2010-05-14

数学特別講義I(第5回)

今回の授業は、筧知之先生による「CTスキャナーの原理と、その背後にある数学」でした。

CT (Computed Tomography, コンピュータ断層撮影) は、X線等を用いて、物体の内部画像を撮影する技術で、特に医療での人の体の断層撮影などは、すっかりおなじみだと思います。まず、CTを行う装置や、撮影された画像の紹介が行われましたが、現在の最先端のCTでは「断面」を越え、立体画像を撮影する技術もあり、心臓の立体画像には驚きました。

このような画像の構成のためには、まず、対象物(たとえば人体)の周囲から、ここではX線を照射します。すると、対象物をX線が通過するときに、対象物に阻まれて強さが弱まります。そこで、どの角度から照射したときに、どれだけX線が減衰したかという情報がわかります。

この情報から、対象物の密度分布(どこにどのような密度の物質があるか)を、対象物の内部の場所の関数として求めるというのが、CTの原理で、その密度分布を計算するのに用いられるのが、ラドン変換と呼ばれる理論です。ラドン変換の細部を理解するには、(複素)関数論や実解析の知識を必要とするため、1変数関数の微積分を学び始めたばかりの1年生には難しい部分もあったかと思います(先生も説明の構成にご苦労があったかと思います)が、それでも、理論の基本的な枠組みの説明は明快に描かれており、なるほど、と、感心しました。(このぐらい骨があった方が、学生の刺激になってよいのではないかと思います。)

ラドン変換にはフーリエ変換も登場するのですが、実用においては、この部分にFFT(離散フーリエ変換)が使われており、数値計算と密接にかかわる理論だということも、いままであまり知りませんでしたので、大変ためになりました。

私の授業では、くらしの中で使われている数学を扱いましたが、今回の筧先生のお話も、まさにそのようなお話で、大変興味深いものでした。

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