2011-04-15

数学特別講義I(第1回):オイラーの数学

数学特別講義の授業ですが、初めて講義を分担した一昨年度世話人を務めた昨年度でお役御免になるかと思っていました。しかし、今年度は、数学類新入生のクラス担任として、三たび登板することになりました。

昨年度、世話人として全部の授業に出席して、各先生方の講義がなかなかおもしろかったので、今年度も、都合がつく限り、一通りこの授業に出席することにしました。そして、随時、講義内容をお伝えしたいと思います。

第1回の今日は、木村達雄先生による「オイラーの数学」でした。オイラーは、18世紀の数学者 (1707–1783) で、数学のほぼすべての分野にわたって大きな業績を遺していますが、今日4月15日がちょうど彼の304回目の誕生日ということで非常にタイムリーな講義になりました。今回は、3つの話題を用意してきたものの、時間の都合で2つの話題に絞って講義をされました。

話題の1つめは、ガンマ関数でした。ガンマ関数は、本来自然数に対して与えられた階乗の概念を、任意の(実)数に拡張したものとしても知られており、ガンマ関数にはいろいろな表現が知られています。その中から、オイラーが発見した、ガンマ関数の無限積を用いた表現を取り上げました。その証明は、なかなか文献に載っていないそうですが、木村先生ご自身による証明の導出が説明されました。こういったことをちゃんとご自分でフォローするあたりも、先生らしいなと感心しました。

もう1つの話題は、「初等整数論の基本定理」に基づく、ゼータ関数の無限乗積表示についてでした。「初等整数論の基本定理」は、すべての自然数が、素数の積に一意的に(ただ一通りに)表されるという性質ですが、オイラーは、ゼータ関数をすべての素数にわたって表される有理数の積(オイラー積)で表しました。そして、オイラー積を用いることにより、 ζ(2), すなわち 1/n^2 の無限和が π^2/6 に等しいことを証明したという業績が紹介されました。

先生は講義の中で、オイラーのすごいところは、それ程難しくない証明で、すごい事実を示している点だと指摘されました。たしかに、Σ 1/n^2 = π^2/6 を見ても、左辺は自然数しか現われないのに、右辺に円周率 π が現われるのは神秘的に思えます。その証明も、決して難しすぎるわけではなく、高校程度の微積分を学んでいれば、読んで理解できる程度だと思います。

最後に、雑誌「数理科学」の今年の9月号で、木村先生の編集による、オイラーの特集記事が掲載されるそうです。楽しみにしたいと思います。

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