因がテキストの内容の不備と認められる場合には、解答者の不利益にならないような措置をとりたいと思います。

次回は、今回に引き続き、微積分の内容を扱う予定です。

2013-01-10

微積分演習(生物)(第4回)

今日は今年最初の授業でしたが、まず、昨年末に提出してもらったレポートを返却し、答え合わせをしました。レポートの方は皆さんだいたいよい出来でしたが、一部の問題で、積分範囲を正しくつかむことに注意が必要のようです。

授業の後半では、講義で新たなレポート課題が出たとのことで、講義の内容を確認しながらレポート課題の内容について議論しました。講義のレポート課題の方も頑張ってほしいと思います。

次回は、講義で新たなレポート課題が出たりしなければ、これまでの重積分の内容の続きを取り上げる予定です。

Team SNC 結成

今日、3年生の卒業予備研究の今年初のセミナーがありましたが、自分達の研究グループを "Team SNC" (チームエスエヌシー)と名乗ることにしました。

"Team" はよいとして、"SNC" は、私が専門にしている「数式・数値融合計算」"Symbolic-Numeric Computation" の略です。詳細の説明は私のホームページにありますのでここでは省きます。

チームと名乗ったのにはいくつか理由があります。第一に「研究室」という名前がなんとなく堅苦しく感じられたことがあります。「照井研」と称するよりは、ラーメン屋のように「照井軒」と名乗った方が、自分としては親しみがわきますし、学生の人達も来やすいかもしれません。第二に、チームの主人公は学生の人達であり、彼ら、彼女らに活躍してほしいという願いからです。「研究室」というと、なんとなく、研究の中心にいる教員主体になるような印象を受けますが、グループの活動を盛り上げるのはきっと若い人達が中心になるのでないかと思いますし、そうできたらいいなという願いがあります。

さらに、チーム名に私の名前を入れることも避けました。このような名前のつけ方に関する話題はほかでも聞いたような気がします。理由は2つあって、一つは、このグループがいつまで存続するかはわかりませんが、もし途中で私が抜けた後でも、名前を変えなくても済むようにということ、もう一つは、ひとまずは現在の主要な研究テーマを前面に出した方が、名前から中身を想像しやすいかな、と思ったことです。

そんなわけで、卒業研究はすでに始まっていますが、今日はこの名前の説明をして、看板を掲げることにしました。今後の活動とともに、チームのホームページを作ったりしながら、筑波の SNC 研究グループとして、情報発信も徐々に進めていきたいと思います。

2013-01-09

微積分III演習(第4回)

今日は年明け最初の授業になりましたが、数列の極限で昨年残した問題と、実数の連続性に関する問題を扱いました。

実数の連続性では、特に、集合の最大値、最小値、上限、下限といった術語の定義の復習を行いました。最大値や最小値は感覚的に日常生活の中でも使っていると思いますが、数学での定義をきちんと理解して使いこなせるようになることは、与えられた問題に対する答えの推論を正しく行う上で必要ですし、大切だと思いますので、少なくとも3学期の微積分の授業の間は理解に努めてほしいと思います。

次回は、今回に引き続き、実数の連続性に関する演習問題を扱うほか、関数の極限に関する問題も扱う予定です。

2013-01-08

計算機演習(第3回)

私は前回の授業は出張で欠席しましたが、天野先生と TA の方々が予定通り実施されました。ありがとうございます。

今日の授業では、リストを行列やベクトルとして扱い、線形代数の計算を行う一方、リストを集合のように扱う計算も行いました。

前回の授業のレポート課題は今日が締切ですが、3次元空間の図形のアニメーションで苦労している人もいました。まずは、3次元空間内に曲線や曲面といった基本的な図形を描き、次にこれをどのように動かすか(移動や回転など)を考える、というように、順を追ってアイデアを形にしていくとよいのではないかと思います。

次回からは微積分の話題を扱います。