2010-06-14

数理科学II(第8回)

先週の授業でも触れた、惑星探査機「はやぶさ」、無事帰ってきましたね(正確には、試料が入っていると期待されるカプセルが)。今日の授業でも最初に取り上げて「地球から小惑星『イトカワ』までの距離は?」など、探査計画の内容を学生さん達と復習もしました。

このプロジェクトが成功した要因などについては、すでに多くの人達がいろいろな指摘をしていますので、受け売りなんですが、それらの中で私が重要と思った点をまとめて話しました。

  • プロジェクトを成功に導くには、最初に明確な目標を定めることが重要。今回は、まず「小惑星に行って、帰ってくる」という目標があり、そういった具体的な目標を定めることにより、満たすべき要件がより明確になるだろう。
  • 今回は「はやぶさ」が地球まで戻ってきて、それだけでもプロジェクトとしては大成功だったと思うし、それで多くの人達の注目を浴びたことは間違いないと思うが、仮に「はやぶさ」が地球まで戻ってこられなかったとしても、その時点までの成果があれば、プロジェクトは無駄だったわけではなく、そこまでの成果を認めるとともに、失敗の要因を追求し、さらなる進展を目指すべきだと思う。
  • 現在は宇宙開発も予算が限られており、どのようなプロジェクトを選んで進めるかには、いろいろな議論があると思う(例えば、有人宇宙探査計画の是非など)。予算が限られている以上、お金の使い方を選ばなければならないと思うが、それぞれの分野での基礎研究と人的資源はできる限り絶やさずに研究を続けるのが望ましい。
  • 日本には、これだけの宇宙探査を可能にする技術やお金、ガッツがある。世界のどの国にもありふれたものではないはず。だから、こういう強みを絶やさないように、維持、発展させてほしい。
・・・といった話で盛り上がって、さて、授業ですね。

今日は、部分終結式の理論への動機として、擬除算で多項式剰余列を計算する際に発生する「係数膨張」の実例を見るところから始めました。すぐに思いつく対策として 1) 有理数係数でPRSを計算する、や 2) PRSを計算するたびに、各係数のgcdで割って係数を小さくする、などが思い浮かびますが、1) では分母や分子の係数膨張が起こること、 2) では係数同士の(整数の)gcdを多数計算する手間がかかること、といった問題が起きます。そこで、PRSの係数をよく見ると、わざわざgcdを計算しなくても、係数の共通因子がわかる、というのが、部分終結式の理論です。

その後、部分終結式の手前として、終結式や判別式の定義を説明し、実際に2次多項式の判別式を計算する演習も行いました。次回は、擬剰余の係数を、割られる方/割る方の多項式の係数を要素とする行列式で表すところから、部分終結式の定義へつなげていきたいと思います。

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