2011-06-10

数学特別講義I(第8回):折り紙と数学:角の三等分作図不可能性

今日の講義は、川村一宏先生による「折り紙と数学:角の三等分作図不可能性」でした。

授業では、まず、渡された紙を折ることで、折り紙による角の三等分を行いました。ユークリッド以来の初等幾何学で、定規とコンパスを使って「角の三等分」をするというのは一般にできない、という話はよく覚えているので、折り紙で角の三等分ができる!というのは、話を聞いたことはありますが、実際にやってみると新鮮なものでした。

では、なぜ、折り紙ではできる角の三等分が、定規とコンパスではできないこととされるか?それには「定規とコンパスによる作図」がどういうものか、その定義をきちんとすることから始まります、ということで、お話が始まりました。

「定規とコンパスによる作図」では、まず、単位長さ(これを1とおきます)が与えられると、それを基準にして、整数、有理数(倍の長さの直線)が作図可能であることが説明されました。そして、任意の有理数qの平方根も作図可能であることも説明されました。これは、代数の言葉を使うと「有理数体Qに実数(q)^(1/2)を添加して得られる数体」の元(数)を表せることになります。

さらに、それまでに得られた数(長さ)を用いて描いた2つの円の交点の座標は、それまで得られた数体のある元(数)Aの平方根(A)^(1/2)をさらに添加して得られる数体に属することが言えます。これを繰り返すことにより、定規とコンパスによる作図を繰り返すことは、有理数体から始まって、それまでに作った数体に、そこから選んだある数Aの平方根(A)^(1/2)を添加して、数体をどんどん「膨らませていく」操作に他ならないということが説明されました。

さて、角の三等分が、数体をどんどん膨らませていく操作とどのような関連があるかを見るために、今度は、角の三等分を、代数方程式を解く観点から見ます。与えられた角度θを三等分することを考えると、余弦 cos θ の3倍角の公式から、a=cos θ とおくと、求める角 θ/3 の余弦 cos (θ/3) は、方程式 4 x^3 - 3 x - a = 0 の根であることが言えます。ところが、この a が、先に述べた、定規とコンパスによる作図で、数体をどんどん膨らませていく操作では一般に表せないものであることから、定規とコンパスによる作図で、角の三等分は一般には不可能、という結論にたどり着きました。

今回のお話は、幾何の問題を代数の問題に置き換えることにより、紀元前から問われていた問題が、19世紀になってようやく解けたという部分も興味深かったですし、方程式の果たした役割は、先日の天野先生の講義とも関連がある部分で、興味深いものがありました。最後に、定規とコンパスで不可能な角の三等分が、折り紙で可能ということは、折り紙の作図には定規とコンパスでは不可能な操作が含まれているはずですが、それは何でしょうか?というのは、今回のレポート課題の一つですが、こちらも興味深い問題です。

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