2011-06-17

数学特別講義I(第9回):無限の不思議

今日の授業では、講義が始まる前に、世話人の守屋先生から、無記名のレポートの2件の捜索願いがありました。先週も口頭で連絡があったのですが、今日は、実際に、それらのレポートの表紙の一部分を、書画カメラで教室内に掲示しました。成績にかかわりますから、これで書き手が見つかるとよいですが。

さて、今日の講義は、塩谷真弘先生よる「無限の不思議」でした。

冒頭で、今回は、無限はあるものと考えて、話を進める、というアナウンスがありました。引き続き、「本質的に」異なる無限がたくさんあること、それらを区別するために、無限が「同じ」という概念をはっきりさせる必要があると説明されました。

たとえば、2つの集合の無限の度合い(集合論では「濃度」といいます)が等しいかどうかを調べるのに、両者の集合の間の写像の存在を調べます。両者の集合の間に全単射が存在することを、ここでは2つの集合が「合同」であると呼ぶことにし、集合の「合同」が同値関係であることや、自然数、整数、有理数、実数の集合、もしくはそれらのいずれかの直積集合に対する「合同」の性質をいくつか紹介しました。そして、自然数の集合と実数の集合が「合同」でないという、Cantorの定理と、その証明に出てくる対角線論法が紹介されました。

次に、集合どうしの「合同」の概念を拡張した「大小比較」について説明されました。そして、この定義による、異なる「大きさ」の無限集合が無数に存在するという内容が説明されました。

最後のテーマは「選択公理」でした。詳しくは略しますが、選択公理は、微積分で、関数の連続性を考える時に、ε-δ 論法を点列の収束で表すのに必要である点が指摘されました。また、選択公理を認めることにより、「Banach-Tarskiの逆説的分解(Robinsonの定理)」のように、ある球体を分解して、もとの球体と同じ体積の球体を2個作ることができるといった、直感的にはちょっと信じ難いことも数学的には成り立つという事実が紹介されました。

本来は、この後、命題論理と述語論理の話が続く予定だったようですが、残念ながら時間切れとなりました。しかし、今日の講義では、無限をめぐるさまざまな内容が、この時間内では十分な分量でわかりやすく示されていたと思いますし、微積分に現われる選択公理については、私も授業をしていてあまり意識していなかった部分でしたので、よい教訓になったと思います。

この授業も早いもので次回が最終回ですが、次回も楽しみにしたいと思います。

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