2011-05-27

フレッシュマンセミナー(第5回)

今日のフレッシュマンセミナーでは、新入生オリエンテーションの初日に行われた「新入生歓迎祭」、略称「新歓祭」のアンケート調査が行われました。う〜ん、自分が入学した時はこのようなアンケートは行われませんでしたが、こういう調査は年を追うごとに単調増加で増えていくんでしょう、と、もう一人の梁先生がおっしゃっていたのがおもしろかったです。

1学期は、予想以上にいろいろなアンケート調査が続きます。来週は、数学類が行う新入生対象のアンケート調査と、学類の学生が行う「授業評価アンケート」が行われる予定です。

さて、今日は関東地方も梅雨入りしましたが、宿舎祭(やどかり祭)が、今夜と明日、予定通り開催されることと、今年初参加という、数学類の御輿の成功を祈ります。

数学特別講義I(第6回):結び目の数学 — 結び目・絡み目のトポロジー入門

今日の講義は、金戸武司先生による「結び目の数学 — 結び目・絡み目のトポロジー入門」でした。

1本のひもで作るものを結び目、それ以上の本数のひもで作るものを絡み目と呼びます。結び目は、絡み目の1本の場合として、絡み目に含めます。

今回のお話は、このような絡み目がいくつかあったときに、交差することなく動かすことで、ある絡み目を別な絡み目と同じ形にすることができるか?ということを考えます。それを、絡み目の「不変量」を用いて調べることが紹介されました。「不変量」は、絡み目を動かして同じ形にできるもの(=同値な絡み目)の間では変わらない量(性質)を表します。

今日は、不変量の中から「3彩色可能性」という性質と「Conway多項式」が取り上げられました。私の知っている範囲では、Conwayは組み合わせゲーム理論や符号理論でいろいろな仕事をしている(ことを知っている程度)わけですが、絡み目の不変量でも名前が出てくるのには驚きました。

で、実際にある絡み目のConway多項式を計算する例題が出されました。最初は計算方法を理解するのがやや複雑なようですが、再帰的により単純な絡み目に帰着させて計算していく手順は興味深く、Conwayの洞察力の深さを思いながら計算を続けていました。

2011-05-20

フレッシュマンセミナー(第4回)

今日のフレッシュマンセミナーでは、アンケート調査が2件ありました。

1件は、社会工学類の授業の一環で、東日本大震災の原子力災害に伴う風評被害に対し、風評を抑えるような宣伝等の影響を調べるというもので、アンケートは2回行われます。今回は、実際に悪い風評を打ち消すためのキャンペーンを行う前の消費者の意識調査で、来月になってから、もう一度アンケート調査をしに来るのだそうです。

もう1件は、大学の保健管理センターが行う、こころの健康に関するアンケートで、これは、毎年、学生の健康診断に合わせて行っているのが、今回は震災の影響で、実施が遅れたとのことでした。心の健康は、これからの学生生活にとっても重要なことなので、何かあったら、早めに相談してほしいと思いますし、こちらも注意したいと思います。

明日からはスポーツデー、来週はやどかり祭と、行事が続きますが、やどかり祭の御輿など、力を合わせて、よいものができるよう願っています。

数学特別講義I(第5回):方程式の解法と群

今日の授業は、天野勝利先生による「方程式の解法と群」でした。

この授業で扱われる「方程式」は、1変数の代数方程式と呼ばれるもの、すなわち、中学で習うような2次方程式を一般化したものを指します。2次方程式の解の公式は、現在、中学で習うようなものですが、3次、4次の方程式の解法の研究が、ルネサンス期のイタリアで盛んに行われたことの歴史的な説明から入りました。当時は、数学の実力を示す手段として「公開試合」で互いに問題を出し合って競った、というのもおもしろい話でした。

その後、ラグランジュが、これらの解の公式を解の「置換」の立場から研究することにより、アーベルによって証明された「5次以上の代数方程式に対する一般的な解の公式は存在しない」という定理へとつながっていくストーリーが話されました。私自身、イタリアの3次方程式や4次方程式の解の公式の時代と、アーベルやガロアによって「群」の概念が登場する時代の間の過程をよく知らなかったので、ラグランジュによる解の「置換」の研究というのは興味深いテーマでしたし、ラグランジュ自身についても、彼の解析学の業績はよく耳にしますが、代数学でも重要な仕事をしていたというのも、興味深い話でした。

この授業も、全10回のうち、今回が5回目で、ちょうど折り返し地点です。後半、どんな話が出てくるか、楽しみにしたいと思います。

2011-05-16

数理科学II(第4回)

今日はまず、先週出題したレポート課題「擬除算のアルゴリズム」について、レポートを回収してから答え合わせを行いました。指名した学生さんは、内容をよく理解して正しいアルゴリズムを書いていましたが、商を求めてから最後にあらためて剰余を求めていたので、商を求める過程で剰余も計算されていることを指摘しました。こういう考察は、やはり、実際にやってみて気づくこともあるので、実際的な観点から問題を考える力を養うよい機会になると思います。

そして、今日の話題は「計算量」でした。計算量の主な記法について説明し、今度は、前回の授業内容に基づいて、多項式の四則演算の計算量を考察しました。しかしながら、乗算と擬除算については今回も時間が足りなかったので、これもまたレポート課題になりました。

さて、次回の授業ですが、来週から3回(5月23日、30日、6月6日)、兼担している田島慎一先生に授業をしていただきますので、次回の私の授業は6月13日になります。レポートの締切も、6月13日の授業時としましたので、頑張って取り組んでほしいと思います。

2011-05-13

フレッシュマンセミナー(第3回)

今日のフレッシュマンセミナーは、まず、夏の大学説明会に関するアンケート調査、それから、オリエンテーション初日に撮影した記念写真の配布と、誰がどこに写っているかの一覧図の作成、クラスの各委員の一覧表の作成、と、調査関係が続きました。

それから、図書館フレッシュマンセミナーを6月10日に予定していたのですが、学類対抗戦「クラリンピック」が同じ日に行われることになり、どちらを優先するかという話し合いが持たれ、当日はクラリンピックに出ることになりました。図書館フレッシュマンセミナーは他の日でもできるし、クラリンピックのような行事に出るというのは学類内の結束を深めるよい機会になると思います。

こんな感じで、思ったより長い時間がかかりましたが、これらが終わると早速、やどかり祭の準備を始めていました。頑張ってほしいと思います。

数学特別講義I(第4回):くらしの中のコンピュータと数学 — Webページの重要度を定めるPageRankの技術 —

今年第4回のこの授業、今回はついに私の担当ということで、話をさせていただきました。テーマは、Googleの検索結果を重要な順番に順序づけするという「PageRank(ページランク)」と呼ばれる技術と、その背後にある数学の話です。

この blog にもあるように、私は今度、この授業の担当が3回目でしたので、昨年までとテーマを変えて話をしてみようと思っていました。そこで、新ネタを考えたわけですが、今年の春先に PageRank の計算が、本質的には線形代数の計算(連立1次方程式を解くか、ある条件を満たす固有ベクトルを求める)に帰着されることを知ったので、話題のレベルも手頃だと思い、テーマに選んでみました。

その後、いくつかの資料を読んで勉強したところ、PageRankの原論文をはじめ、たいていの資料は、まず最初にPageRankの計算法から説明があり、引き続いて、PageRank計算のモデルとして使っている「マルコフ過程」の話がありました。

たしかに、数学を専門としない一般の人向けに書くときは、まず具体的な手順から示すのが有効と思います。しかし、今回は、理学系の学部1年生を対象にした数学の授業であり、背景の動機づけについて、よく知ってもらった方がよいと思い、まず「マルコフ過程」の話を先にした上で、このモデルを、webページを巡回する行為に当てはめることにより、PageRankを計算する、という流れで説明しました。

それから、実際にweb検索のサービスを行う上では、様々な課題、たとえば、数学的な部分では、巨大次元の行列の固有ベクトルを計算する問題や、実装部分では、webページの巡回と情報収集、データの分類と保管、高速な検索とPageRankに沿った並べ替えの記述、webサービスの維持やメンテナンスなど、実に多種多様な課題を克服して、初めてGoogleのようなサービスの提供が可能になる、という話をしました。そして「『大学で学んだことは役に立たない』という声を聞くことがあるが、社会に出ると、それまで解いたことのない問題によく出くわす。そのような時に、自分で必要なことを学び、新しい問題を解くための知恵を生み出す力を持っていることが必要で、そのための力を身につけることが、大学で学ぶ意義の一つ」というメッセージを送りました。

最後に、今回のスライドと配布資料を載せておきますので、興味のある方はご一覧いただければ幸いです。

数学特別講義I: くらしの中のコンピュータと数学 – Webページの重要度を定めるPageRankの技術 –(2011年5月13日)

数学特別講義I: くらしの中のコンピュータと数学 – Webページの重要度を定めるPageRankの技術 –(2011年5月13日)

2011-05-09

数理科学II(第3回)

連休明けの今回は「アルゴリズム」について説明しました。

この話は昨年の授業から入れたのですが、昨年は、Euclidの互除法のところでアルゴリズムの説明を入れました。しかし、1学期末のレポート課題に「擬除算のアルゴリズムを書く」課題を出したところ、苦戦している人が一部に見られました。

そこで、今年は、多項式の四則演算の直後にアルゴリズムの説明を行い、まず、多項式の四則演算のアルゴリズムを書き下し、ついで、アルゴリズムの流れを見ながら多項式演算の計算量について学ぶ、という流れにしました。

さて、多項式演算のアルゴリズムの説明は、加、減、乗・・・までいったところで時間になったので、擬除算のアルゴリズムについては、レポート課題としました。1学期は、授業内容から、学期末にまとめてレポートを課せるかちょっと微妙なので、重要なトピックのたびにレポートを課し、履修者の理解を促したいと思います。締切は来週、次回のこの授業です。

2011-05-06

数学特別講義I(第3回):合同の話

第3回の今日の授業は、世話人の守屋克洋先生による「合同の話」でした。

このお話では、中学校の数学の幾何で学ぶ「合同」の概念から始めて、Euclid幾何における合同、アフィン幾何における合同、そして射影幾何における合同の概念へと話を進めていきました。それらの中で、合同の概念は、それぞれの世界での、図形の変換がなす群を考え、群の元となる変換の作用で不変なものによって説明づけられることが述べられました。そして、考える世界(図形の集合)と、図形に作用させる変換がなす群をいろいろ変えることで、興味深い結果が得られることが述べられました。

Euclid幾何、アフィン幾何、射影幾何とも、いろいろおもしろそうと思いつつも、普段はあまりなじみのない分野であるだけに、今日の授業は興味深く聴きました。

さて、次回はいよいよ私の番ですが、どうなりますことやら。次回は5月13日、13日の金曜日です。