2011-05-13

数学特別講義I(第4回):くらしの中のコンピュータと数学 — Webページの重要度を定めるPageRankの技術 —

今年第4回のこの授業、今回はついに私の担当ということで、話をさせていただきました。テーマは、Googleの検索結果を重要な順番に順序づけするという「PageRank(ページランク)」と呼ばれる技術と、その背後にある数学の話です。

この blog にもあるように、私は今度、この授業の担当が3回目でしたので、昨年までとテーマを変えて話をしてみようと思っていました。そこで、新ネタを考えたわけですが、今年の春先に PageRank の計算が、本質的には線形代数の計算(連立1次方程式を解くか、ある条件を満たす固有ベクトルを求める)に帰着されることを知ったので、話題のレベルも手頃だと思い、テーマに選んでみました。

その後、いくつかの資料を読んで勉強したところ、PageRankの原論文をはじめ、たいていの資料は、まず最初にPageRankの計算法から説明があり、引き続いて、PageRank計算のモデルとして使っている「マルコフ過程」の話がありました。

たしかに、数学を専門としない一般の人向けに書くときは、まず具体的な手順から示すのが有効と思います。しかし、今回は、理学系の学部1年生を対象にした数学の授業であり、背景の動機づけについて、よく知ってもらった方がよいと思い、まず「マルコフ過程」の話を先にした上で、このモデルを、webページを巡回する行為に当てはめることにより、PageRankを計算する、という流れで説明しました。

それから、実際にweb検索のサービスを行う上では、様々な課題、たとえば、数学的な部分では、巨大次元の行列の固有ベクトルを計算する問題や、実装部分では、webページの巡回と情報収集、データの分類と保管、高速な検索とPageRankに沿った並べ替えの記述、webサービスの維持やメンテナンスなど、実に多種多様な課題を克服して、初めてGoogleのようなサービスの提供が可能になる、という話をしました。そして「『大学で学んだことは役に立たない』という声を聞くことがあるが、社会に出ると、それまで解いたことのない問題によく出くわす。そのような時に、自分で必要なことを学び、新しい問題を解くための知恵を生み出す力を持っていることが必要で、そのための力を身につけることが、大学で学ぶ意義の一つ」というメッセージを送りました。

最後に、今回のスライドと配布資料を載せておきますので、興味のある方はご一覧いただければ幸いです。

数学特別講義I: くらしの中のコンピュータと数学 – Webページの重要度を定めるPageRankの技術 –(2011年5月13日)

数学特別講義I: くらしの中のコンピュータと数学 – Webページの重要度を定めるPageRankの技術 –(2011年5月13日)

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