2011-06-24

フレッシュマンセミナー(第9回)

今日は、1学期のフレッシュマンセミナーの最終回で、「フレッシュマンセミナー」という授業科目も、1学期完結なので、授業科目としても最終回です。ただし、新しい授業科目として、このコマの授業は通年で続きます。

今日は、先日、社会工学類の人達が授業の一環で実施したアンケート調査の関連で、研究成果を発表していただきました。

これは、社会工学類の「都市計画実習」という授業で、都市(具体的には、主として大学のあるつくば市周辺)の現状と問題点を把握し、それに対する対策について、実験を行ったりして提案するという授業のようです。

履修者は、テーマ毎にいくつかの班に分かれて調査、研究を行います。今回、私達にアンケート調査を行った人達の班は「社会的ジレンマ」というテーマで研究を行っていました。「社会的ジレンマ」とは、市民が短期的に利益を得る行動を行うことによって、その周辺社会が長期的には不利益を受ける問題、と説明されましたが、最初はよくわかりませんでした。後で資料(PDFファイル)を読み直してわかったのですが、たとえば、誰かがイオンの裏の道路に路上駐車をする(=駐車場に停めるより近いという利益のため)ことにより、特に夕方はその道路で渋滞が発生する(=そこを通る人達にとって不利益)といった構造の問題のようです。

彼らは、社会的ジレンマとして、今年の東日本大震災に伴って発生した原子力災害を取り上げ、主につくば周辺の農産物に対する放射線の風評被害をいかに軽減するかという課題を設定して研究を始めたそうです。しかし、今回の放射線被害が、かつてのJCO臨界事故で起きた風評被害とは異なり、本当に放射性物質による被害が起こったことで、当初の課題設定の再検討を行い、消費者が、放射線に関する正しい知識を身につけ、能動的な情報収集の動機づけを行うことにより、「未知に起因する恐怖」を低減させることを目指すという課題に修正したとのことでした。

そのための取り組みとして、放射線に関する知識や、放射線による汚染を防ぐための方法を記したポスターやパンフレットを配りました。このような活動を「リスクコミュニケーション」と言うのだそうです。そして、リスクコミュニケーションの効果を調べる手段としては、アンケート調査になるわけですが、たとえば、数学類の1年生を、パンフレットを見せたグループと見せないグループに分けて、それぞれ、パンフレットを見せる前と後で、放射線に対する知識や意識を調べたというわけです(これまでのフレッシュマンセミナーにおける2回のアンケート調査が該当します)。

調査結果は多岐にわたるので、詳細は略しますが、ポスターやパンフレットによる説明は、放射線に対する未知の恐怖感を和らげる効果があったこと、ポスターよりもパンフレットの方が効果がより高かったことなどが報告されました。

今回の研究報告を聞きますと、途中で課題の軌道修正が必要になったなど、苦労もあったようですが、全体的によく練られた調査・研究を行っていた印象を受けました。数学ではこのような授業は皆無ですので、カリキュラムの面からの興味もありましたし、指導をされた先生方も、かなりの労力を割いて指導に当たったであろうことがうかがえました。私達のリクエストに応じて丁寧に報告をして下さった学生さん達に感謝したいと思います。

さて、1学期の授業はこれで終わりで、次に会うのは2学期ですが、それぞれ、有意義な夏休みを過ごし、また元気に再会できることを望みます。

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