2016-04-12

数学セミナーA(第1回)

今年度の春学期に、教育研究科の数学教育コースにて「数学セミナーA」という授業を担当します。

この授業は、数学のセミナー(輪講)を行う授業です。輪講とは、教科書として数学の本を選び、毎回、事前に当番を決めて、当番が本の内容を予習し、授業時間にその内容を説明するというもので、交代で授業を行うようなものです。通常の数学の講義や演習と異なる点は、話題は講義のように順を追って進みますが、質疑応答のような、講師と参加者の対話の要素が増える点では演習に近いものがあります。「セミナー」は、数学の勉強を行う際によく取る形態の一つで、数学では、大学院生以上になると、セミナーは、新しい本の勉強の他、先生と学生や、研究グループ内で、研究の進捗状況や研究の新しいアイデアや研究成果の検討など、普段の研究のコミュニケーションの主要な要素になります。

教育研究科には、学部においていくつかの異なる分野出身の人達が一緒になります。数学の場合は、数学科等、理学系の学科出身の学生がいる一方で、教育学部の数学教育などの学科出身の学生もいます。数学科の場合は、卒業研究などで、セミナーを経験することがほとんどだと思いますが、出身学科や分野によって、数学のセミナー経験がない場合がありますので、そのような経験の差を埋め、学生に一定の数学の能力を確保しようということで、数年前から、数学教育コースの修士1年生に対し、春学期に「数学セミナーA」、秋学期に「数学セミナーB」という授業を行っていると聞いています。

今回、私の授業では「グラフ理論」を取り上げることにしました。理由はいくつかあります。1つめは、前提となる数学の予備知識が少なくて済むこと。2つめは、最初の段階は単純な理論から始まりますが、理解には数学的な思考が必要であり、そのような練習に適していること。3つめは、本学数学類においては取り上げられる機会の少ない分野であり、内部進学者と、学外から入学した人との既習の予備知識の差が比較的少なく、ほとんどの人が同じスタートラインから学習を始められると判断したこと、などです。

テキストには、R.J.ウィルソンの「グラフ理論入門」(西関隆夫, 西関裕子 訳, 近代科学社, 2001)を選びました。入門書として定評があり、本の厚さも比較的薄く、値段も比較的安く、本の書き方も平易で取り組みやすそうに思えます。

授業の運営は、基本的に学生に任せることにします。毎回、2人の人がレポーターとして説明を行います。彼ら/彼女らは、次の回で座長を務め、授業を進めます。それから、毎回の授業で、レポーターの補欠を2人決めておきます。そして、役割の順番は、1週目に補欠、2週目にレポーター、3週目に座長を務めることになります。今回は、私の方で座長2人を選び(偶然というか、成り行きというか、昨年度、卒業研究を指導した2人になりましたが)、彼らに、次回のレポーターと補欠を選ぶための相談を進めてもらいました。次回から、数学教育コースの13人の新入生達と、授業を進めていきます。

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